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大晦日

 12月31日。

 ヴィアレットの屋敷はすでに仕事納めを迎え、年末特有の少し緩んだ雰囲気が流れている。すでに一般執事とメイドの一部は実家に帰省しており、いつもは忙しない広大な屋敷はいつになく静かだ。もちろん掃除や厨房などの生活に必要な人員はある程度残されているが、それでも平常の半分ほどしか屋敷には残っていない。

 

「はぁ~~、コタツっていいわね。何にもする気が起きないわ」 

 私はクリスマスパーティの際に一緒に搬入してもらったコタツに足をいれ、こうして日がな一日を執事・メイドたちと過ごしていた。正座は苦しいので掘りごたつにしてもらい、やや大きめのテーブルには他数人も一緒にくつろいでいる。

「ほんとそれ。何にもする気しないわ」

 向かいの席に座った霧島も顔を机に突っ伏しながら答えた。ちなみに私がラウンジに来る前からこの体勢でいるのでかれこれ数時間以上はこのままだ。

「君はいつもと変わらないでしょう。お嬢様もいい加減しゃんとなさってください」

 霧島の後ろの椅子に腰かけた玄武が呆れるように言った。彼だけ先ほどからかたくなにコタツには入らず椅子に座っていつでも動けるようにしている。とはいえ、目の前にはすでに食したミカンの皮が山盛りになっているので、彼は彼なりにくつろいでいるのだろう。

「まぁ今日くらいいいじゃない。特に何もすることもないし・・」

 ふわぁと一つあくびがでた。一応読みかけの本やゲームなんかもしてはいたが、どれもこれも中途半端なまま終わらせてしまった。全てのやる気を奪うコタツー恐るべし。

「お嬢様~」

 しばらくすると、席を外していたもきゅが戻ってきた。いつもは薄着な彼女も今日はもこもこと柔らかそうなセーターを着ている。

「お嬢様。執事長がお戻りになられましたよ~」

 そうだった。今日はにゃん太郎が旅行から戻る日だった。時計を見てみると、すでに6時を回っていた。昼頃からずっとここにいたわけになる。さすがににゃん太郎にもこの姿を見とがめられるかもしれない。

「お嬢様、ただいま戻りました」

 すでにいつもの執事服に着替えたにゃん太郎が、後に続いて入ってきた。

「あら、おかえりなさい。旅行はどうだった?」

「はい!とても良い時間を過ごさせて頂きました。ありがとうございました」

 意外にもこのだらけた姿を見ても特に反応はない。

 どことなく毛並みもつやつやしていて機嫌が良さそうだ。来年も同じように旅行に行かせてあげた方がいいかもしれない。

「大晦日だったから、道が混んでいたんじゃない?私もさすがに外に行く気にはなれなかったわ」

 実際昼頃に一度出かけようかとは思ったが、帰省や行楽シーズンで渋滞が起こっているらしく、結局一日屋敷にいた。

「そのようですな・・」

 にゃん太郎はコタツで突っ伏す霧島や、同じくコタツでくつろぐメイドを見て一つため息を吐いた。やはり小言が出るかと少し身構える。

「まぁ、今日ぐらいは大目に見ましょう。大晦日ですからな、無理もありますまい」

 にゃん太郎はそれだけを言うと、部屋を出ていった。なんだか拍子抜けなにゃん太郎の姿に意外さを感じる。

「・・来年もにゃん太郎には旅行をさせてあげましょう」

 執事とメイドたちは無言で顔を見合わせるとうんうんと頷きあっていた。

 こんな調子で一日が過ぎていった。

 ご~ん・・

 遠くから除夜の鐘の音がかすかに聞こえた。

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