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La historio de Sorĉistino




 ──意のままに水や火を操る者がいた。

 洗濯や食器洗浄、水や火を用いる調理は彼女の得意技だった。火事に出くわせば水を降らせて消し止めたし、キャンプの竈に炎をともすことも、水面に波紋で絵を描くこともできた。彼女の指に操られて飛び跳ねる火の粉や水しぶきは、その美しさで時に人々の心をも動かした。


 ──瞬く間に移動することのできる者がいた。

 移動手段に頼る必要のない彼女は、どんな場面にも一瞬で駆け付けた。買い物が必要ならショッピングセンターへ、臨時の担当交代が必要なら職場へ、被害者の介助が必要なら交通事故の現場へ。音もなく現れては役目を果たし、決して名乗ることなく姿を消した。


 ──人の心の読める者がいた。

 ほんの数秒ばかり相対しただけで、彼女は相手の為人(ひととなり)をたちまち理解した。心優しい彼女は相手のもっとも望むことをアドバイスし、未来を予言し、多くの人々を成功に導いた。抱え込んでいた不安や恐怖を暴かれ、彼女の周囲からは暗い顔が見違えるように減っていった。



 人々は彼女たちを嫌悪した。

 正体の分からない力を用いて火を起こし、水をまき、瞬間移動を行い、人心を覗く彼女たちを、心の底から恐れていた。

 火事場の消火に奔走した女はやがて疫病神と罵られるようになり、自分の家に火を投じられて命を落とした。瞬間移動で人助けを続けた女は「暴行を受けた」といわれのない非難を受け、決して出ることのできない牢屋の中に閉じ込められた。親切心から友人たちの人生相談に乗り続けた女は次第に気味悪がられ、遠ざけられ、やがて誰も相談に来る者はいなくなった。

 日夜、この国のどこかで、同じような力を持つ女性たちが傷付けられ続けていたが、そうした現状に疑問を投げかける者は誰一人いなかった。あんな奴らは消えてしまえばいい、気持ち悪い、いなくなったところで誰も困らない──。老若男女を問わぬ国民の大半が迫害を声高に是認し、支持していた。政治も司法も口を閉ざす中で迫害は公然と続けられる一方、わずかにでも彼女たちが力でもって対抗を試みれば、たちまち警察が重火器を携えて乗り出してきた。



 決して普通人には成し得ない、神秘の力で物事を成し遂げる異能力『魔術』。

 その使い手を、人々は限りのない恐れや侮蔑を込めて、こう呼んでいた。



 ──魔女、と。








挿絵(By みてみん)









『見習い魔女カナの憂鬱』をお手に取っていただき、ありがとうございます。


本作『見習い魔女カナの憂鬱』は、三日に一度、午後7時に更新をしていきます。

全28話、完結は12月中頃です。

約三か月の連載期間、どうかお付き合いいただけると嬉しいです!



■!■ この物語はフィクションです。

実在する人物・地名・施設・事件とはいっさい関係ありません。




▶▶▶次回 『Sorĉado-01 ひとりぼっち』

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