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雪遊び

12月

地球温暖化の影響なのか、近年は11月でも随分暖かい。足元から冷える空気を遮断してしまえば、じりじりと射す太陽でむしろ暑いくらいだ。当然、冬の風物詩である雪もとんと見なくなってしまった。少なくとも去年までは。


「うわぁ、随分積もったわね」

いつも窓から見下ろす青々とした木々や池を真っ白な雪が覆い隠し、一面銀世界と言うのが相応しい。

例年は1月下旬までずれ込んでいたのが今年は寒波が押し寄せ、12月の半ば頃からちらちらと降るようになっていた。暖房は苦手だが、さすがに凍えるような部屋で過ごすことは難しくなってきた。


私は早速いつもの服に着替えると、その誰も踏み入れていない庭へと出た。

ギュッギュッと歩くたびに鳴る音がなんとも非日常的で心地よかった。

「ふぇぇ。お嬢様」

あとから、メイドのもきゅがまるで布団にでもくるまっているかのような厚着をして、おそるおそる玄関から出てきた。

薄花色の肌と金色の髪が雪のキャンバスに鮮やかに彩られている。

「あぁ〜〜〜〜、寒いですぅ」

もともと南国にほど近い島育ちの彼女には雪はとても縁遠いものだった。

「ほらほら、寒いなら中に入ってらっしゃい」

「そういうわけにはいかないですわ…」

雪は既にやんで風もあまりないが、コートを着ていても冷える。彼女はぶるぶると身体を震わせながらも、健気について来ようとしてくれる。

ひゅうと冷たい風が頬を撫でた。

「ひぃぃ・・」

もきゅはさらに身体を縮こませ、布団のボール球のようになってしまう。


「おはようございますお嬢様」

不意に後ろから声をかけられて振り向くと露五が雪かき用のスコップを片手にたっていた。

冬用のダッフルコートに身を包み、防寒対策バッチリの姿だった。

「あら、おはよう。早いのね」

「はい。さすがにこの雪では歩くこともままならないので、カメラや門までは一通り」

露五は赤くなった耳をさすりながら、自分の作業をしてきた道を目で追っていた。

「お疲れ様だったわね。こんなに降ったの見たことある?」

「いえ、雪を見るのは珍しくありませんがここまでは…」


露五はなにか思いついたらしく、玄関から少し離れた中腹まで誘っていく。そこには集めた雪がまるで大きな雪だるまの胴体のように鎮座していた。

「お嬢様は雪遊びは何か経験がございますか?」

「そういえばないわ・・」

一応今年の2月頃雪は降っていたが、足元にほんの少し積もる程度で特段遊んだことはない。


「承知しました」

露五は時計を取り出すと、竜頭をカチッと一つ押した。

時間とは別の小さなメーターが小さく動き始める。


「とりあえずかまくらなどを・・」

露五はそういうと片手を積もった雪にかざした。

ドーム状の雪の塊をまるで見えない掘削機でもあるかのように削っていく。大まかに削って塊に空間を作ると、最後に入口に向かって整えていく。もともと土を扱う職人だけあって手際よく慣れたものだった。

「できました。お嬢様、なかへどうぞ」

露五に促され、私はやや小さめな入り口からかまくらに入ってみた。なかは見た目よりも広く感じて風が遮断されているからか意外と温かい。

「へぇ~こんな使い方もできるのね」

私はなんだか秘密基地というか隠れ家を見つけた子供のような気持ちだった。

「まだ精密な動きや調整はできかねますが、静物や単純な分子構造を持つ物は苦ではなくなりました。いかがですか」

「なんだか秘密基地のようね。ここでお菓子を食べたら楽しいかも」

よくテレビの番組でもかまくらのなかで食事などを楽しめるレクリエーションなどを見たことがあった。あそこまでは無理でもせめてお茶でも飲めたら楽しいかもしれない。


「お嬢様~」

しばらくするともきゅが小さなバスケットを手に必死にこちらに走ってくるのが見えた。さきほどの防寒着よりもさらに厚着をして目ぐらいしか確認できないが。

「お嬢様~こちらホットココアですぅ」

もきゅはそういうとバスケットの中から水筒とカップを取り出した。

「ありがとう。ほらここに入るといいわ。露五も入りなさい」

もきゅをかまくらのなかにいれると、入り口から顔を出し露五にも入るよう促す。

「いえ、私には小さすぎましたので、お2人でお楽しみください」

露五はかまくらの外壁を周りながらさらに固めていく。

透けて差し込んでいた光が徐々に少なくなっていき、少し暗くなっていく。

私はしばらくココアが注がれたカップを手に、もきゅと歓談しながら時間を過ごした。秘密基地らしくひそひそ話をし、時々そばを他の執事たちが通るのを見てくすくすと笑った。

水筒のココアがなくなるまで私たちはそこで時間を過ごした。

朝ご飯を食べるのを忘れていたので、お腹が鳴るころに屋敷へと戻った。


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