22 同行者になる3人娘
「それじゃ、サクラ……だっけ?」
「あ、はい」
「お前、確か薬草にくわしいんだよな」
「はい、うちが薬草師でしたから」
サクラと呼ばれた娘は、そう言って頷く。
「なら、出来るだけ質の良い薬草を手に入れてきてくれ。
売ってるものでかまわない。
金は出す」
「え、あ、はい」
「俺達には治療師がいない。
魔術で回復できない。
だから薬草とか薬がどうしても必要になる」
「はい」
「そんで、薬は高い。
効果も高いけど、新人が手に入れるのは無理だ」
残念な事実である。
「だから、薬草が命綱になる。
買っても安いし、最悪の場合、生えてるのをとってくればいい。
この近くに生えてるか分からないけど」
「それは季節とか場所にもよりますから」
「だけど、手に入れることができれば安くつく。
それをとにかく集めておけ」
「分かりました」
「じゃあ、これが金だ。
明日までにできるだけ買ってきてくれ」
そう言って、小額の金を渡す。
受け取ったサクラは、それを大事に握りしめる。
緊張で強ばっていた顔に、強い意志が浮かんでくる。
「うん、分かった。
明日までに店をまわってくる」
そう言って懐に金をしまった。
「でも、薬草の前に、こっちを済ませよう」
そう言って傍にいる二人に目を向ける。
「ツバキとアヤメだったな」
「うん」
「そうだよ」
二人が同時に返事をする。
「お前らと一緒に装備を揃えるぞ。
確か、ツバキは魔術が。
アヤメは戦えるんだよな」
うろ覚えの記憶の確認をとっていく。
その声に、
「魔術じゃない」
「動けるだけで、戦えるってんじゃないよ」
少しだけ訂正をつきつけてくる。
「私が使うのは、祝歌。
魔術とは違う」
「私のは剣舞。
そりゃあ派手に動き回るけど、剣術とかじゃないよ」
そう言って二人は自分ができる事を示していく。
二人はもともと旅芸人だったらしい。
その一座の中で生まれた子供だという。
正確に言えば、定住地をもたない遊牧民のようなものだという。
それが色々あって迷宮に流れ着いたのだとか。
その遊牧生活の中で身につけたのが、歌と踊り。
ツバキは特殊な効果がある歌を。
いわゆる支援魔術に似た効果があるという。
今のツバキのレベルでは、支援になるほどの歌は無理だと言うが。
アヤメは武術とみまごう舞踊を。
実際、この動きを応用して戦う事も出来るのだとか。
ただ、それは熟練者に限っての事らしい。
今のアヤメにはそこまでは出来ないという。
「どう違うのか、今一つわからんが。
でも、そういう事ができるんだよな?」
「うん」
「少しくらいは」
「なら、それでいい」
正確な違いは、今はどうでもよい。
大事なのは、同じような事ができるのかどうかだ。
「だったら、それに合わせた装備を揃えるぞ」
「いいの?」
「それって、高いんじゃ?!」
驚く二人。
武器はともかく、魔術用の装備は値段が張る。
そんなものを渡してくれるのかと驚いた。
そんな二人にヨシユキは、
「かまわねえよ。
お前らにツケとくから」
と現実を突きつける。
「なるほど」
「そういう事ね」
驚きが呆れに変わっていく二人。
だが、そういう事なら納得ができた。
「だから、必ず返せ。
返すまで死ぬな。
生き残れ。
いいな?」
「…………分かった」
「まあ、そういう事ならね」
言わんとしてる事を理解して、二人は頷く。
「サクラもだ。
最低限だが、武器と防具を買うぞ。
薬草はそのあとだ」
「分かりました」
頷くサクラ。
彼女も武装らしい武装はもってない。
だから、この機会に必要なものを揃えていく事になった。
「でもまあ、その前に」
「はい」
「なに?」
「まだ何かあんの?」
「まあな」
3人の身なりを見て、ヨシユキはため息を吐く。
「まずは、服を買いにいこう」
そう言いたくなるくらい、三人の身なりは酷いものだった。
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