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106/132

106 予想もしてなかった者とのわずかな接触

 いつも通りに迷宮探索をしていた時だった。

 レベルが更に上がり、推奨レベル85になっていた。

 今日も更に探索を進めよう、そう思っていた時である。



「貴族?」

 迷宮街に戻ったヨシユキに思わぬ話が伝えられた。

 なんでも、迷宮都市に貴族の使者がやってきてると。

 なんでそんな者がと思ったが、話があるというなら聞かないわけにはいかない。

 この世界、地位というのはとてつもなく大きな意味を持つ。

 無視するわけにはいかなかった。

「面倒くせえな」

 こうは思ったが。



 外に出て使者がいるという場所に向かう。

 そこがこの迷宮都市を収める領主の館なのには面食らったが。

 何でも、用件があるという貴族の使者は、この館に逗留してるらしい。

 応対する場所も領主の館になってしまう。

 呼び出されたのだから出向かねばならないが、さすがに二の足を踏んだ。



 柄にもなく緊張をして館に入る。

 そして使者と相対するのだが。

 その対応は酷いものだった。



「なんだその格好は」

 出会い頭の一言がこれだった。

 用件があると言っていた貴族の使者。

 それなりの地位のある貴族の使者のようで、使いっ走りといってもこれまた貴族のようだった。

 それ故なのだろう、ヨシユキの格好にケチをつけてくる。



「もっとふさわしい格好をしてこい」

 貴族としては当然の礼儀ではあるだろう。

 貴族同士ならこの発言にも問題は無い。

 だが、ヨシユキは平民である。

 一般人である。

 貴族の礼儀作法の対象外だ。



 そもそも、貴族の礼法に沿った装束など持ってるわけがない。

 それを用意するのは、平民では一苦労だ。

 一着作るだけで一月分の給料が吹き飛ぶほどだ。

 それですら最下級の礼装になる。

 高位貴族の使者の会うのにふさわしい格好など、とても用意できるものではない。

 そもそも、平民にそんなもの求められてもいない。



 礼儀作法からしても、平民に格好まで求めてはいない。

 簡単に用意できないのは貴族も分かってる。

 だからこそ、平民には姿形まで要求されはしない。

 せいぜい、簡単な礼儀や作法を守れば良いとされている。

 生活の大半を労働に費やさねばならないのが平民であるからだ。

 礼儀作法を覚えてる時間がない。

 だから、簡単なものでかまわないとされていた。



 貴族の使者の態度はそれを明らかに逸脱している。

 その態度にヨシユキは憤りをおぼえた。

 そして、相手がそんな態度をとってる理由も察しがついた。

 威圧してるのだろう、交渉を有利にするために。

 だから問題にもならない事をふっかけてくる。

 つまらない討論の手法だ。

 高めた能力がそういった事を察知させた

 そこでヨシユキの腹が決まった。



「それは失礼しました」

 平坦な、あるいは冷淡な声で対応をする。

 ただし、頭は下げない。

 最低限の礼儀すら示さない。

 示す必要がないとして。

「俺はふさわしい服とか持ってないので。

 それでは話にならないってんなら、帰るよ」

 そういって使者の前から立ち去っていく。



「おい、待て!」

 使者の声が聞こえてきたが、当然無視する。

 相手にならないと言ってきたのは使者である。

 ならば、相手にならないヨシユキは退散するだけだ。

 何も問題は無い。

 相手の言った通りの行動をしてるだけなのだから。



 同時に、ヨシユキはここ最近の悩みの答えを得た。

 貴族の使者の態度を見て、なぜか一気に考えがまとまった。

 その考えを伝えるべく、旅団の者達を呼び集めた。

 協力関係にある探索者や、取引相手である商人に職人なども。

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