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25 金をかける理由

「それにな。

 金をかけるのもちゃんと理由がある」

「どんな理由ですか?」

「お前らの人間性をみる」

 そこだけは少しばかり真剣味が増した声でヨシユキは説明をしていく。



「まあ、結構な出費ではあるんだが。

 これをしっかり返済しようとするか。

 それとも踏み倒そうとするか。

 どういう態度をとるかで、そいつがどんな人間か分かる」

 それを聞いて3人の気持ちが一気に引き絞られた。



 金は良くも悪くも人間性を大きくうつしだす。

 良い面も悪い面も浮き彫りにする。

 はした金をもって逃げだすか。

 どんな大金であっても、心を惑わさずに扱うか。



「それを見るために金を使ってる」

「私たちがどうするかをですか?」

「そういう事だ」

「…………」

「…………」

「…………」

 三人とも声もなかった。



「ここで色々買い込んだけど。

 それを持ってお前らが逃げるなら、それでもいい。

 お前らがそういう人間だって分かるからな」

「そうしたら、どうします?」

「警備隊に通報する。

 登録所にも。

 そうすりゃ、あちこちに手配所がまわる。

 賞金もつくかもな」

 この世界では一般的な対応だ。

 捜査能力がそれほど高くないので、逮捕される事はなかなかないが。



 それでも、まともに町で暮らしていく事はできなくなる。

 登録所でも指名手配されるので、探索者もやってられなくなる。

 あとは本当に犯罪者になるか、野垂れ死ぬしかなくなる。



「それでもいいって言うならどうしようもないけど」

「いえ、それはさすがに……」

「絶対ならない」

「いくら何でも、お尋ね者にはね」

「なら大丈夫だろ」

 3人の答えにヨシユキは笑顔を浮かべる。



「それにだ」

「はい」

「万が一そうなったら、俺が追跡をする」

「え……」

「う……」

「本当に?」

「ああ、本当だ。

 本気でやる」

 そういう声に嘘は一切無い。



「俺はこれでも探知能力とかを持ってる。

 本職の斥候とかにはかなわないが、素人の足跡くらい簡単に追いかけられる。

 どこに逃げても、絶対に見つけてやる」

「あ、ああ、なるほど」

「それなら納得」

「うん、絶対に逃げません。

 必ず返済します」

 ヨシユキの言葉に、3人は自然と背をまっすぐにしていった。

 凄まじい緊張感を感じて。



「まあ、でも」

 そこまで言って、ヨシユキは気を緩める。

 張り詰めていた空気が一気に和んだ。

「新人教育の時から見てるけど、お前らなら大丈夫だろ。

 そういう事をする人間には見えなかったし」

 だからここまで金を使ってる。



「それでも駄目だったなら、俺の人を見る目がなかったって事だ。

 追跡って言う、やらなくても良かった事をやって、損害を取り戻すよ」

 笑顔でそういうヨシユキ。

 しかし3人は全く笑えなかった。

(絶対に……)

(返済)

(がんばって、金を貯めよう……)

 話し合う事もなく3人は、同じ事を決意した。

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