37 3人に仕事を頼んでみる
「────というわけなんだ」
3人を集めて話をしてみた。
ヨシユキから見た三人の水準と。
なんならもう少しレベルが上がるまで一緒にやってみるかと。
また、書類作業を手伝ってもらえると助かるとも。
「どうかな?」
尋ねたヨシユキに、
「やります!」
「うん!」
「そういう事なら!」
元気の良い返事が飛んできた。
3人からしても願ったり叶ったりだった。
まだ強さが足りてない事を感じていたところだった。
もう少しレベル上げをしてくれるなら、こんなにありがたい事は無い。
それに、書類作業などの手伝いも。
これらは少しでも恩返しが出来ればと思ってやっていた事だが。
それが望外にも給金を出してもらえた。
更に、今後も手伝ってくれるならば同じように給料を出すと。
願ったりかなったりだった。
「是非お願いします」
「頑張る」
「助かりますよ、本当に」
そう言ってもらえて、ヨシユキも心配が消えていく。
この段階で3人を迷宮に行かせずに済むと。
今後も増えるだろう書類の整理もなんとかなる。
「こちらこそ頼むよ」
一人で抱え込まないで済むことを喜ぶ。
次の日から早速レベル上げに向かうようになった。
書類はまだたまってないので問題はない。
新たに新人教育を始めない限りは増える事は無い。
それよりも、3人のレベルを上げていくのが先だ。
(少しでも早く独り立ちさせてやらないと)
義務感とか使命感というものがこみ上げる。
3人もレベルを上げる事を望んでいた。
やはり自分たちだけでも稼げるようになりたいようだ。
ただ、それは迷宮探索に全てをかけるというものでもないようだった。
「もし、他にお仕事が見つかるなら、そちらで頑張っても良いと思ってんです」
「無理はしない」
「食っていければ、それでかまわないからね」
それが3人の考えだった。
「なら、俺の書類整理の手伝いとかは?」
そう提案してみた。
これなら無理して危険な迷宮に挑む必要もない。
しかし、これは意外なことに拒否された。
「それはありがたいですけど」
「世話になりっぱなし」
「それも気が引けるっていうかね」
3人としては、ヨシユキの世話になりっぱなしも気がかりなのだという。
もちろん、ヨシユキから頼まれれば喜んで仕事をするつもりなのだが。
「危険な迷宮で稼いでくるんですよね」
「なのに、私たちは安全」
「町の中で仕事してるだけってのもさ、どうなのかなって思うんだ」
なまじ迷宮探索者を志したからだろうか。
誰かの危険の上にあぐらをかくような事はしたくないという。
「あと、これはあんまり考えたくもないんですけど」
サクラがそう前置きをして話していく。
「もし、先生に何かったら…………」
「終わる」
「それで稼げなくなっちゃうよ」
ツバキとアヤメが言葉をつなげる。
今のままだと、ヨシユキ頼りになってしまう。
そうなった場合、ヨシユキがいなくなったらそれで生活が成り立たなくなる。
それを避けるためにも、レベルを上げて自立しておきたい。
そうなるまでもヨシユキに頼りっぱなしではあるが。
せめて、いつかはヨシユキの負担にならないようにしたいのだ。
「そういう事ならかまわないよ」
否やは無い。
ヨシユキも3人を適度なところまで成長させるつもりである。
それまででいいから手伝いなどをしてくれればありがたい。
「それまでの間、よろしく頼むよ」
「はい」
「うん」
「こっちこそ、お願いします」
こうして新しい関係がはじまった。
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