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不思議の国のアリス?1話 ゆな編

 パチパチパチ―――

 暖炉にくべられた乾いた薪がゆらゆらと揺れる炎に撫でられ心地よい音を立てている。そして暖炉の前のソファにはこの屋敷の主が本を片手にやや物憂げな表情を浮かべていた。

 4月に入ったものの、冬の間にどこかでサボっていたのか急に思い出したように寒波が押し寄せており、時に雪がちらちらと見えるような不思議な天気が続いていた。

「はぁ」

 少女は深くため息をつくと、読んでいた本を脇のテーブルに乱雑に置き窓から見える季節外れの雪が降りしきる庭を眺めた。

「やれやれ・・ただでさえ街は閑散としているのにこんな天気じゃどこにも行けないわね」

 1月の下旬から突如世界中で流行した流行り病によって、都市部の人の活動は寂しいものとなっていた。当然、ヴィアレットの本家と分家も人の集まるパーティや会議などは行えるはずもなく、私を含む屋敷の多くの使用人がこのひと月近くを退屈に過ごしていた。

「ゆな~」

 執事の霧島が話しかけてきた。

「6月に予定されていたパーティだけど、取りやめということになりましただとさ」

「また?もうこれで4ヶ月カレンダーが開いてしまったわね」

 私はがっくりと肩を落としながらため息を一つついた。

 2月から大事をとって全てのスケジュールがキャンセルとなり、すでに6月末まで予定らしいものはない。気分転換に買い物でもと思っても、屋敷の使用人たちは目を吊り上げながら止めてくる始末だった。

「はぁ、人ごみは好まないといってもずっと屋敷のなかだと退屈だわ。せめて友人でも招くことができたらね」

 私は窓のそばを離れると、再び愛用のソファに座り直した。もうすでに何日こうして無為に過ごしているだろうか。生来退屈を嫌う性分か、同じような日々の繰り返しにイライラとした気分となってしまう。

「まぁ分かるよしんどいよな。ココア入れるけどいる?」

「そうね、ありがとう。貰うわ」

 私の返事を聞くと、霧島はさっさと踵を返してキッチンへと向かっていってしまう。ラウンジには珍しく私一人が暖炉の前に座っており、しんと寂しい空気が流れている。

「はぁ」

 私はまたひとつため息をつくと、そばにあった読みかけの本を取り上げ読み始めた。が、何一つ頭に入ってこず、本越しに見える暖炉の炎の揺らめきに目がいきだんだんと眠気に襲われてきた。私は重たくなっていく瞼を必死に開けようと抵抗してみる。

『いけないわ・・ここで寝たら霧島に・・何を言われるか・・』

 次第に身体がぽかぽかと温かくなり、四肢に伝わる信号が遮断されたかのように重たくなっていく。まるで入浴剤の溶けた風呂に身体を横たえているような感覚だ。

『ダメね・・眠たい・・・・』

 こうして私はソファに身を預けて居眠りをしてしまった。

 退屈を嫌う私の脳が作り出す不可思議な夢の入り口に手をかけた。

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