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温泉旅行2

 車やバスなどの乗り物に乗っていると、必ずと言っていいほど居眠りをしている者がいる。前日に8時間以上の睡眠をとり、朝すっきりとした状態で起きたとしてもなぜだか心地よい睡魔が襲い、気付けばあっという間に目的地についている。生き物の睡眠についてのメカニズムはまだまだ謎の部分が多いが、一説には脳が乗り物の安定した低周波振動と同調することによって眠気を誘引するといわれている。ゆりかごの気持ちの良いリズムと同じだろうか?

 久しぶりの友人との再会に気持ちが高ぶり、騒がしいほどにおしゃべりを楽しんでいた私たちもその例には漏れていないらしい。屋敷を出てから30分も経たないうちに3人仲良く眠り込んでいた私たちは運転を担当してくれている仲居さんの声でようやく目を覚ました。

「あっという間だったわね。景色を楽しむ間もなかったわ」

 私は車から降りるとまず固まった体を伸ばした。玄関ロビーには誰もいないので、こんなみっともない姿を見せても気兼ねはいらない。

「瞬間移動でもした気分やな~。乗り心地最高や」

 続いて降りてきた凛風も身体をく~っと伸ばした。

「全くですね~。普段これ使ってたら仕事にならなそう」

 最後に沙綾も並んで3人仲良く伸びをし、都会の喧騒から離れた自然豊かな土地の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

「それではお嬢様方。お部屋へご案内いたしますのでこちらへどうぞ」

 運転席から降りた仲居はてきぱきと預かった荷物を運び出すと、先頭にたって歩き始めた。私たちは彼女に付いて普段客が立ち入ることのない専用の廊下を通り、旅館の中腹にある小さなロッジへと案内された。

 仲居さんは扉の前に立つと壁に備え付けられた指紋認証の鍵に指を入れた。ピピッという電子音のあとにロックの外れた音がした。

「お待たせいたしました。なかへどうぞ」 

 私たちは無造作に靴を脱ぐと、その美しく整えられた部屋に入った。

 一階は和風なリビングになっており吹き抜けの二階は洋室となったメゾネットタイプの部屋を用意してもらった。和室の窓そばには露天風呂が付いており、目の前に広がる美しい海と空を独り占めできる。

「ん~、いつ見ても美しい絶景ね!」

 私はさっそく部屋から続くデッキテラスからどこまでも続いていく水平線を眺め、再び大きく伸びをした。

「ゆな~!二階のベッドすごいで!沙綾も来ぃ!」

 私たちは凛風の呼び声に応えると階段へとダッシュし、二階までドタドタという足音を響かせながら一気に駆け上った。

 キングサイズのベッドにすでに凛風が大の字に寝転がっており、私と沙綾はその横に2人してダイブする。まるで大きなクッションのようなマットレスが身体を受け止めると、そのまま3人で川の字になって横になった。

「は~~めっちゃ柔らかいなこのベッド」

「うちにも欲しいですこのベッド。置けないかもしれないけど」

「屋敷のとはまた違うわね。気持ちよ~」

 まるで天上の雲にでも横になっているような気持ちで、私たちはしばらく過ごした。

「あかんあかん!このままやとまた寝てまう!!せっかく眺めの良い部屋なんやから景色堪能せな」

 凛風はうとうとと微睡みかけたのを振り払うと私たちの腕を引っ張り起こした。まだ着いたばかりなのに上へ下へと忙しい子だと思う。

「そんな焦らなくても景色は逃げないですよ」

 沙綾は半分寝ぼけた眼で凛風を見た。凛風のいう通り確かにこのままだと寝てしまいそうだ。

「明日には帰るんやから逃げてまうのと一緒や!せや、目覚ますには風呂や!露天風呂入ろ!」

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