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関係

屋敷の主人と仕える者の関係はその家によって違う。

会社の従業員と同じように雇用関係にある家もあれば、一つのファミリーとして絶対的な力関係の元にある家もある。ヴィアレットの本家はどちらかといえば後者に近い。家単位で仕えてくれる者も多く、2世や3世となる者も何人かいる。彼らは基本的には主人と近しい関係にあるが、それでも絶対的な服従関係にあるには違いない。その分多大な庇護を受けることはできるが・・。

で、分家となる私の家はどうかというと・・。


ガガガッ!!

タタタタタン!

タブレットに取り込んだシューティングゲームの銃声が辺りに響く。

「そっち行ったわよ」

「あいーオッケー」

「あ、やった!!勝った勝った!」

「んーおめでとー」

まぁ、間違いなくどこよりもフランクな関係にあると思う。


「ちょっと休憩ねー」

寝転がっていたソファにタブレットを置いて伸びをする。ドールの身体とはいえ、同じ体勢は疲れる。

「ゆなの身体ってどうなってんのマジで」

先にゲームから離脱した霧島がお茶のセットを持ってきてくれる。気の置けない関係にはあるが、彼も執事には違いないのだ。

「わかんない。多分人間と一緒よ」

温度に気を付けながらそろそろと口をつける。人間とほぼ変わらない身体とはいえ、この辺は非常に気を遣う。

「ふーん」

しかめた顔をしながら同じテーブルに同席すると、自分の分のお茶を入れ始める。ヴィアレットの家の者が見たら目を剥いて驚くだろう距離感である。

「それにしても霧島だけしかいないなんて珍しいわね。あなたはいつも屋敷にいないから余計にそう思うわ」

「あいつらにも伝えたけどな。今日は外での仕事なんだと。一応玄武はあとで来るかもって言ってた」

霧島はお茶菓子のスコーンをほおばりながら答えた。

じつはこうして遊ぶのは珍しい事ではない。ここ数ヶ月に週に一度か二度ほどこうして談話室に足を運んでは、執事やメイドたちと話をしたりゲームをしたりしている。

「なるほどねー」


しばらく、お茶をすする音とスコーンを食べる音以外沈黙が続いた。

ちらっと霧島を見ると、シャツの襟から除く包帯が目に留まった。

「ねぇ、また傷が増えたわね」

「ん?」

霧島はカップに口をつけながらこちらを見た。

「大丈夫なの?」

「んーまぁめっちゃ身体痛いよな」

霧島はへらへらと何でもないように答えた。


「あなたの仕事には何も言わないけど、ちゃんと休まないと死んでしまうわよ」

そう。人間は身体を壊せばそれだけ死に近づいていく。

ドールやアンドロイドのように壊れた部分を直せばいいという概念とはまた違う。人に想われることによってのみ存在している私のような存在と彼らは違う。

逆に言えば私にとってみれば、彼らとの別れそのものが一つの病傷なのだ。彼らに限らず、私が想い、私を想う人との別れは私に引き裂くような傷を与える。

だから私は彼らを全力で守ろうと思っているし、できる限り彼らの要望はかなえてやりたい。

それが私の主人としての務めでもある。


「だいじょぶ」

霧島は立ち上がると大きく伸びをした。

「俺は死なねーよ」

彼は私を見ると、いつものニヤッとした笑顔を見せる。不思議とその笑顔には決意にも似た何かさわやかなものを感じる。


ガチャッ!

ロビーの扉が開く音がした。

「遅れまして申し訳ございません」

振り向くと玄武がタブレットを抱えて入ってきた。


「あら・・間に合ったわね」

彼もまた私の命だ。

「さて!続きやるわよ!」

私は再びボフっとソファに寝転がってタブレットを握る。

「お嬢様・・またそんな恰好で・・」

「うーっし!やっか!」

霧島が玄武の小言を遮るように言った。

カップの中の紅茶はまだ飲みきっていなかった。

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