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てんしのひみつ

 よくみるとそれは、“ないしょちゃん”とにた色合いの、ふわふわとした毛のチョッキです。

 でも、背中のところからみおぼえのある、白いつばさが生えています。


「まさか、これ……!」

「うん。

 これ……おそらがとべるチョッキ。

 ボクもパペルのあらしでケガしてね、ぜんぜん歩けなくなってたの。

 それをみたエレンさんが、これをつくってくれた。

 これをきて、ぴょん、て地面をければ、はねが羽ばたいてかるく歩けるし、すこしだったら飛ぶこともできる。

 そのおかげでボクは、なんとか歩けるようになったから……

 リーシャに、これをあげたいの」

「えっ、……だって……」


 リーシャはことばをうしないます。

 歩けるといったって、こんなにもゆっくり。それも、支えてもらって、足を引きずりながら、やっとです。

 そんな子に、だいじなチョッキをゆずらせるなんて、とてもできるわけありません!

 ふるふる、とくびを左右にふりました。

 でも、“ないしょちゃん”はひきさがりません。


「ううん!

 ボクが、これをつかって……

『にゃんにゃんブートキャンプ』なんて、やってたせいでしょ?

 だからリーシャは、ひとりでモウクンレンして、おおけがしちゃった。

 ……ボクのセキニンだ。

 だからボクはこれを、リーシャにあげなきゃいけないの!」

「そんな、だめだよ!

 これは、ぼくがわるいんだ。

 かってにやきもちをやいて、かってによなかに走り回って、足をすべらせたぼくのせいだよ。

 きみはちっとも、わるくなんかない」


 リーシャのなかから、もやもやしたものがすっかり消えてなくなりました。

 リーシャは“ないしょちゃん”にやさしくすりよります。


「ねえ、もしも、ぼくにわるいっておもってるなら……

 ぼくも、おともだちにして。

 ぼくもきみの、おともだちになりたいんだ」

「……それは……」


“ないしょちゃん”はくちごもります。

 もともと、“ないしょちゃん”は歩けるようになれば、パペルに帰るよていです。

 そんな短いあいだにおともだちになっても、別れがつらくなるだけ。

 だから、だれともおともだちにならなかったのです。


 いつも、つんつんとした態度をとり……

 それでも近くにきた子とは“ししょー”と弟子、ということにして……

 この町に、いつでもさよならがいえるよう、自分の心をかくしていたのです。


「いいじゃないか。ご主人さまの許可はもらったよ。

 アンジュはかわいいおむこさんができてしまったから、パペルにかえらず、うちに残りたいみたいです、ていったら、笑ってOKしてくれたよ」


 と。

 そこにあらわれたのは、エレンさんでした。

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