7 迷宮を案内する目的
探索者に求められるのは怪物退治である。
迷宮内にひしめくこれらの殲滅だ。
でないと、あふれ出た者が人里に襲いかかってくる。
それを阻むために、迷宮内で間引きをする。
その為には多くの探索者が必要になる。
出来るだけ経験を積んだ者が。
しかし、迷宮内では多くの探索者が死ぬ。
怪物を間引きできるほどの人数はなかなか残らない。
それは決して良い状態ではない。
もっと多くの探索者が必要だった。
その為には生き残る手段を教えるしかない。
迷宮の案内をするのは、その為だった。
さすがに上位の旅団の邪魔になるような事は避けたい。
目を付けられたら面倒になる。
だが、そうでない範囲ならば、迷宮の中を教えた方が良い。
それで生存者が増えて怪物を間引いてくれれば助かる。
(寝床が潰れたらかなわねえし)
宿にしろ、食堂にしろ、雑貨店にしろ。
必要なものが揃ってるのはありがたい。
生活がしやすくなる。
それを守るためには、怪物の数を減らしておく必要がある。
だからヨシユキは、迷宮の案内を請け負った。
今回連れてきた連中が少しでも生き残るようにと。
もっとも、道を知ってるだけではどうにもならない。
迷宮の歩き方、警戒の仕方などなど。
これらも知っておくべきである。
案内のついでにそれらも教えていく。
どうしたら少しは安全に活動できるのかを。
短い時間で全てを教える事は出来ない。
それでも、覚えておくべきコツなどを伝えていく。
知ってれば生還率が上がるようなものを。
そうして生き残りが増えれば、住処の安全性も上がる。
迷宮前に作られた迷宮都市の。
それでも、死ぬときは死ぬ。
どうにもならない事もある。
だが、幾らかでも生還率が上がるなら、それにこした事はない。
(あとは本人のやる気次第だけど)
自分ではどうにも出来ない要素については諦める。
ただ、自分が出来る事は可能な限りやっていきたかった。
ついでに、危なくなった場合も護衛もしていく。
戦い方を教えるのも兼ねてだ。
これもまた、生き残るために必要な技術になる。
可能な限りそのコツも伝えていった。
そんな迷宮案内をこなしてるうちに、一ヶ月が経っていた。
案内の仕事もほぼ終わり、案内が必要な旅団も片付いた。
それでも、護衛や更なる教示を求める者達もいる。
それをこなしつつ、落ち着いた日々を過ごしていった。
迷宮の奥に比べれば活動はかなり楽だ。
収入は減ったが、普通に生きるだけなら充分にやっていける。
それも、迷宮の奥で戦ってきたからだ。
(あいつらのおかげだな)
今は袂を分かってしまった仲間の事を思い出す。
ありがたいと思いつつ。
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