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正月ー初詣

1月1日。

 核家族化が進んだ昨今、一族が一つ屋根の下に住むということはだいぶ少なくなってきた。本来なら父母から離れた子供が自分の家庭を持ち、家から独立するという形式である。ヴィアレットのような一族のつながりが深い家でもその点はあまり変わらない。現にゆな=ヴィアレットの屋敷に住む者のなかにゆなと血縁のある者は一人もいない。とはいえ、元旦を迎えれば家族が集まるのは恒例行事には違いない。

「ママに会うのも久しぶりね。いつぶりだったかしら」

 私はヴィアレットの本家で新年の挨拶をすませると、早々に執事・メイドたちとともとある場所へと向かっていた。今回は珍しくお付きの者たちを全て引き連れての移動のため、車両の隊列はなんだか非常に物々しい。

 モスグリーンのロールスロイスを中心に、前後にはベンツとBMWが付き、両サイドにはジャガーが付くという時の権力者も真っ青な車列である。一般道を通っているとはいえそこまでスピードは出していないのに、渋滞に巻き込まれることはなくすいすいと快適に車を走らせている。

「はい、お嬢様。10月に本家でお会いになられてから3ヶ月ほどになります」

隣についたもきゅが答えた。ちなみに運転席側には露五がつき、助手席にも薫がついている。

「そんなにも会ってないのね。ママもお屋敷に住んでくれるといいのだけど、仕方ないわね」

 しばらくの間スムーズに走らせていた車の進みがだんだんと遅くなっていく。徐々に一通りが増え目的地に近づいてきているのがわかった。行列がぞろぞろとできているのをしり目にとある神社の裏へと車がまわっていく。関係者以外は立ち入ることのできない専用の駐車場だ。

「ここに来るのも久しぶりね!ママは元気かしら」

 私が車から降りると、すでに待機していた巫女服の少女が出迎えてくれなかにまで案内してくれる。執事・メイドを引き連れ境内まであがってくると、柵のはるか下の方に家族連れやカップルといった人々の波が見えた。除夜の鐘を聞きつつ一夜を明かし初詣に来ている人もおそらくいただろうと思うと、大晦日を屋敷で自堕落に過ごしこうしてショートカットで初詣に来ているのは少しズルをしているような気持ちになった。

 しばらく少女についていくと、そこはまるで別世界に思えた。下の参拝客のごった返した所と違ってここには神事を行うもの以外ほとんど歩いていない。時折、ぱたぱたと忙しく巫女服の少女がいる以外は静かで厳かな雰囲気があった。

 そのなかに金色の髪の少女を見つけた。赤白の巫女服に、童女のような顔が可愛らしい。

「ママ!」

 私はその巫女の少女に向かって大きな声で呼んだ。しんとした静寂を破る自分の声がこだまする。

「お~、ゆなちゃん!ひさしぶり~」

 少女はこちらの声に気づくと、ぶんぶんと手を振ってくれる。

 私は着付けた振袖が崩れないように気を付けながらもサコママの傍へと近寄っていく。

「ママ!新年あけましておめでとうございます!」

「はい~。明けましておめでとう~」

 お互いにぺこりと新年の挨拶をすますと、軽く近況の交換などをする。最後に会ったのは秋口であるため話したいことも山積みだった。

「お姉ちゃんは?」

「なかにいるよ~。あとで会っといで!」

 サコはそういうと仕えていた少女に一言二言伝え、境内の中へと自ら先導してくれる。神社の本殿の方には一般の参拝客は誰もおらずほぼ独り占めのような状態だ。

「それじゃ、こちらでお参りの方すましてね!」

 しめ縄と短冊の飾られたご神体を前まで案内されると私は一歩前に出てじっと見つめた。こうしてみるのは2度目だが不思議と家に帰ってきたような安心感を感じる。

 私たちはパンパンと2度柏手を打つと手を合わせたまましばらくの間沈黙する。おのおの何か願い事があるようでみな真剣に目を閉じて祈っていた。

「去年はありがとうございました。今年もどうぞよろしくお願いいたします」

「「「お願いいたします!!」」」

 屋敷の者たちの声が境内に響いた。ゆな=ヴィアレットの屋敷の新しい一年がこうして始まった。

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