131 国は徐々に衰退し、里はどんどん発展していきます
ぼやきながらも20年。
移住を開始してからそれだけの年月が経っている。
その間に生活基盤はととのっていった。
この間に貴族達からの接触はなかった。
時を経るごとに国の状態が悪化。
現状維持もままならなくなっていったからだ。
探索者の多くはヨシユキ達のいる場所へと向かっていった。
国内に残るよりも可能性があるかだ。
同時に、国内の雰囲気が悪くなる一方だったからでもある。
分かりやすいところでは、治安。
迷宮周辺の治安は最悪と言えた。
残った探索者のほとんどが柄の悪い者になっていった。
それらは探索もそこそこに活動する者が多かった。
魔力結晶はとってくるが、それも生活ができる分だけという者がほとんどだ。
迷宮攻略など考えてもいない。
それよりも、町で暴れるのを好むような連中が多かった。
罵倒と殴り合いは当たり前。
それを楽しんでるくらいだ。
なまじレベルを上げてる者達同士で行ってるから始末が悪い。
警備兵も止めるに止められない。
彼らもレベルを上げているのだが、探索者にはかなわない。
特に有力な探索者の争いとなるとお手上げである。
高レベル探索者同士の戦闘となると、人間離れしてるのが当たり前になる。
そんな者達の戦いにおいそれと割って入れるものではない。
どうしても探索者同士の争いは放置されてしまう
悪さをする奴も出て来る。
新人をいたぶって遊ぶ奴。
稼ぎを巻き上げる奴。
そういう者も出てくる。
それを取り締まる事も出来ない。
当然、治安が良くなるわけがなかった。
好んで悪さをする奴等だ。
それが大人しくしてるわけがない。
町の者達に襲いかかる事も珍しくはない。
無銭飲食に、武器防具などの強奪など当たり前。
そんな者達がはびこっている。
まともに迷宮に挑む探索者もいる。
だが、決して事態を解決しようとはしない。
そんな面倒に首を突っ込みたくないという者が多い。
暴力を解決するのに暴力を使うわけにはいかない、という者もいる。
そういった者達がほとんどなので、迷宮都市の治安は決して改善しない。
この為、迷宮都市は犯罪の巣窟になっていく。
そこで商売をしてる者達も、一癖も二癖もある輩ばかりだ。
まともな人間が住めるような環境ではなくなっていく。
いつしか探索者までもが犯罪者のような連中と見られるようになった。
そんな環境から抜け出すために、ヨシユキ達の所に向かう者もいる。
ヨシユキも希望者を募るために、年に何回かは国から人を募ってる。
魔術などを使って、人柄や考え方などを探りながら。
問題なしとされた者はヨシユキ達の里へと案内された。
そんな状態に陥ってる国だ。
迷宮を攻略出来るわけがない。
今ある迷宮から怪物が出てこないよう、中で間引きするのが限界だ。
その為に騎士団なども動員されている。
探索者が頼りにならないのだから、国が動かせる兵力を使うしかない。
そんな騎士も決して人数が足りてるわけではない。
レベルも人数も足りない状態で迷宮攻略に臨んでいる。
損害は大きく、一つの迷宮を破壊するごとに、多大な回復期間が必要になる。
時間をかけてレベルを上げれば、損害は減らせるのだが。
その時間で新たな迷宮が発生してしまう。
急いで解決せねばならず、それが損害を拡大する。
悪循環だ。
当然、生産性が上がるわけもない。
人口も少しずつ減り始めている。
20年の間、人口は少しずつ減少していった。
今は550万人ほどにまで落ち込んでいる。
その人口を養うほどの能力もだんだんと無くなっている。
ヨシユキ達の方に手を出してる場合ではなかった。
そんな事よりも、国の立て直しが最優先である。
しかし、何をすれば良いのか分からないでいる。
場当たり的に対処はしているが、それが解決に結びつく事もない。
緩やかな衰退、滅亡までの時間の引き延ばし。
やってるのはそんな事だけだった。
おかげでヨシユキ達は国の動向を気にする事なく活動出来た。
一応、動向はうかがっていたが。
即座に何かされる心配は無いと分析していた。
見えない所で何かを画策してるかもしれないが。
それも即座に影響を及ぼす事は無いと見ていた。
警戒と情報収集は欠かさなかったが。
それを見て、ヨシユキは引退を考えていった。
幸い、後継者も育ってきている。
余裕があるうちに世代交代をしてしまおうと考えていった。
「どうかな?」
念のために周りの者達に尋ねていく。
大半の者達は引き延ばしを求めた。
だが、ヨシユキの考えも分かる。
年齢も年齢だ。
引退してもおかしくない頃になっている。
「しょうがないですね」
周りの者達は惜しみながらもそう言ってくれた。
そんな周りの支持もあり、ヨシユキは無事に引退することとなる。
長く続けてきた里の切り盛りという仕事からようやく解放された。
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