42 ヨシユキから見た3人の評価 1
「それじゃ、魔力結晶を拾って。
お前達の戦果だ」
「はい!」
「おお……!」
「すげえ、自分たちでやったと思うと格別だな」
3人とも目を輝かせている。
単に成果を手に入れたことが嬉しいのではない。
自分たちの手でやりとげた事に感動してるようだった。
そんな3人は、消えていく怪物の後に残る魔力結晶を大事に手に取っていく。
「さて、感動してるところ悪いけど。
このまま次にいくぞ。
気を引き締めろ」
出来ればそのまま感動を味合わせてやりたかったが。
すぐ近くに次の怪物がいる。
余り悠長にもしてられない。
ヨシユキに言われるまでもなく、3人は顔を引き締める。
彼女らもここが迷宮なのはわきまえている。
あまり喜びにひたってるわけにはいかない事を。
投げた石も回収し、次の敵に向かっていく。
(いい顔になってきてるな)
ほどよい緊張感をたたえた表情をしてる。
とはいえ、厳つくなってるわけではない。
ほどよく精神を集中し、しかし体が動かないほど強ばってもいない。
両者の良いところを程よく保ってる。
そんな様子だった。
その後も3人は上手く戦っていった。
数が多い場合には、連携を上手くとって。
連戦になった場合も冷静さを保っていた。
時に、前に進むよりも、退きながら戦いもした。
迫ってくる怪物を迎撃する形をとって。
怪我らしい怪我もせず、確実に怪物をたおしていく。
動きそのものは教科書通りで、特に目立つところはない。
面白みが無いというものもいるかもしれない。
しかし、面白みなど必要ない。
不要で害悪である。
必勝法と言うほどやり方が確立されてるなら、わざわざやり方を変える必要などない。
3人が相手にしている怪物の中で最弱の巨大虫相手なら特に。
これ以上やり方をいじりようがない。
定石通りにやって、定石通りに勝つ。
これで充分だった。
それにヨシユキが見たいのは、新しいやり方ではない。
使い古されたものでよい、それを踏襲してて良い。
確実に勝つこと。
損害を出さないこと。
これが最も重要だった。
3人はそれをしっかりとやり遂げた。
それで充分である。
賞賛に値する。
実際、褒めて褒めまくった。
「すごい、えらい!」と。
3人は「褒めすぎです」と照れるほどだった。
だが、本当にこれで良いのだ。
無駄にあれこれ試したり、無意味な新しいやり方を試す。
そんな馬鹿なことをしないだけでも素晴らしい。
世の中には、馬鹿げた行動をして無駄な損害を出す者もいるのだ。
「新しいやり方を試さないでどうする」とかいって。
そうして周りを巻き込んで被害を拡大させる。
そういった事をしないで、基本に忠実に動いた。
基本の範囲内で敵と戦って倒した。
それで充分だった。
大事なのは、新しい何かをする事ではない。
既に確立されたやり方を体にしみこませる事である。
3人は危うげ無くそれをやりとげた。
新人としては上出来だ。
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