127 いきなりですが、時間が急に早く流れていく事になります
余裕がない状態が続く。
しかし、発展はそれ以上に大きくなされていく。
1年や2年では見えない結果。
それも5年10年となれば少しは成果も見えてくる。
ヨシユキ達の勢力は確実に大きくなっていった。
人口は8000人から1万人を突破するまでになる。
その多くが移住先で生まれた子供達だ。
それらはまだ増加していく気配を見せている。
その人口を養うだけの食料も栽培できるようになってきている。
輸入量は確実に減っている。
とはいえ、農地で得られる食料もまた限界ギリギリの量ではある。
作付け面積は増えているが、増えた人口がそれを食い潰していくのだ。
幾らか備蓄したいが、それもままならない状態が続いている。
それでも生活は安定していっている。
田畑はまだ拡大を続けている。
邪魔になる迷宮の破壊も進められている。
鉱物の採掘も進んでいる。
これにより必要になる資源は移住先でほぼ手に入るようになった。
それらを加工する工業も発展してきている。
町中では小さな商店が並び始めている。
いずれも露天商や屋台ではある。
だが、人口1万人しかいない。
この程度の商売がせいぜいだろう。
しかし、今後も町が発展すれば、もっと大きな商店も生まれる。
そこに至る最初の一歩のようなものだ。
全ては小さな所から始まるのだから。
その間、貴族達はろくに動けずにいた。
相変わらず迷宮をおさえる事で精一杯。
幾つかは攻略したが、新たにあらわれる迷宮が行く手を阻む。
破壊したものと新たに発生した迷宮の数は、相変わらずほぼ同数。
その対応に追われて、ヨシユキ達をどうにかする事は出来なかった。
それに、ヨシユキ達も何もしないでいるわけではない。
貴族達に対抗する為に、国の方面に防衛設備を作っている。
壕に土塁に土壁。
土嚢を積み上げて作った防壁がヨシユキ達の領域への侵入を防ぐ。
そこに設置された数々の防衛兵器も。
それらは表向きは怪物対策の為に作られている。
だが、国が攻め込んでくる事を念頭にしてるのは明らかだ。
連なる迷宮の間を突破し、怪物を退けても、この壁が目の前にあらわれる。
そこに攻め込む余裕など、貴族達にあるわけがなかった。
もちろん、貴族達も対策は考えた。
迷宮攻略の為に人を育成しようとした。
探索者を取り込もうともした。
しかし、それらはことごとく失敗する。
探索者の多くはヨシユキ達の方に流れていく。
迷宮を破壊すれば土地を切り開ける。
そこを手に入れることも出来るのだ。
誰もが自作農になる機会がある。
そうでもなくても、様々な働き口がある。
貴族に掣肘されることなく稼ぐ事が出来る。
探索者育成の手法も確立されている。
採用された探索者のほとんどがレベル50からレベル60になっている。
それだけの強さがあれば、迷宮の外でも仕事にありつける。
望むならば迷宮攻略が出来るレベルまで上げることが出来る。
それが出来るのは、おおむねレベル100。
そこまで育成するのがヨシユキ達の旅団だ。
強さを求める者達は、それを目指していく。
それを指導しているのはタケヒト達。
ヨシユキの古巣の者達が中心になっている。
国というか里の代表であるタケヒトだが。
実務をヨシユキが担ってるので、やることがほとんどない。
その為、迷宮攻略の先頭に立って活動している。
そのレベルは200を超え、移住先の里で最強戦力となっている。
このタケヒトがいるから、レベルが上がっても悪さをする者達がいない。
逆らえばタケヒトが容赦なく動き出すからだ。
そんなタケヒトの存在もまた、人を引きつける原動力になっている。
彼がいれば大丈夫だろうと思わせるのだろう。
こういった迷宮に挑む者達によって、ヨシユキ達は新たな土地を手に入れていく。
解放された場所は、入植するのに適した地になっていく。
迷宮を破壊した探索者が目を付けないわけがない。
これだけの利点があるのだ。
探索者ならヨシユキ達のいる場所を選ぶ。
たとえ土地を得られなくても、何かしら仕事はある。
発展の最中であるヨシユキ達の里は、常に求人募集が出ている。
それこそ一旗揚げて商売を始める事も出来る。
貴族達の所のように、商売に免状が必要というわけではない。
こんな状態なので、貴族達の所から抜け出していく者も多い。
ヨシユキ達の手の者達も、そういった者達を見つけて接触をしていく。
人柄に問題がなければそのまま連れて行く。
食料などの生産はギリギリだが、人手が必要なのも変わらないのだから。
やる気のある者達がこうして貴族達の下から流出していく。
特に人生に展望を抱けない三男坊以下などにこの傾向が強い。
そして、成り上がった者達は、今度は嫁さんを求めだす。
こちらの方も次々に移住をしていく。
そうでなくても、ヨシユキ達の里では女が従事できる仕事もある。
文明が産業革命前の水準であるこの世界では珍しい事に。
そのほとんどは食堂の下働きや給仕などの軽作業だったりする。
さすがに肉体労働などを任せる事はできない。
だが、大半の女はそうした仕事を続ける事無く嫁にいく。
男の働き口が多く、稼ぎが安定してる者が多いからだ。
だからこそ、様々なものが不足する。
田畑が増えても、鉱物の採掘量が多くなっても、職人がどれだけ物を作ってもだ。
必要とする者が増えるのだから、足りなくなるのは道理である。
人口の増加が止まらない限り、不足気味な状況は続いてしまう。
だが、それも増加が止まらないからではある。
問題はあるが、決して悪い事ではない。
ただし、全ての人間が移住できるわけではない。
探索者の採用の時と同様に、人柄を見て受け入れるかどうかを決めている。
もめ事を起こさないようにするために。
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