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116 戦利品の分け方

 迷宮の主である大天使が死んだ。

 あとには巨大な魔力結晶が残った。

 怪物のみならず、迷宮を成立させていたものだ。

 内包してる魔力ははかりしれない。



 持ち帰れば、迷宮攻略を成し遂げた証になる。

 また、これを献上する事が探索者に義務として課せられている。

 手に入れることで統治者である貴族達の利になるからだ。

 だが、今回の場合、そういう風にするつもりは一切なかった。



「ヨシユキ」

 タケヒトが声をかける。

「使ってくれ」

 言いながら魔力結晶を指す。

 ヨシユキは虚を突かれた顔をする。



「何を?」

 言ってる事がすぐには理解できなかった。

 持ち帰って統治者に提出しなければならないのだ。

 勝手に使えばどうなるか分かったものではない。

 それはタケヒトも知ってるはずだ。

 しかし、

「かまわねえよ。

 使ってくれ」

 タケヒトの意見は変わらない。



 周りにいる他の者達もだ。

 古巣の連中も、ヨシユキの旅団者達も。

「使ってくれ」

「お前ならな」

「ヨシユキさん、お願いします」

「使っちゃってください」

 誰もがそう言ってくる。

「なんで?」

 当然の疑問が口から出る。



「いいじゃねえか、別に」

 タケヒトは笑顔で言う。

「どうせ逃げるんだろ、ここから。

 だったら、盛大に使ってやろうぜ」

「そうそう。

 わざわざ、くれてやる理由もない」

 それが周りの者達の意見だった。



「どうせ縁を切るんだ。

 渡すなんてもったいない」

 ヨシユキも仲間もここから出て行く予定だ。

 なのに、手に入れたものを提供してどうするのか?

 もったいないにも程がある。

「遠慮する事は無い、俺達で使っちまえ」

 だからこういう結論になった。

 その上で、ヨシユキに使ってもらおうと思っていた。



「お前が発端だしな。

 なら、お前が使った方がいいだろ」

「いや、でもな」

 さすがにそれもどうなのかと思った。

 素質や才能のある人間が用いるべきだとヨシユキは思う。

 だが、周りの者達はそうは思ってないようだった。

「功労者が一番得をするべきだろ」

「ヨシユキが一番だからね」

「遠慮しないでください」

「そうですよ、ヨシユキさん」

「ここは一つ、一気にドガッといってください」

 誰もがヨシユキにすすめてくる。



「そそのかされてる気がするんだけど……」

 ヨシユキは今ひとつ及び腰だ。

 だが、そう言われてまんざらでもない。

 強力な魔力結晶を使えるのはありがたいのだから。

「でも、いいのか?

 俺よりタケヒト達が使った方が効果的だと思うんだけど」

 能力の大きさを考えれば、その方が効果的だ。

 しかし、タケヒト達は首を横に振る。



「かまわないよ。

 ヨシユキがいたからこの迷宮は攻略できたんだ。

 でなけりゃ、とてつもなく苦戦してた」

「そうそう。

 お前の仲間がいなけりゃ、攻略はむりだった」

「時間をかければ何とかなったかもしれないけど。

 それでも、かなり手間がかかっただろうな」

 実際、ヨシユキの仲間がいたからこそ、呆気ないほど簡単に迷宮の主を倒せた。

 それらを率いていたヨシユキの功績は大きい。



「それにだ」

「?」

「お前のレベルを上げて、面倒を押しつけたいんだよ。

 これからの事を考えると、面倒でしょうがない」

「……あのな」

 あまりと言えばあまりな理由だ。

 だが、それもそうだろうと言える。



 なにせ統治者である貴族を撥ねのけたのだ。

 しかも、国を出ようとしてる。

 これからの手間と面倒ははかりしれない。

 それを担うのは荷が重いというもの。

「だから、お前に色々押しつける。

 その前払いだ」

 タケヒトは笑いながらそう言う。

 ヨシユキは呆れるしかない。



 だが、そういう事ならと開きなおる。

 どのみち、やるしかない状況なのだ。

 ならば、少しでも有利な状況を手に入れねばならない。

 迷宮の主の魔力結晶を使い、大きくレベルを上げた方が良い。

 能力はいくらあっても良いのだから。



「それじゃ」

 遠慮無くヨシユキは魔力結晶を使った。

 巨大な力が流れ込んでくるのを感じた。

 瞬時にヨシユキのレベルは大きく跳ね上がった。

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