30 無茶をしてるのは分かってはいるけども
震えながら歩く3人娘。
その前に立って進むヨシユキは、時折振り向きながら先導していく。
(まあ、しょうがないか)
口には出さないが、彼女らの怯えも理解出来る。
ヨシユキもこれまで何度も感じてきたものだからだ。
事前に可能な限りレベルは上げる。
できる限りの準備もする。
それでも、奥へと向かうのは怖いものだ。
特に推奨レベルもはっきりしない未探査の区域に入る時は。
3人が抱いてる恐怖はそういったものとは違うとは分かってる。
単純に実力が伴わない場所に来てしまった恐怖なのだと。
だが、本質的な部分は同じだとも思っている。
いつ死ぬか分からない恐怖であるという事が。
辛いだろうと思う。
こんな所まで連れてこられて。
だが、短期間でレベルを上げるなら、これくらいの無茶をしないといけない。
可愛そうだが、ここは堪えてもらうしかない。
そう思ってるうちに目的のものが近づいてくるのを感じた。
弓を構え、それがあらわれるのを待つ。
同時に、後ろにいる3人に声をかける。
「来たぞ」
その声を聞いて、3人はビクリと体を震わせた。
何が来たのか、などと聞く必要はない。
こんな所で遭遇するものなど二つしかない。
同じように探索してる者達か。
徘徊してる怪物だ。
そのどちらかなのかは聞くまでもない。
ヨシユキが弓を構えてるのだ。
そんな事をする相手は敵でしかない。
3人は事前に言われていた通りに壁に身を寄せる。
そうして置けば、背後からの奇襲にさらされる危険が減る。
少しだけ生存確率が上がる。
敵が来たらそうしろと事前に言われていた。
それでも、襲われたらひとたまりもない。
まずまちがいなく怪物に殺される。
だが、わずかでも生存の可能性を上げる。
そう教わった。
どんなに無理でも、生き残る事にしがみつけと教わっている。
その教えを3人は忠実に守ろうとしていた。
教え子の行動を気配で察し、ヨシユキも安心する。
自棄になって逃げだしたりしないでいるのがありがたい。
ここで一番困るのは、下手に何かする事だ。
狂乱して怪物に向かっていったり、ここから逃げだしたり。
そうなったらどうしようもなくなる。
それよりは、近くで何もしないでいてもらいたい。
その方が損害も減る。
あとはヨシユキが怪物を片付ければ良いだけなのだから。
そう思いながら、矢を放っていく。
まだ暗がりの中にいる敵に向けて。
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