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10 これからやろうとしてる事

「中堅どころの案内は終わった。

 だから、これからは新人を鍛えようと思ってる」

「わざわざ?」

「やる必要があるのか?」

 タケヒトもそれ以外の者からも疑問が上がってくる。



 普通、新人の訓練なんてまずやらない。

 旅団で受け入れた者を鍛える事はあってもだ。

 仲間でもない者を教育してやる義務や義理などない。

 それが探索者界隈の考えだ。



 これには、旅団がもってる様々な経験や智慧。

 これらの流出を懸念してのものでもある。

 戦い方にしろ、迷宮の地図などにしろ。

 旅団で保有してる情報は多い。

 これらが外に漏れれば、競争に負ける可能性もある。

 他の旅団に出し抜かれ、狩り場を奪われる事もあり得る。



 そうでなくても、手間暇かけて訓練し、それが他の旅団に流れるなんて馬鹿馬鹿しい。

 かけた時間が無駄になる。

 こういった問題があるために、旅団員でもない者の訓練や教育はしない。



 ヨシユキがやろうとしてるのは、これと正反対であると言える。

 何のためにそんな事をしなければならないのか?

 特に利点や理由があるとは思えない。

 だが、ヨシユキの考えは違う。



「今は最低限の事すら教えてない。

 だから新人がすぐ死ぬ」

 それが問題だった。

「すぐに死ぬから、迷宮攻略もはかどらない。

 素質や才能を持ってる奴も、開花する前に死ぬ」

「まあな」

 それはよく言われる事だった。



 優れた素質や才能を持つ者はいる。

 タケヒト達がまさにこれだ。

 レベルによる能力上昇の幅が大きい。

 ヨシユキよりもだ。

 そういった者達がいれば、迷宮攻略はもっと進む。



 その為には、レベル1の段階を超えねばならない。

 なのだが、ここを超えられずに死ぬ者が多い。



 原因は明らか。

 迷宮で生き残るための知識や経験がないから。

 戦い方だけではなく、隊列や陣形、警戒の仕方に罠の発見方法。

 こういった初歩的な知識すらもないのがほとんどだ。

 旅団に入ったならば、こういった事を学ぶ機会もあるのだが。



「そうでない初心者は何も知らないで迷宮に入るしかない」

 だからすぐに死ぬ。

 最弱の怪物との戦いすら勝ち抜けないで。

 無駄に命を散らしていく者達があまりにも多い。

「そこをどうにかしたい」



 理由は簡単、町を守るためだ。

 新人が死ぬ事無く順調に育てば、その分だけ町の危険は減る。

 それに、人材確保にもつなげたい。



「今のタケヒト達がそうだけど、代わりの人間は簡単に見つからないだろ」

「そりゃあな」

「でも、新人が育てば、そういう問題も解決する。

 簡単に成長はしないけど、育てば肩を並べる奴も出て来るさ」

 その為にも、人を育てねばならなかった。

 少なくとも、初歩的な事だけでも伝えていかねばならない。



「だから、そこで育った奴を受け入れて欲しい。

 奥まで連れていけるくらいに育った奴を」

「なるほど」

 ヨシユキの言いたい事を周りの者達は理解した。

「そういう事ならしょうがないか」

 ヨシユキの勧誘も諦めた。

 将来的な利益を考えれば、決して悪い話ではない。

 素質や才能がある者なら、2年か3年で頭角をあらわす。

 それまで待てば良いのだ。



「それまで、死ぬわけにはいかないな」

「ああ、生き残ってくれ。

 俺も下請けとして頑張るから」

「そいつはありがたいな」

 ここでタケヒト達はようやく笑った。

「こんな心強い支援はない」

 まったくだ、そうね、と周りの者達も頷いた。

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