Mamemaki War 4.5
MAMEMAKI WARのルールでは敷地内の庭からスタートし、屋敷内の私の部屋のフラッグを獲得すれば勝ちとなっている。外では今頃豆を武器に執事とメイドたちが死闘を繰り広げているだろう。
それとは真逆の雰囲気のなか、私はキッチンでカシュカシュとボウルに入った卵を泡だて器で混ぜ合わせていた。
ぷつぷつと泡立って、砂糖の甘い香りが漂ってくるのを見ていると思わず味見がしたくなってしまう。
「これってこんな感じでいいの?」
「はい!とてもお上手ですよお嬢様」
そばで違う作業をしていたもきゅはそう言うと小さく拍手をしてくれた。
私は部屋から一応持ってきていたフラッグをちらっと見つめた。今は邪魔にならないようキッチンの片隅にぽつんと置かれている。
「お部屋にいなくても大丈夫かしら」
「大丈夫ですよお嬢様!まだ始まったばかりですし、屋敷内に選手が入ってきたら連絡がくるようになってますから」
そう言うともきゅは通信機の入っているポケットを叩いた。
開会式が終わってすぐ、私はもきゅや薫たちに連れられ屋敷1階に設けられたキッチンへと赴いていた。MAMEMAKI WARの景品となるバレンタインチョコを作らなくては・・という名目もあるが、エプロン姿に三角巾を付けた女子4人がキッチンで楽しくチョコ菓子作りをしているだから、ほとんど女子会のような雰囲気がある。
「あ、お嬢様。湯煎が終わりましたよ」
隣のコンロでチョコを湯煎していたソアラはそう言うと、私の持った卵のボウルに湯煎したチョコと薄力粉を混ぜてくれた。
「それではお嬢様。こちらのへらでよ~く練ってください」
ソアラからゴム製のへらを受け取ると、耐熱容器の中で卵に浸かったチョコを練っていく。
「これひょっとしてフォンダンオショコラ?」
「ええ、お嬢様がお好きと聞いていましたので」
「嬉しいわ。ホットチョコとか好きだから」
私がそう言うと彼女は嬉しそうに微笑んだ。
料理がしやすいよう髪を後ろでまとめ普段はつけない眼鏡をかけた姿は、まるでお姉さんのようで思わず甘えたくなってしまいたくなるような雰囲気があった。この4人のなかでは一番背丈があって身長差がある分、余計にそう感じてしまう。
ある程度混ぜ終わったボウルをソアラに任せると、後ろではカオルがせっせと作業をしていた。私は隣から彼女の作業を覗き込んだ。
「薫は何を作ってるの?」
「ん?これはトリュフだね~」
彼女はボウルのなかで少し固まったチョコをスプーンですくうと小さなボール状にこねていた。パットに並べられたチョコの塊がライトの光に照らされててかてかとしている。
「美味しそ~」
その様子を横から見ていると自然と顔を近づけてしまう。
「ゆなちゃんあ~ん」
薫は並べられたものよりも小さいチョコの塊を私の前に差し出してくれた。少し気恥ずかしい気持ちもあったが、私は一口にそのトリュフを食べてしまった。
「ん~!美味しい~!」
少しべたついた感触はあったが、ほろ苦くも甘い味が口いっぱいに広がり思わず声が出てしまうほどおいしかった。
「えへへ~美味しいよね~」
そう言うと薫も同じようにチョコをつまみ食いした。手についたチョコも軽く舐めとってしまう。
「ちょっと行儀悪いけど今日だけ今日だけ」
しばらく二人できゃいきゃいとはしゃいでいると、いつの間に入り込んだのか足元に白猫が一匹佇んでいるのに気づいた。
「お、モチじゃん~。お前も女子会に加わるか~」
薫はそう言うと足でうりうりとモチの横腹を撫でた。
「でも猫にチョコはダメだからなー。気分悪くなる前に違う部屋行ってなー」
にあー。
モチは一つだけ鳴くと、そのままキッチンを後にしていく。
「できたー!!」
違うスペースではもきゅが立派なチョコケーキを作り終えていた。




