BIRTHDAYレストラン
1000人規模のレストランの厨房の前の席にいる。
彼女とのディナーだ。
今日は僕の誕生日。
彼女がこのお店を予約してくれた。
もう、楽しみで楽しみで仕方ない。
「あれっ、ヨウコじゃない?」
「えっ、嘘?ナギサ?」
彼女の親友が偶然来店し、二人は長い間、話し込んでいた。
やがて、その友人は去り、彼女と二人の時間が続いた。
他愛もない会話の中に、僕の誕生日の話は全く出てこなかった。
すると、ケーキを運ぶ店員が出てきた。
でも、どんどん遠ざかってゆく。
それが連続した。
出てきたと思うと、違うテーブルに運ばれる。
自分の番はなかなか来ない。
そして、やっと僕のテーブルにケーキが来た。
しかし、ケーキには彼女の名前が書いてあった。
そして、歌にのせて彼女の名前が連呼された。
あちらのお客様からです、と言われて向いてみると、彼女の親友が手を振っていた。
「実はね、私の誕生日は今日だったの」
彼女が僕に伝えていた誕生日は嘘だった。
そして彼女は、僕の誕生日など一切覚えていなかった。