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夜の女子会

私の朝は非常にゆっくりしている。

 静かな夜を過ごした屋敷は朝の5時頃から動き始めるため、日の出と共に起きる執事・メイドたちがほとんどであるが、私は朝8時ごろにのんびりと起き始める。目覚まし時計のようなけたたましい音が嫌いなため、執事長のにゃん太郎がメイドと共に起こしに来るが、すぐに起きて行動となることはほとんどない。ベットからそれこそパペット人形のように連れられて専用の化粧台に腰をおとすと、そこから30分から1時間ほどかけて化粧と着替えに時間を費やす。結局私がしゃっきりと行動を開始するのは9時を優に回ってからだった。

「またメイドたちと遅くまでおしゃべりですか?」

 朝食を運んできてくれたにゃん太郎が呆れたように言った。

「ほどほどになさいませ」

「はいはい。でもちゃんと12時までには終わってるわよ」

 もういつものことなので私は好物のポーチドエッグの黄身をもてあそびながら適当に返事をした。

「やれやれ」

 にゃん太郎はもともと猫背な身体をさらにがっくりと落とした。

 

 夜9時頃。

 にゃん太郎には朝注意されたが、私の最近の趣味はメイドたちを部屋に呼んで夜中までおしゃべりすることだった。この時ばかりはさすがに乙女の部屋に執事をいれることはない。30畳近くある部屋の一角に設けられた大きなソファーに腰かけ、軽食や飲み物をつまむのが楽しみだった。時には映画を見たり、ゲームをすることもある。屋敷で生まれ、あまり外の世界を知らない私にとって、一癖も二癖もあるメイドたちの話はとても興味深くまるでおとぎ話でも聞いているような気分になった。今日ももきゅ・薫・ソアラ・月川と、たまたま帰国していたレムと一緒に夜の時間を楽しんでいた。

「思えばもきゅちゃんとは長いわよね。レムとも長いけど、一番身近だったかしら」

 私がそう言うと、もきゅは口元に指をあて天上に視線をやった。

「そうですわね。お嬢様のおそばにはもう何年もいさせて貰っておりますわ」

「そうなると、この中では私が一番新参者ですね」

 月川がコーヒーを片手に答えた。

「そうなるわね。どうかしら?仕事は忙しい?」

 私はそばにあった黒猫の抱き枕を抱きあげると、姿勢を変えるため座りなおした。私の体にはやや大きいため、抱くと猫の顔が顔に密着する。むにむにとした感触が心地よい。

「はい、とても。お屋敷の蔵書は膨大ですが貴重な物ばかりですのでとても刺激されます」

「それはよかったわ。ソアラちゃんもお屋敷はどうかしら?」

 月川の反応を見て安心した私は隣のソアラにも聞いてみた。

「私も綺麗なお部屋を頂きまして快適ですわ。それに」

 ソアラは手にしていたハーブティーのカップをテーブルに置くと、肩が触れるくらいにまで身を寄せた。

「こんなかわいいお嬢様がいるんですもの。毎日が楽しいですわ」

 彼女はそう言うと、鏡に映る自分を見るように私の眼を見つめた。

「あ、ありがとう」

 モデルにでもなれそうな美しい顔立ちの彼女に見つめられてなんとなく恥ずかしくなってしまった私は思わず顔を紅潮させてしまった。

「薫ちゃんもどう?」

 照れ隠しに紅茶に口をつけると、次は正面に座っている薫に聞いてみた。結局、なんだか屋敷に不満がないかカウンセリングのようになってしまっている。

「ん?ワイはいつも通り、のんびり過ごさせてもらってるよ。思えばその窓から入って、執事長と追いかけっこしたんだよね。懐かしい」

 薫は猫耳フードのパーカーを着て、だらんと寛いでいる。仕草の一つ一つが猫っぽくて可愛らしい。

「そうだったわね」

 私はその時のことを思い出してくすくすと笑った。

「あの時はびっくりしたけど、結局この一年あなたの出してくれる以上の服はなかったわね」

 私がそう言うと、薫は褒められて気をよくしたのか得意げな表情だ。

「レムは・・あら」

 ふと見ると、レムは空のカップを両手に持ったまますやすやと寝入ってしまっていた。そういえば、途中から会話にほとんど参加していなかった。帰国してすぐはさすがに疲れていたのかもしれない。すでに時計は11時を回ろうとしていた。

「急に呼んだのは悪かったかしらね」

 私がそう言うと、隣にいたソアラがレムの肩を軽く揺さぶった。

「ん・・あっ」

 レムはやや慌てた様子でソファに座りなおしたが、私を含めた全員の視線を受けて恥ずかしそうに身体を縮こめてしまう。いつもきびきびとした彼女の姿とのギャップにとても可愛らしく感じた。

 夜の女子会はにゃん太郎の小言が飛んでくるまで続いた。

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