113 迷宮中枢、迷宮最強の怪物
迷宮の奥、全ての通路が漏斗状に収束していった先。
そこに迷宮中枢がある。
今までの通例から、そこはたいてい巨大な部屋になっている。
形は様々だが、例外はない。
この迷宮もそこは同じだ。
広大な、外に出たのかと思うほど巨大な部屋になっていた。
そこに迷宮の中枢がいる。
迷宮を作り出すほどの巨大な魔力結晶。
その魔力結晶を中心に作られた怪物。
それが迷宮の主である。
迷宮における最強の怪物だ。
この迷宮の主もそんな怪物だった。
身長10メートルほどの人型。
青い肌から青いオーラが炎のようにまとわりつき、立ち上っている。
それは翼がはためくようにも見えた。
炎のような姿の青い女。
それがこの迷宮の主である。
それは伝承や神話に語られる存在に似ていた。
大天使。
そう伝えられる存在に、迷宮の主は似ていた。
そっくりそのままと言えるほど。
その大天使は、伝承通りに浮かび上がっていた。
翼のようなオーラによって飛んでいるようだった。
そんな大天使である青い女は、ヨシユキ達が室内に入ると攻撃を仕掛けてきた。
体から放たれてる炎のようなオーラが急激に膨れあがった。
それがヨシユキ達に襲いかかる。
触れれば毒となって蝕むオーラ。
人の害になる物質でできたそれは、触れれば肌をただれさせていっただろう。
鎧も効果は無い。
隙間から肌に侵入していくからだ。
しかし、それがヨシユキ達に届く事はなかった
事前にツバキや支援魔術を使う者達がかけておいた結界。
それがオーラを遮っていく。
歌や曲にのって戦うアヤメも迫るオーラを切り裂いていく。
歌や曲、音をまとったアヤメ。
それは振動を常に携えてるという事だ。
それが青い女の炎のようなオーラを切り裂いていく。
他にも魔術師達が攻撃を仕掛けていく。
青い女のオーラを風で吹き飛ばす。
純粋な魔力の塊をぶつけて打ち消していく。
それらはオーラに阻まれて本体には届かない。
しかし、安全な空間と青い女までの道を作り出す。
ヨシユキが弓を構える。
つがえられた矢が引き絞られた弦によって放たれる。
それらが全て、青い女の急所に突き刺さっていく。
その全てが五段の性能を持つもの。
弓だけではない、矢もそれだけの強さを持つ。
一つ一つがだ。
弓自体の性能と相まって、一撃一撃が凄まじい威力を発揮する。
本来、弓矢などの射撃武器において、撃ち込まれる矢まで強化される事はほとんどない。
ほとんどの場合において、回収不可能な消耗品になるからだ。
倒した敵から抜くこともあるのだが。
そこまで手間をかける者もそう多くは無い。
しかし、迷宮の主との戦闘である。
そんな事も言ってられなかった。
最高の戦力を用意し、最大級の威力を叩き込む。
狙うのは弱点。
ヨシユキの能力である察知や探知で看破した部分。
もっとも弱い所を集中的に狙っていく。
ヨシユキの攻撃が当たった部分が砕かれ、霞や靄のように消えていく。
たまらず大天使も身をよじっていく。
青い肌が破れ、青い血が飛び散る。
そうして飛び散った血から、小さな怪物が生まれていく。
大天使の小さな複製。
2メートルほどの身長の青い女。
それがいくつも生まれていく。
それらは尖兵として旅団に襲いかかっていく。
「行くぞ!」
タケヒトが前衛を率いて突進していく。
迫る怪物、小さな青い女を後衛から遠ざけるために。
五段の武具を装備した前衛は、迫る小さな青い女、小型の天使を次々に撃破していく。
その間にも後衛からの攻撃は続く。
ヨシユキの他、弓矢などの遠隔攻撃方法を持つ者達によって。
やむことのない射撃が大天使を削っていく。
それは大天使の血を飛び散らせ、小型天使を更に増やしていく。
前衛への圧迫が強まってしまう。
それを見て、攻撃を控えるべきかと誰もが考えていく。
大天使を攻撃すればするほど、前衛に襲いかかる敵が増えるのだから。
しかし。
「手を緩めるな!」
ヨシユキが叫ぶ。
「奴は確実に弱まってる。
攻撃を続けろ!」
探知能力によってヨシユキは探り当てていた。
攻撃が当たる度に大天使の命が削られてる事を。
なにより、
「奴は自動的に回復している。
攻撃の手を緩めたら、一気に元に戻るぞ!」
相手を倒すには攻撃しつづけねばならない。
その事を把握していた。
苦しい戦いになっていく。
攻撃をすれば、確実に大天使を倒していける。
しかし、攻撃するごとに、雑兵が増えていく。
それは前衛に襲いかかっていく。
凌ぎきれない攻撃ではないが、分が良いとは言えない。
どうしても長丁場になる。
その事を誰もが覚悟していく。
もとより、迷宮の主との戦いだ。
簡単に終わるわけもないとは誰もが思っていた。
しかし、それを覆す者達がいる。
彼らは続々と自分の能力を発揮していく。
長引くはずの戦闘は、これらによって様子が変わっていく。
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