ホワイトデ―3話
パーティがはじまって1時間もすると、皆さすがにお腹が膨れてしまい、お菓子をつまむ者よりもそれぞれのグループに分かれて雑談を楽しむ者の方が多くなってきた。かくいう私も今は暖炉そばのソファに腰かけ、ふわふわとしたクッションに身を預けながらパチパチと音を立てて燃える炎をぼんやりと眺めていた。
「お嬢様、眠いのでしたらおやすみになられては?」
玄武と交代で傍についている露五が毛布を掛けてくれる。最近はまた冬に戻ったのかと思うほどに夜は冷え込むことが多い。
「ありがとう、大丈夫よ。最近ぼーっとするような時間がなかったからこうしてるだけ」
やはり、歳はじめの3ヶ月は基本息つく暇もない。時間は色々と都合がつくことも多かったが、何も考えずただ時間を過ごすことはなかった。頭の固い私にとって、こうして何もせず頭を空っぽにする時間は大事なことだった。
「そういえば、あなたのケーキ・・美味しかったわ。とてもお洒落で見てて美しかったわ」
露五はやや照れたように微笑むと、再びソファの後ろに仕えた。
「お嬢様。おやすみの所失礼致します。」
露五がどいたのを見計らって執事が一人ソファのそばに膝をついた。守衛・監視室担当の青龍だった。
「あら、大丈夫よ。どうしたの?」
「はい。お屋敷の管理防衛のご報告を。すでに出入りなどはできないようにロックされておりますので、お気を付けくださいませ」
ふだんは執事長であるにゃん太郎に屋敷のセキュリティーの報告はいくが、最近は私にも報告をしてもらえるようにしてある。さすがに屋敷のことを把握していないのは良くないと考えたからだった。
「そう。分かったわ。今日もありがとう」
私がそう言うと、青龍はすぐに立ち上がって元の職務に戻ろうとした。
「あぁ、ちょっと待って」
青龍は再びソファの傍に膝をついた。
「そういえばあなたもお菓子を作ってくれたのよね。たしか・・」
「ウイスキーボンボンでございます」
私がテーブルの皿を確認しようとすると、青龍が一つの皿を指して言った。テーブルには各種のお菓子がまだ残っていた。
「これね。中身はスコッチだったかしら」
「はい。お嬢様のお好みのジョニーウォーカーを選びました」
他の屋敷のパーティに出向いた際にもたまに驚かれるが、私はスコッチや日本酒などのお酒をたしなむ癖がある。童女の見た目と大いにギャップはあると思うが、時折これが私が大人びているといわれる姿の一つだったりするのだ。
「気に入ったわ。また食べたいわね。余り物になっちゃうけど、よかったらこれとか持っていきなさい。美味しいわよ」
私は霧島作のマカロンや飴をいくつか皿に持ってこさせ、青龍に手渡した。
「お疲れさまね。いつも助かってるわ」
青龍はそのやや硬い表情を崩すと、恭しく礼をして職場へと戻っていった。
「なんだかまた食べられそうね。手を付けていないのってあったかしら」
私はソファから立ち上がると、再びお菓子の並べられたテーブルへと寄っていった。執事やメイドたちもそれぞれ手を付けたはずだが、まだまだ皿やバスケットにはお菓子がいっぱいに並んでいた。
「こうしてみるとまるで童話の世界にでも来たようね」
「はい・・」
「左様で・・」
そばにいた露五とメイドがくすくすと笑った。




