26 迷宮で生き残るために大事なこと
「まあ、金の事はまだいいよ。
それよりも、迷宮の事を考えろ」
そう言ってヨシユキは、金よりも大事な事に話を変えていく。
「お前ら、迷宮で食ってくんだろ。
理由は分からんけど。
探索者になって、迷宮で食ってくんだろ」
「はい」
「うん」
「そうだよ」
3人ともしっかりと返事をする。
「だったら、慣れろ。
迷宮に入って、どんな所か肌で感じろ。
そこに合わせろ」
気持ちを、考え方を、動き方を。
迷宮で活動できるようにしていかねばならない。
でなければ、どこかで死ぬ事になる。
「すぐには無理なのは分かってる。
俺も簡単にはできなかった。
でも、迷宮で生き残るなら、迷宮でのやり方を見つけろ。
どうやって動くか、何を気にすればいいのか。
それを見つけていけ」
それは今もヨシユキが気をつけてる事である。
どれほど強くなっても、迷宮は脅威である。
そこに何があるのか、何が潜んでるのか。
それは実際に行ってみるまで分からない。
知らなければ避けようがない罠が待ってる事もある。
弱点の分からない怪物が潜んでる事だってある。
それらに殺されないように。
どうにか凌ぐために。
その為には迷宮というものをよく知る必要がある。
知識もそうだし、感覚的なものもだ。
理屈では分かりようもないものを見抜く事も求められる。
直観というものが必用な瞬間もある。
「それは実際に迷宮に入らないと身につかない」
危険と隣り合わせの場所。
そこで培っていくしかない。
その環境に身を置くしかない。
人間は環境に慣れるものだ。
そこに長くいれば、そこに適した感覚が養われる。
全ての人間がそうなるわけではないが。
それでも、その場に合わせた何かを身につける事もある。
だから迷宮に慣れないといけない。
迷宮になじまねばならない。
それが出来なければ死ぬ。
レベルがどれだけ高くても。
どれだけ優れた装備を持っていても。
いつかどこかで死ぬ。
「まずはレベルを上げないとどうしようもないけど」
何にしても、生き残らねばならない。
その為に必要最低限の能力は持たねばならない。
迷宮になれるにしろ、なじむにしろ、そこまで生きねばならない。
「お前らがレベルを上げるまで付き合ってやる。
そうなったら、ここで生きてく方法を身につけろ。
死にたくないならな」
「はい…………」
「うん…………」
「わかった…………」
3人とも、借金の返済の時とは別の意味での緊張感を抱いた。
それは同時にとある意欲を3人に発生させた。
(絶対に生き残る)
出来るかどうかは分からない。
だが、出来るようになってやると。
「まあ、とにかく明日からだ。
あらためて迷宮に行くぞ」
「はい」
「うん」
「分かってるよ」
少しだけ3人は力強く返事をした。
その声にヨシユキは、満足げに笑みを浮かべた。
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