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Mamemaki War 7

 MAMEMAKI WARがはじまって40分経った。

 黄チームが屋敷の外で緑チームのシルヴィアを下す少し前に、すでに玄武たちの赤チームと露五たちが戦闘状態にあった。お互い因縁の相手である花組と雪組も顔を合わせておとなしくしているはずもなく、屋敷内に先に入った瞬間それぞれが争っている。

「やりますね・・・さすが元兵士」

「いえいえ・・やはり玄武さん。気を緩めたらすぐに終わりそうです」

 お互いに肩で息をしながら、3mの距離をとって向かい合っている。

 この試合では基本的に拳闘などは禁じられており、使っていいのは純粋に銃火器のみだった。しかも屋敷の備品を壊すことは認められていないため、素早い動きや徒手格闘を得意とする玄武にはやや不利な環境にあった。対して露五は一定のテリトリーからの移動を最小限にし、ハンドガンのみだが正確な射撃術によって玄武をじりじりと追い詰めている。

「こちらが撃とうと思えば撃たれる・・。これでは疲れるばかりですね」

 玄武のその嘆声を聞きながら、露五はマガジンを入れ替え銃を再び構えた。

 彼らの戦場となる大階段からすぐそばで息を潜める数人の姿があった。

青チームの4人だった。

「やれやれ、さすがに一番乗りはできないな。せめてこのままこっそりと移動できないものか」 

 青雪はそういうと、赤緑の占拠する大階段を避け、裏手にある従業員用の階段を目指そうとしていた。

「おっと。抜け駆けはよくねーな」

 彼らの後ろから霧島が話しかけた。

「はぁ・・やはりそうだね」

 青雪は小さくため息をつくと、予想した通りだといわんばかりに頭を振ると立ち上がって霧島たちと対峙した。

「さすがにここからは圧倒的に不利だが、やってみなきゃ分からないな」

 そう言うと、青チームの4人が自分の持つ銃火器を黄チームの5人に向けた。

「まぁまぁ。てゆーか、さっき窓から覗いたけどゆなは部屋にいなかったぜ」

「む?」

 青雪はその言葉にやや怪訝そうにすると、パァンという風船が弾けるような音がロビーに響いた。玄武と露五の放った大量の弾丸(豆)がお互いにぶつかり合い、空中に跳ねがり窓や扉に向かって飛んでいく。

 

「おいしそうにできてよかったわね」

「「「「「!!!!!!????????」」」」」

 執事・メイドたちの映画ばりの戦闘もそうだが、ヒロインが登場する瞬間もまたさばがら映画のようだった。一同が集まっていた屋敷の一階は食堂が置かれていた。当然、キッチンもまた併設されている。チョコレートを作り終え、女子4人での楽しい時間を過ごしたゆなたちがウキウキとした雰囲気で食堂の扉から出てきた。

 ゆなが扉を開けてすぐに目に飛び込んできたのは、こちらに向かって弓なりに飛んでくる豆粒だった。

「わぁ」

 彼女は小さく驚いた声をあげると手にしていたチョコを落としてしまった。

「「「「うおおおおおおお!!!!!!!」」」」

 開会式の時と同じく、全員の心が一致した瞬間だった。ゆなに豆が当たるのではと気付いてコンマ一秒もかからないうちに全員その場に銃火器を捨て、一心不乱に走っていた。ある者は盾になり、ある者はチョコをスライディングでキャッチしていた。

 大の大人十数人が一人の少女に豆粒が当たるのを防ぐために必死になることはそう見られるものではないだろう。

「「「「お嬢様!!!お怪我はありませんか!!!!」」」」

 ロビーに大人数のハモッた声が響く。

「え、ええ。大丈夫よ。みんなも大丈夫?」

 ゆなはしばらく呆気に取られていたが、すぐに落ち着いた様子で皆の心配をした。その声に安心したようでそれぞれに立ち上がると身についた埃などを払うと改めてゆなの傍に立った。

 各チームの代表である霧島、玄武、露五、青雪がそれぞれゆなの前に片膝を立てた。

「「「「お嬢様。フラッグを!」」」」

 4人は口をそろえて勝利条件であるフラッグをゆなから受け取るために。

 だが、しばらくして違和感に気づいた。

「お、お嬢様フラッグは・・」

 玄武が恐る恐る聞くと、ゆなは視線をやや上方にやり気まずそうに手遊びを始めた。

「あ、あれね・・」

 ゆなが歯切れも悪く、後ろを振り向くともきゅが一歩出ておずおずと何か黒い棒切れを差し出した。

 炭になってしまっている棒切れにほとんど原型もとどめないほどに焼けてしまった布切れがわずかに残っていた。

「実はうっかり鍋の傍に置いてたら火がついて燃えちゃったの。すぐに水で洗ったけど、こんなになっちゃった。ごめんね」

 ゆなはしょんぼりと謝罪の言葉を口にした。少し伏し目がちに俯いた姿は失敗してしまったのを落ち込んでいる子どもの姿そのものだった。

 しばしの間静寂があったが、霧島はすくっと立ち上がると頭の後ろで手を組みため息を一つつくと軽く笑った。

「まぁ、ゆならしいっちゃらしいな」

 続いて玄武や露五も立ち上がると、同じように笑った。

「それで、これは勝敗はどうしましょう?」

「いいんじゃねーか?勝敗はナシで。それよりチョコは何作ったん?」

 霧島はそう言うと、ソアラの持った包装紙に包まれたチョコレートを覗き込んだ。

「ビ―――!!赤チーム一名、緑チーム一名脱落です!」 

 突然脱落を知らせるけたたましい音声が屋敷の外から聞こえたと同時に外で争っていた棗と瑠璃が屋敷に入ってきた。

 二人ともまるで嵐に巻き込まれたかのようにボロボロの姿だった。

「玄武さん・・勝敗は!?」

「露五さん!フラッグは受け取りましたか!?」

 どうやらギリギリまで拮抗していたようだが、結局相打ちとなって二人の勝負は終わったようだった。

 ゆなはカオルからチョコを受け取ると二人の傍まで寄っていった。

「ほら2人とも、トリュフよ。食べなさい」

「「あ~ん」」

 ゆなが2人の前に一つチョコを差し出すとまるで鳥の雛のように顔を近づけた。ぴたっとゆなの指の前、二人は顔が触れそうなほどの距離で止まった。

「ちょっと何?お嬢様は私にあ~んしてくれたのよ。おばさんはすっこんでてくんない?」

「あらあら、なんでも自分を中心に物事が回ってると思ってるなんてとんだ子どもね、自意識過剰もほどほどにしたら?」

「「あ!?」」

 二人は再び顔を突き合わせてにらみ合った。

 ゆなはため息を一つついてやれやれと首を振った。

 屋敷全部を巻き込んだMAMEMAKI WARは閉幕した。

 その日の夜、食堂ではおかずにデザートが一品加えられた。少しビターに味付けされたほろ苦いチョコレートだった。

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