124 彼我の差を考えると憂鬱にはなる
ヨシユキ達の所に流れ込んでくる者は多い。
移住先のこの地で生まれる子供達も多い。
このままの流れでいけば、いずれ人口はかなりのものになる。
国に対抗できるくらいになる。
そうなれば国も余計な手出しはしてこなくなる。
したくても出来なくなる。
現在の国の人口は600万人ほど。
ヨシユキ達が8000人くらい。
数の差は圧倒的だ。
しかし、時間の経過と共にこの差は縮まっていく。
現在、国の方は限界にきている。
人が住むところが足りないのだ。
迷宮によってあちこちが制圧占拠されてるからだ。
これをどうにかする為には迷宮を破壊しないといけない。
しかし、それは簡単にはできない。
レベルの高い探索者が必要だからだ。
しかし、高レベルの探索者でも簡単にできる事ではない。
全くされないわけではないが、迷宮の攻略はそう簡単になされるものではない。
一年に一つ破壊できれば良い方である。
それも、たいていは多大な犠牲を出して行われる。
攻略経験者に次の迷宮も潰してもらう、というわけにはいかない。
数を減らした生き残りだけでどうにかなるものではない。
犠牲もろくに出さずに攻略を成功させたのはヨシユキ達くらいだ。
そして、迷宮は今も発生し続けている。
発生件数はそれほど多くは無いが、今も世界のあちこちに出来上がっている。
迷宮をどれほど破壊しても、これでは意味が無い。
どれだけ破壊しても、その間に新しく発生するもので総数は変わらないと言われてる。
なので、国はこれ以上の拡大が出来ない。
現状維持で精一杯だ。
しかし、ヨシユキ達は違う。
迷宮を破壊し続けるだけの力がある。
今も周辺にある迷宮を破壊して回っている。
おかげで生存可能な場所が増えている。
人の数は爆発的に増えていっている。
人の数の差はそのうち埋まっていくだろう。
人数は力だ。
この差が埋まっていけば、簡単に手出しができなくなる。
ましてヨシユキ側には迷宮がある。
そこで人を育てる手法がある。
能力でも差を付ける事が出来る。
全員がそれなりのレベルになれば、余計な干渉など全てはねのけられる。
どうしても時間はかかってしまう。
人の数は簡単に増えるものではない。
国と互角に渡り合えるようにするなら、何十年とかかる事になる。
移住者を加えるにしても、そう簡単に増員ができるわけでもない。
人が増えるというのは、子供が生まれて育って、それらが更に子供を産んでいく事だ。
世代を重ねていくしかない。
それも一代二代で簡単に出来るものではない。
何代も、時間にして100年とか200年とかけていくものだ。
それをこなしていかねばならない。
その為の時間を手に入れねばならなかった。
相手を上回るとまではいかなくて良い。
手を出すと手痛い損害を受けると思わせるだけで良い。
それが出来るだけの人数を用意していかねばならない。
それまでは、可能な限り接点を作らない。
交渉は絶対にしない。
どうせ不利な条件を押しつけられるだけだ。
そうならないように全力を尽くす。
もしそれが駄目だったら。
玉砕覚悟で相手に損害を与えていく。
手を出したらどうなるかを骨身にしみて教え込む。
他に方法はない。
出来るだけ穏便に済ませたいところだった。
だが、そうもいかないなら、それなりの事をしなければならない。
そんな事を考えねばならないのが面倒だった。
「どうしてこうなったんだか」
ヨシユキは頭を抱えたくなる。
全ては、自分を呼び出した貴族のせいである。
それが分かってるので、いつか仕返しをしてやろうとも思っていた。
だが、何よりもまずは足下を固めねばならない。
土台をしっかり作って今後に臨まねばならない。
その為に、やれる事はどんな事でもやっていく。
姑息だろうと卑怯だろうと。
大事なのは、効果がある事だ。
気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を




