65 魔力結晶をどう使っていく
持ち帰った魔力結晶だが、これの使い方も悩ましい。
全部換金してしまえば楽なのだが。
なかなかそうもいかない。
レベルを上げるには、魔力結晶を使わねばならない。
全てを換金したら、これが出来なくなる。
だから、レベルを上げるにあたり、どれくらいの稼ぎを手元に残すのか。
これを常に考える事になる。
成長を考えるなら、余裕にある生活が出来る分だけ換金する。
残りを成長に使う事になる。
だが、この生活費というのが悩ましい。
人間、出来れば贅沢がしたいものだ。
それが稼ぎの範囲での事なら問題視される事もないだろう。
しかし、贅沢というのは際限が無い。
よほどの大金持ちでもない限り、やりたい事を求めていけば金がいくらあっても足りなくなる。
どこかで歯止めをかけておかねばならない。
その歯止めをどこに求めるのか。
その見極めは常に頭を悩ます問題になる。
余裕のない新人はともかくとして。
レベルが上がって稼げるようになった時に、探索者はこの問題と向き合う事になる。
いったい、どれだけ手元に残せば良いのかと。
成長にはどれだけ使えるのかと。
これは人によって違うものだ。
それほど欲求がない者は、生活にそれほど金を使わない。
最低限必要になる出費はあるにしてもだ。
その出費がそれほど大きくなる事は無い。
だが、そうでない者もいる。
酒に博打に色事と。
様々な遊びに手を付ける者もいる。
生来の性格や素質による部分もあるので、抑えることは難しい。
そうでなくても、死ぬ危険がつきまとう探索者だ。
不安の解消の為に派手に遊びたくなるのも確かな事。
それをしないで精神的に追い込まれるのも問題だろう。
生活だけではない。
迷宮探索に必要な費用もある。
武器や防具の修繕、消耗品の補充。
こういった事にかけねばならない費用は削れない。
それを考えると、生活費に1日1万円。
探索者の活動費用に1日5千円。
合わせて、1万5千円。
だいたいこれくらいは考えておいた方が良いと言われる。
もっとも、これだと生活するだけで手元に残る金が消えるが。
貯金したければ、更なる稼ぎが必要になる。
新人はこれだけの稼ぎを得ることは出来ないが。
また、人によって金額が大きくなったり小さくなったりはするが。
それでも、だいたいこれくらいが目安になっている。
ヨシユキも例外ではない。
1日1万5千円でおさまるように生活をしている。
特に欲しいものがあるわけでもなく、出費を強いられる趣味があるわけでもない。
やりたい事をそれなりにやっても、これくらいの金があればまかなえる。
これとは別に、将来のための貯えも残してながら。
なので、残りは全部成長に使っていた。
もうそれほど強さが必要なわけではない。
無理してレベルを上げねばならないわけではない。
それでも、やはりレベルの上昇に魔力結晶を使ってる。
いつ、どこで強さが求められるか分からないからだ。
金もそうだが、強さや能力にも余裕があった方が良い。
様々な事に対応できるようになる。
迷宮の中では特にそうだ。
強さがあれば、怪物に囲まれても生き残る可能性がある。
不意に強力な怪物に遭遇しても、切り抜ける事が出来るかもしれない。
危険極まりない仕事だ。
必要な要素は可能な限り揃えておく。
いつか引退するその日まで。
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