表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

9. ぶきや ぼうぐは そうびしないと いみがないぞ!

 通路を進み部屋を調べながら坑道のようなダンジョンを進んで行く。


 現在のレベルは俺が4で小宮山が2だ。

 できるだけ小宮山にトドメを譲ってはいるけれど、職業スキルの経験値ブーストで俺のレベルはどんどん上がっていく。


 探索中はたびたびゴブリンに遭遇したが、ライトによる目潰しを使えば脅威ではなかった。


 たまに出てくるゴブリンより戦闘力が高いコボルトも、目潰しをして2人で囲めば余裕で対処できる程度だ。

 ただ、コボルトは嗅覚や聴覚が人間よりも優れているおかげか、こちらが気づくよりも先に察知して奇襲してくることがまれにあるので油断は禁物である。


 だが今のところ対処は可能で、たとえモンスターが複数いたとしても同じだった。

 それだけフラッシュライトの効果は絶大だったのだ。


 持ち込んだ武器も思ったとおりに活躍してくれた。


 扱いやすさ重視のバットは頭を4回ほど殴らなければゴブリンを倒せなかったが、レベルが上がるにつれて2~3回で済むようになって便利さを増した。

 今では手軽に扱えるサブウェポンという立ち居地を確立している。


 そして、レベルが上がったことで自在に振り回せるようになったスレッジハンマーは、頭に当てればゴブリンを一撃で葬り去れる恐ろしい威力を発揮した。


 それらと比べてしまうと、小宮山の持ってきた武器はいまいちである。


 クロスボウは第1階層で出てくるモンスター相手では使いどころがない。

 目潰しをして動きを止めたモンスターになら当てることができるが、単発式で再装填に時間がかかる割には威力が低かった。

 ゴブリン相手でも1発当てただけでは決定打にならず、5~6発当ててやっと倒せる程度だ。

 正直、直接バットで殴った方が早いだろう。

 ただ、隙を作るための支援攻撃としては役立ちそうなので今後に期待したい。


 その一方、刀はどうしようもなかった。

 目潰ししたゴブリン相手に試し切りをしたとき、一太刀目から曲がってしまったのだ。

 少しゆがんだ程度だったのでそのまま使い続けていたが、だんだんと曲がりはひどくなり、ついに限界を迎える。


「ああっ!? 折れた!? くっそ、ナマクラかよ!?」

「ナマクラなのはお前の腕だから」


 おそらく刃を垂直に振り下ろせてないせいだろう。

 切れ味も本来のものを引き出せてなかったようで、ゴブリンでも3回は斬りつけないと倒せていなかった。

 やはりド素人が扱うには無理があったのだ。


「とりあえずこのバット貸すから使っとけ」

「うわー、お下がりかよテンション下がる。しかも結構ぼこぼこだし……」

「わがまま言うな。根本から折れてる刀よりはマシだろ」


 予備の武器になっていたバットがあるので、小宮山に近接武器がなにもないという事態は避けられた。


 ただ、それはただのその場しのぎでしかない。

 バットの耐久性はもう限界が近く、あと数匹モンスターを屠れば折れ曲がってしまいそうなのだ。


 なにか武器になりそうなものが拾えれば……


 そんなことを考えながら先へ進んで行くと、次の部屋の中でおあつらえ向きなアイテムが見つかった。


「ん? あれはもしかして剣か……?」

「マジで!? めっちゃナイスタイミングじゃん!」


 部屋の壁際に朽ちた樽が置かれていて、その中には鞘に納まった剣が無造作に立てかけられていた。


 ワナの確認を済ませてから近づくと、小宮山がその剣をうれしそうに手に取る。


「なあなあ、オレが使ってもいいよな!?」

「まあ、俺は今のところハンマーで十分だし、それは小宮山が使ったほうがいいか」

「よっしゃ!!」


 正直なことを言うと、俺も使ってみたい。

 やはり刀剣類にはどこか憧れを感じてしまう。

 もちろん、ダンジョン産アイテムの武器がどんなものか試したい気持ちもある。


 だが、現状では攻撃力が不足している小宮山に持たせるのが一番だろう。


 それに武器はまだ他にも拾える可能性があるのだ。


「高梨から託されたこのバットもいい武器だったさ……でも、鈍器とか正直ダセエだろ。時代は剣だよ剣。せっかくだからオレはこの赤の剣を選ぶぜ!」

「はいはい、ダサい武器使ってて悪かったな。ていうか託してねえよ貸しただけだ……って、おいコラ捨てんな、使わないなら返せバカ」


 鞘から引き抜いた赤銅色の剣を見てはしゃぐ小宮山に冷ややかな視線を送りつつ、アプリでアイテムの詳細を確認する。




 【どうのつるぎ】(未鑑定)

 カテゴリー:武器

 銅で作られた普通のブロードソード。


 合計攻撃力:未鑑定

 基礎攻撃力:4

 強化値:未鑑定

 メイン武器スキル:なし

 サブスキルスロット:4




 武器は未鑑定でもかなりの情報がわかるらしい。

 これは特殊な効果のない普通の剣のようだ。

 基礎攻撃力の数値は高いのか低いのかまだ判断できないが、銅製なのであまり強い武器ではなさそうに思える。


「小宮山、とりあえず装備できるかためしてみろよ」

「おう、やってみる。てか、どんどんゲームっぽくなってくな」


 ダンジョンで拾える武器アイテムはただ振り回すだけではその真価を発揮しない。

 装備すると意識しながら武器を持つことで、本来の性能を引き出せるようになるらしい。


 武器と防具とアクセサリーはそれぞれひとつずつしか装備できないので、二刀流や重ね着をしてもあまり意味はないそうだ。


「おっ、できたみたいだぜ」


 小宮山のスマホをのぞいてみると、ステータス画面の装備武器欄にどうのつるぎが表示されていた。


 だがその直後、いきなり剣から黒いモヤが噴き出した。


「え? は!? ちょ!? な、なんなんだよこれ!?」

「絶対マズいやつだろ!! なにやってんだ今すぐ剣を捨てろ!!」

「うわっ、うわぁあああ!! け、剣が、剣が手から離れねえ!?」


 小宮山は大騒ぎで手を振り回すが、剣が離れることはない。


「とりあえず落ち着け!! もう黒いモヤは出てない。なにが起きたのかはアプリのログを確認してみればわかるはずだ」

「あ、あれ? そ、そういえばいつの間に……」


 剣から噴き出した黒いモヤは慌てている間に消えていた。

 それに気づいた小宮山はある程度落ち着きを取り戻し、アプリの画面を確認する。


「どうのつるぎは呪われていた! ……って書いてあるな」

「ああ、うん、そんな感じだろうなって気はしてた」


 武器や防具は一度でも装備してみれば未鑑定状態が解除されるようなので、小宮山に武器の詳細を確認させる。




 【どうのつるぎ-1(呪い)】

 カテゴリー:武器

 銅で作られた普通のブロードソード。

 呪われているため装備からはずすことができず、どれだけモンスターを倒しても強化値は上昇しない。


 合計攻撃力:3

 基礎攻撃力:4

 強化値:-1

 メイン武器スキル:なし

 サブスキルスロット数:4




 わかりやすく呪われていた。

 呪われたアイテムを装備したらはずせなくなるのはゲームでは定番だ。

 この先、もっといい武器が手に入っても交換できないのは地味に嫌なデメリットである。


 ただ、呪われていない武器アイテムはモンスターを倒していけば強化されていく、という知らなかった情報が得られたので悪いことばかりではなかった。


「今すぐなにか悪いことが起こるわけじゃないみたいだし、まあ大丈夫なんじゃないか?」

「たしかに、武器としてはフツーに使えそうじゃん。おっと、アイテムボックスにしまえば両手も自由になるみたいだぜ。装備状態は継続中みたいだけど」


 どうやら今のところなにも問題はないようだ。


「ああそうだ、ためし斬りしてみないか? ちょっとそこの壁を思いっきり斬ってみろよ。ネットの情報じゃ全然大丈夫らしいぞ」

「おお、マジで!? さすがはダンジョン産のアイテムだな!」


 小宮山はすぐさま剣を大上段に振りかぶり、近場の岩壁に全力で振り下ろした。


 ――ガイィィィィィィィィン!!


「あががががが!? う、腕が!? 腕がしびれるぅぅぅぅぅ!?」

「ほらな、大丈夫だっただろ? 剣は刃こぼれひとつしてないぞ」

「オレの腕がぜんぜん大丈夫じゃないんですけど!?」

「そんな些細なこと気にするなよ」

「鬼か!?」


 岩壁にはじき返されて反動にもだえる小宮山は放置して、どうのつるぎが無傷なことを確認する。


 銅でできた剣が頑丈な岩壁に叩きつけられて無傷で済むわけがない。

 だが、これはただの剣ではなくダンジョン産のアイテムだ。

 装備アイテムは装備している状態なら絶対に壊れないらしい。

 武器の損耗を気にしなくていいのはとてもありがたい。


 その後は文句を言ってくる小宮山を適当になだめてから、ダンジョンの先に進んで本当のためし斬りをすることにした。


 次の部屋に入ってみると、いきなりゴブリンが2匹が襲いかかってきたので、すぐに通路に引き返して誘い込む。

 いつも通りゴブリンたちが通路に足を踏み入れたところで目潰しをして、速攻で1匹に殴りかかる。

 スレッジハンマーを全力で振り下ろすとゴブリンの頭は陥没し、すぐさま黒い煙となって消えていく。


 もう1匹のほうを見ると、ちょうど小宮山が斬りかかっているところだった。

 どうのつるぎの一閃は袈裟斬りに放たれ、ゴブリンの体をざっくりと両断した。


「おっし、どんなもんだ!!」

「おお、一撃か。刀じゃダメダメだったけど、剣だとけっこう上手く扱えるんだな」

「いや、それがよう、装備すると正しい使い方がなんとなくだけどわかるみたいだぜ。かなりぼんやりとしたイメージが湧く程度だけどな」

「なるほど、そういうことね」


 武器アイテムは使い勝手もかなりいいようだ。

 その辺はステータスの技術とかも関係してるのかもしれない。


 とにかく、小宮山も一撃でゴブリンを仕留められるようになったのはありがたい。

 そのおかげでモンスターを手早く倒せるようになったので、俺たちはどんどん先に進んでマップを埋めていく。


 その途中、下へと続く階段を見つけたが、とりあえずは第1階層をすべて探索してから下りることにして、経験値とアイテムを回収していった。


 結果的に俺のレベルは5に上がり、小宮山は3になった。


 拾えたアイテムはどうのつるぎ以外に、草が2本と、魔導書が1冊。

 それと、朽ちた木の戸棚に入っていた、謎の液体入りのビンがひとつ。


 いずれも未鑑定で、どんな効果があるのかまったく分からない。


 今はとりあえず全部アイテムボックスの中に入れてある。

 使うとデメリットが凄まじいアイテムもあるそうなので、危なっかしくてためす気にはなれなかったからだ。


 そして、一通りマップが完成すると、あとは下へと続く階段だけだ。

 俺たちは準備を済ませると、階段を一段一段慎重に下りていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ