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おしゃれ

「お嬢様~~こちらの服はいかがですか?」

「あらいいじゃない」

金髪のメイドが手にした藍色のコートを私の身体にあて、着せ替えを楽しむ女児のように楽しそうにはしゃいでいる。

「ん~、でもこれいつもと同じ感じになるわね」

すでに何着かコート類は試したが、どれもいつもと同じようなデザインになってしまいがちでどうも決め手に欠けていた。


こうしてみると、まるで女子高生がウィンドウショッピングを楽しんでいるようだが、私たちがいるのはだれもが知るような有名ブランド店の中だった。ドレスを着た少女に、メイドや執事があれこれと店内は物色する様はなんとも不可思議な光景だったろうと思う。


「わざわざ買いに行かなくても、わいに任せてくれればすぐなのに・・」

付き添いで訪れた衣装係のメイドがつまらなそうな口ぶりでつぶやいた。

「まぁまぁ。あなたの服も素敵だけど、たまには違う人の作った服も着てみたいのよ」

基本的に彼女は仕事には忠実で特に不満を漏らすことはないが、こうして服を見に来た時に限ってはいつも機嫌が悪そうにしている。何度かそういう機会があるうちに自分の仕事をとられているような気持ちなのだろうということに気づいた。


とはいえ、すでに何度かこうしてショッピングについて来ているのだからなんだかんだと気になってはいるのだろう。

ぶつぶつとぼやきながらも様々に並べられている衣服や小物をチラチラと眺めている。ここら辺の素直になれない辺りはまさしく猫っぽい感じだ。

「ふふ・・・」

そんな意地っ張りな姿を可愛く感じて笑いがこみあげてしまった。

「ん~、目が慣れているからか屋敷にありそうなものを選んでしまいますわね」

金髪のメイドが口元に指をあて悩まし気に考えている。

彼女はもともとの職業もあって、服や装身具から調度品までおしゃれで品の良いものを選んでくれる。私の部屋の家具も彼女が来てから選んでくれたものだ。

まぁその分値もはるから、にゃん太郎はまたおなかをキリキリと痛めていたけど。

「お嬢様のほうで希望はございますの?」

しばらく並ぶ服と格闘していたメイドは私の方を振り向いて言った。そういえばコーディネイトの希望は何も伝えていない。

「そうね・・たまにはカジュアルな装いもしたいわ。せっかく髪飾りも貰ったし、あれに合うようにしたいわね」

「あぁ!そうでしたわね!でしたら、今回は思い切ってイメージを変えましょう!」

金髪のメイドはウキウキとした足取りで違う服を見繕っていく。

イメージが固まると選ぶのが早く、あっというまにコーディネイトが決まってしまう。スカートなども合わせてみたが、さすが綺麗な装いで特に不満はない。


「それじゃ、この服でお願い」

数時間ののちに選び終わった服を店員に渡す。

今回はブーツやシャツも選んだ全身コーディネイトだ。

「はい。それでは採寸を致しますのでこちらへどうぞ」

店員の女性に促されてフィッティングルームへと通される。

お付きのメイド二人がひらひらと手を振って見送ってくれた。


中は壁いっぱいの大きさの姿見に、服の生地やボタンなどの素材が所狭しと並べられている。外からうかがい知れないように窓もないので少し圧迫感を感じるが、特別なものを作っているというわくわく感もある。

「それでは失礼させて頂きますね。腕を水平にお願いいたします」

店員の女性はメジャーを使って腰や胸周りを採寸し、丁寧にメモに書き込んでいく。特に関節部位の部分はきっちりとミリ単位まで測るため、通常よりも時間はかかってしまう。

とはいっても、私はこの姿のまま全く成長やサイズが変化しないのであまり意味はない。このお店で買うのもすでに慣れたものなので、私の身体のデータは屋敷の整備係なみにあるかもしれない。

「今回は結構思い切られましたね。いつものイメージとは真逆です」

店員の女性はてきぱきとした手つきで服を合わせてくれるが、合間に軽く会話を挟んで退屈しないようにしてくれる。

「そうね~。確かに自分ではあまり選ばない色かも。でも素敵な色合いね」

いつもは紫や青を多用している分、今回のイメージカラーはずいぶん違う。

「こちらはイギリスのデザイナーが19世紀のロンドンをイメージして現代風にアレンジしたものです。お嬢様にはとてもお似合いです」

「あら、そうなの?ならパイプを咥えてみようかしら」

私はパイプたばこを吸う仕草をしてみる。正直たばこを吸った経験はないのでイメージでしかないけど。

「あのお堅い執事様に怒られてしまいますよ?」

店員はくすくすと笑った。そうこうしているうち、採寸が終わる。

「お疲れさまでございました。それではこちらが預かり表となっておりますので、お仕立てが終わりましたら連絡の方を」

「ありがとう。楽しみね」


後日。店のテーラーが屋敷まで服を届けに来てくれた。

わざわざ足を運ばせて悪いと思ったが、年末も近いので挨拶もかねてとのことだった。

丁寧に包装された衣装を受け取るとさっそく自分の部屋で着替えてみた。


いつものゴシックドレスとは変わってヘッドドレスはなく、代わりにやや小ぶりな赤色のリボンで髪をまとめた。

ベルトを多用した少しパンク風なブーツに、金色のストライプの入った黒のソックス。

赤色の上下にインバネスコートのようなケープ。青色の宝石のはめられたポーラータイが首元に光っている。

これから冬本番となり、人々がシックな装いをしがちななか、これだけ燃えるような真っ赤な衣装に身を包んだ少女が歩くのはとても目立つだろう。

以前海外からのお土産で貰った歯車のヘアピンで前髪をとめてみる。イギリス風のシンプルな雰囲気に歯車がつくと、カジュアルながらパンク系のテイストもうまれてとてもかっこよく見えた。


「どうかしら?」

メイドや執事の集まるラウンジへ足を運んでみた。

案の定いつものメンバーがいたので聞いてみる。

「素晴らしい!!さすがです!」

「可愛らしいです!お人形さんみたい!!あ、ドールか・・」

かなり大胆なイメージチェンジだったが、評判はよさそうで安心した。


「これは屋敷の者全員に見せなくては!館内放送を!」

ん?

聞くが早いか複数のメイドたちがそれぞれの持ち場に飛んで行った。

「ピンポンパンポーン。緊急放送です。一階ラウンジにてお嬢様の新しい衣装のお披露目がございます。現在の仕事は中断し、ラウンジにお集まりください」

んん?

「お嬢様!今ステージを作りますので、少々お待ちください!」

あれ?なんだか話がどんどん大きくなっていく・・。

ラウンジに衣装を見せに来て30分後、なぜか私は屋敷のメイドや執事たちがステージを行ったり来たりしている。

キャーキャーといった歓声がラウンジに響き、時々静止させる声も聞こえた。

結局終わったのは、髪型を3回変えたあたりだった。

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