4 高度な経験をもってるのだ、そんな人間ならあらゆる所から声がかかる
曲がりなりにも上位争いに食い込んでいた旅団にいたのだ。
その能力は折り紙付きである。
加えて、現在潜ってるあたりまでの土地勘もある。
その経験は他の旅団にとって貴重な情報だ。
そんな人材が旅団を脱退。
単独になったとなれば、即座にお呼びがかかるのも当然。
しかも、悪い噂があるわけではない。
引く手あまたになるのも道理というもの。
ヨシユキとしても、ある程度は予想していた。
それほど大した腕ではないが、これまでの経験を求める者はいるだろうと。
そういった者達に助っ人として協力する事で報酬を得る。
そう考えていた。
とはいえ、それほど多くの勧誘があるとは思っていなかったが。
それが実際に一人になったら、即座に話が飛び込んできた。
驚くしかない。
「ほらな」
したり顔でタケヒトが周りを見る。
「やっぱりこうなった」
なるべくしてこうなったしか言えない。
ヨシユキは本人が思う以上に価値がある。
その事をタケヒトはしっかり理解していた。
「やっぱり脱退させなきゃよかった」
ヨシユキを取り囲む者達を見て思う。
どんな無理や無茶をしてでもヨシユキを引き留めれば良かったと。
今更ではあるが。
「もったいない……」
止めどなくため息が漏れていく。
そんなタケヒトの嘆きに気付かず。
ヨシユキはとりあえず誘ってくる者達の話を聞く事にした。
受けるにしろ断るにしろ、条件を聞かねばどうにもならない。
命がけの仕事なので安請け合いは出来なかった。
それに、相性というものがある。
人格や性格の部分でそりが合うかどうか。
これが迷宮探索では重要になる。
気が合わない者同士で組んだら、何かしら問題がおこる。
これが摩擦や衝突になり、連携の邪魔をする。
それくらい我慢しろ、胸の内におさえこんでおけ、という人もいるだろう。
だが、それが出来ないのが人間だ。
相性が合わない人間というのは、どうにもならない。
必ず問題がおこり、事件になる。
そうならない為にも、事前に話し合う機会を作った方が良い。
探索者の間ではこれが常識になってる。
よほどの新人でもなければ大抵はわきまえてる。
その機会を作って、ヨシユキは多くの旅団と話し合っていく。
それだけで分かる事はそう多くはない。
だが、この時点で気づける事もある。
それを得ようと、ヨシユキは喋っていく。
相手を見ながら。
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