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第5話 上級モンスター(後編)


「セシリア! どうすればいい!?

 大剣の使い方を教えて!!」


 付け焼き刃でも彼女のアドバイスがあればなんとかなる気がする。

 行き場のなかった僕を救ってくれたセシリア。

 僕に仕事と鍛え方を教えてくれたセシリア。

 今回だってきっと————


『…………わかんない』



 …………へ?



『そ、そんな大きい剣使ったことないし!

 私は一般的な片手剣使いだし!

 仲間にも大剣使いはいなかったからどう構えてどんな技使うのかも知らないよ!』

「はあーーーーー!?

 大剣があればって言ってたじゃん!」

『本当にあるなんて思ってなかったもん!

 でも言霊ってあるじゃない!

 願いが半分くらい叶ってちょうどいい長さの剣が出て来ないかなあ、って期待してたの!』

「だんだんセシリアが信用できなくなってきたよ!」

『なんですってーーー!!』


 不毛な言い合いをしている僕らだが、はたから見れば僕が独りで騒いでるようにしか見えない。

 だからなのか? ダイアウルフが警戒して飛びかかって来ない。


『とりあえずそれでなんとかしなさい!

 大きくても剣なんだから!

 斬りつければなんとかなるわよ!』

「剣術を学ぶ意味!?」


 もうムチャクチャである。

 でも、やるしかない。

 幸い鍛えていた甲斐あって重くて腕が上がらないと言うことはない。

 どうにかこれで斬りつけて————


『違う! そうじゃねえ!

 重心は腰より下!

 脇を締めて柄を体に寄せろ!』


 ロンが叫んで構えを取った。

 僕は反射的に彼を真似るようにして構えを変える。

 すると、手に持っていた大きな荷物を背中に担いだかのように重さが分散し、窮屈さが消えた。


『そうだ! 腕の力で振ろうとするな!

 体を剣の一部だと思って、刃を振るうために全身を動かすんだ!

 大きく振れば、剣の重さが速度に変わって威力を発揮する!』


 単純に、そして的確に大剣の扱い方を指南してくれるロン。

 彼もこの剣を扱うために修行を繰り返したのだろう。

 それはきっと、冒険者になって護るために————



「ヴァオオオオオオオオオオオオッッッ!!」


 ダイアウルフが吠える。

 臆した自分に怒るように。

 その恥を濯がんとばかりに牙を剥き出しにして襲いかかる。


 だけど、動きは見える。


 大剣を腰に溜め、地を這うような前傾姿勢で駆け出した。

 四足歩行といえどダイアウルフの巨体は地面との間に隙間ができる。

 襲いくる牙と爪を潜り抜け、その隙間に滑り込むことに成功する。

 後は全身を剣として斬り上げるのみ!


「でやあああああああああっっっっ!!!」


 剣を大きく振るために身体を捻りながら跳ぶ。


 回転————回転だ。

 巨大な大剣を効果的に使うには遠心力によって剣先を加速させればいい。

 円を描くような軌道で放った回転斬りは大木のように太いダイアウルフの首を捉え、そのまま両断した。

 舞い上がる血飛沫から逃れるように満月の浮かぶ空に飛び上がった僕は自分の戦果を見下ろす。

 実感が湧かなかった。

 引きこもりで臆病者と詰られていた僕が初めての戦闘で巨大なダイアウルフを退治したなんて。

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