五つの難題がチョロ過ぎるかぐや姫
誰も居ない所で読んで下さいね
竹取の翁さんが、ストレス発散に竹を切りまくっていると、光る竹がありました。
爺さんが暇潰しの果てに会得した、五条流水面浮島切りで光る竹を切ると、中から真っ二つになった女の子が出て来ました。
「おっと……」
爺さんは何も見なかった事にし、変わりにその辺に居たユリちゃん(3歳)を連れて帰りました。
爺さんと婆さんはその子に『かぐや』と名付け、お姫様みたいにとても大事に育てました。
かぐや姫が大人になった頃、かぐや姫と結婚してやろうと企んだ野郎共が、爺さんの家へと押し掛けました。
「俺だー! かぐや結婚してくれー!!」
かぐや姫は冷静に答えました。
「ユリは今から出す五つの難題を見事乗り越えた者と婚約致しまする」
野郎共は固唾を呑んで、続きに耳を傾けました。
「隣の客はよく柿食う客だ──はい♪」
「…………は?」
訳が分からず、野郎共が聞き返します。
「隣の客はよく柿食う客だ!」
「と、隣の客はよくきゃ──」
野郎共が次々と舌を噛み、爺さんの庭先が次々と朱に染まりました。
「カエルぴょこぴょこみぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこむぴょこぴょこ」
「カエルぽこぽこみぴょ──」
野郎共の舌が次々と庭先に転がります。今日の夜ご飯は牛タン弁当です。
野郎共はすっかり諦めて、退散してしまいました。
ある日、そんなかぐや姫の噂を聞き付け、入社10年目のベテランアナウンサーが爺さんの家へとやって来ました。
「かぐや姫さんに結婚を申し込みたく思います」
「それじゃあ、ユリから五つの難題ね?」
かぐや姫が無邪気な笑顔で迎えました。
「生麦生米生卵──はい♪」
「生麦生米生卵生麦生米生卵生麦生米生卵!」
「すごーい♡」
かぐや姫が手を打って褒め称えました。
「赤巻紙青巻紙黄巻紙──はい♪」
「赤巻紙黄巻紙青巻紙赤巻紙黄巻紙青巻紙赤巻紙黄巻紙青巻紙!」
「すごいすごーい♡」
かぐや姫が割れんばかりの拍手で褒め称えました。
早口言葉を二つ突破した人間は、かつて七人しか居らず、かぐや姫は久々の強敵に心を躍らせました。
「じゃーね、『ピザ』って10回言って?」
「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」
「ここは?」
「アゴ」
「すごーい♡」
かぐや姫が急にアゴを指すので、新手の引っかけかと一瞬戸惑いましたが、大手テレビ局に10年務めて培った勘は「かぐや姫は唯のアホ」だと告げた為、正直に答えました。
「ここまで来たのは貴方で三人目です」
どうやらこの国の人々は極めて知能指数が低いようです。
「パンはパンでも美味しいパンは!?」
突拍子も無い質問に、思わずツッコミを入れたくなったアナウンサーでしたが、かぐや姫の口の脇に餡子が着いていたので「アンパン」と答えました。
「ねー、美味しいよねー♡」
どうやら正解のようでした。この質問に限っては難題のようでした。
「じゃあね、ユリから最後の難題ね?」
アナウンサーは少しだけ緊張しました。しかし、多分またもや突拍子も無い問題が来るかと思うと、緊張するだけ無駄な気がしました。
「ユリの事、大好きって言ってみて?」
「──!?」
アナウンサーはフリーズしました。
真面目一徹10年。スキャンダルを恐れ夜の街はおろか、女性にすら近寄らず同席もせず暮らしていた男にとって、いきなり「好き」と言うにはハードルが高すぎたのです。
「す、すすすす、すすっ! すー…………!!」
「ブーッ! 時間切れー」
「──!!」
男は失意のあまりそのまま白目を剥き、赤面したまま気絶してしまいました。
男はかぐや姫の膝の上で目を覚ましました。
「あっ、起きた~?」
かぐや姫が口を手で押さえ、クスクスと笑っています。
「あんなに赤くなっちゃって、そんなにユリの事好きだったんだね♡」
そう言われてアナウンサーの顔が再び赤くなりました。
「そんなに好きなら、結婚して あ げ る ♡」
「──ふぁぁ~!!」
腑抜けた断末魔と共に、爺さんの庭先がアナウンサーの鼻血で朱く染まっていきました。
読んで頂きましてありがとう御座いました!
(*´д`*)