2 離脱に至る理由
その後。
なんだかんだ言いつつも、最後にヨシユキの脱退は認められた。
下手すれば裁判にまで突入しかねない勢いであったが。
それくらいタケヒト達は離脱を撤回させようと頑張った。
しかし、タケヒト達も分かってる。
ヨシユキの能力と差が出来てる事に。
ヨシユキの能力では更に奥に行くのは無理だという事に。
悲しい事だが、ヨシユキが足手まといになってる事に。
それでも一緒にやっていきたかったのは、長い付き合いになってきてたからである。
まずヨシユキとタケヒト、そして何人かの旅団員は同郷の幼なじみである。
食い扶持にありつこうと迷宮探索に挑みに来た。
それから迷宮都市で、同じようにやってきたばかりの新人達と仲間になり。
今に至るまで一緒にやってきた。
意見の衝突などはあったが、概ね問題なくやってきていた。
仲間割れしてる余裕もないほど迷宮は厳しい。
そんな所で喧嘩などしてられなかった。
それが分かるくらいに全員大人だった。
だからこそ、ヨシユキの事も割り切って一緒に行動していた。
奥に向かうならば、確かに足手まといになる。
だが、無理して奥にまで探索しにいくつもりはなかった。
稼ぎは充分にあるので、生活には困らない。
もともと食い扶持を確保するのが目的で迷宮に来てるのだ。
これ以上を望んでるわけではない。
名誉や栄達にあまりこだわりのない者達ばかりなのだ。
それでも、好奇心はある。
探究心と言っても良いかもしれない。
金や名誉のために動く気はないが、迷宮の奥がどうなってるかは気になる。
それを知りたいという思いはあった。
迷宮を攻略して消滅させるまで考えてはいないが。
それとても、決して渇望していたわけではない。
運がよければ挑戦してみたいという程度だった。
その為にひたすら努力するつもりはなかった。
無理や無茶もしたくなかった。
命あっての物種、命がけで挑む気にはなれなかった。
だが、ここに考えのずれが発生していた。
タケヒト達は全く気にしてないのだが。
ヨシユキはさすがに申し訳なく思っていた。
自分がいなければもっと先までいける。
より大きな成長がある。
名誉や栄達などを求めてないのは分かるが、それでも仲間の足を止めてるのだ。
どうしても気が引けた。
望めばもっと先まで行けるのにと。
そして、そんな仲間の姿も見てみたかった。
自分にはついていけない、自分では踏み込めない領域。
そこに向かっていく雄姿を。
ついていけないのは残念だが、だからこそそんな姿が見たかった。
そんなわけでヨシユキの離脱・脱退は認められた。
あとは届け出を出せば、円満…………とはいかないが名目共に分かれる事になる。
そんなわけで、この日ヨシユキはタケヒト達と夜更けまで騒ぐ事になった。
同じ旅団の仲間として最後のどんちゃん騒ぎを楽しんだ。
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