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アナザーワールド 〜My growth start beating again in the world of second life〜  作者: Blackliszt
第2部 ~スクールと仲間~

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84 報告

「ただいま」


 エリシアとの談合を済ませた僕は、玄関の扉を開く。


「「おかえりリアム」」


 僕の帰宅に声を揃えておかえりと迎えてくれる父さんと母さん。


「父さん母さん、朝言った通り話があるんだけど・・・いいかな?」


 そして早々、僕は唐突に話がしたいと二人に切り出す。


「大事な話もまた一つできたから・・・夕食の時にでも」


「いいわよ・・・ね、ウィル?」


「ああ、わかった」


 すると二人とも、僕の話を聞いてくれるようで、提案通り、夕食時に父さんたちが僕の話を聞いてくれることとなった。


 野菜とラビット肉の入ったスープにパン、それからデザートの果物だ。この異世界ではこれらの食事が平民の中では一般的、一応スープには塩も入っており味はあるのだが、それでもそれ以外の調味料は高価、塩の流通は安定はしているもののここノーフォークは内陸領であるため運搬の分諸々含め少し割高となっているのだ。なんでも国内の海に面する領地にもオブジェクトダンジョンがあり、そこの交換所のラインナップに塩があるらしい。それにそもそも魔法のあるこの世界では海水から塩を作り出すことは比較的容易、三十年ほど前に国の魔導師が海水から塩だけを分離させる式を完成させそれを魔法陣として公開、これを使って作られた塩には少し割り増しで税金がかけられるが、それでも随分と安価になったのだとか。


「おいし・・・」


 僕は一口、スープを口に含んでちぎったパンを口に入れる。そして──


「それでさ・・・。僕のステータスにそんなに魅力があるのかな・・・。それとも他の理由が・・・」


 今日の出来事、公爵様の城まで行ったことやミリアの家庭教師をすることになったことなんかを話し終えた後に、帰り道に気になったことを父さんに話す。


「・・・ま、まあそうだろうな。お前のステータスは親の俺が言うのもなんだが異常 ──。貴族様には俺たち平民・・にはわからない難しいことがたくさんあるだろうし、それじゃなくても強い力があればダンジョンでは鬼に金棒だ」


 どこか父さんが挙動不審の様な、普通の様な、そんな口調で僕のステータスについて語る。


『やっぱりそうなのか・・・』


 僕はその父さん言葉に、自分の力を吟味するべく考え込む。すると ──


「・・・リアム。あなたのその力は素晴らしいものよ。 ね・・・ウィル?」


 隣で話を聞いていた母さんが、父さんの半袖の袖を掴みながら、フォローする。


「そ、そうだそうだな!・・・そうだぞ!リアム!」


 どこか暑さとは違った汗を浮かべながら、父さんも母さんの言葉に同調する。・・・これは痛ましくて僕が目を離した束の間ちょろっと見えた光景であったが、袖と露出した腕との境界線、父さんの腕の皮膚が少し伸びていた様ないなかった様な・・・。


『・・・考えすぎか』


 とりあえず、二人に相談した僕は、後に控えている相談のためにこの疑問を切り上げることにする・・・そして──


「父さん・・・僕さ、武術を習いたいんだけど」


 お皿のスープが半分ぐらいになった頃、昨夜から考えていた相談事を父さんにする。・・・ただし、エリシアとのことはまだ話していない。


「武術?・・・ってもリアム、お前スクールにも武術の授業があるだろ?」


 父さんも、パンを片手に持ちちぎりながら、僕の相談を聞いてくれる。


「うん、でもできれば実戦で対応力を身につけつつそこで成長したいんだ・・・それと攻守バランスの取れてる剣術とかいいかなって思うんだけど、スクールでも剣術の基礎は習ってるから」


 オールラウンダーに近いアタッカー寄りのバトルメイジ。これが僕の目指す一つのロールだ。


 因みになぜアタッカー寄りのとつくかと言えば、先日の件で僕は自分の性格をまた一つ知った。自分の守りたいものは自分の手で守りたい。他の誰かに丸投げするようなことをすれば僕はそこに歯がゆさを覚え、いても立ってもいられなくなると。その時がくれば、力不足の自分を悔いる感情があるのだと。

 更に僕はスクールのもう一つの実戦的な演習訓練、武術の授業で剣術を選択している。しかしこの剣術、前世でアクティブ・パッシブで得られる経験値を100とすると、そのうちアクティブ1、パッシブ99となるぐらいパッシブでできることの経験値しか積んでいなかった僕には、かなり難しい訓練だった。

 前世で経験と固定観念がある程度固まったころに死んでしまった僕はかなり運動音痴、こちらの世界に来てからは通常よりその割合を増やすことと体が違ったことが功を奏したのか、先入観を薄めてなんとか苦労して同級生の中では中のくらいまでには剣術を身につけた。僕は特別措置で二年ほど体格差やらにブランクがあるので、スクールの同年代たちと比べればトップクラスだ。僕はその剣術をより一層昇華させるためにも、父さんに実戦的な剣術を教えて欲しいと頼み込む。


「なるほど、悪くないな・・・」


 僕の考えを聴いた父さんがそう呟く。


「あら、まさかウィル・・・」


 するとその呟きに母さんが何かに気づいた様に反応した。


「いや、あいつはぴったり適任だが攻撃的すぎる。今回のリアムの願いには守りも入ってるしな」


 どうやら父さんは既に僕に剣術を習わせてくれるつもりであるらしい。そして ──


「それにあいつをリアムに会わせてみろ・・・ダンジョンの中だったら絶対殺しに来るぞ」


 なんて物騒なことを母さんにヒソヒソ話しているのが聞こえてしまった。ヒソヒソ話すならこっちに聞こえないようにもう少し気をつけてほしいものだが・・・。


「コホン・・んッ・・・リアム、公爵様から頼まれたミリア様の家庭教師というのは週に2、3回ほどだろ? 更にお前は課外と魔法練習だけとはいえスクールもある。・・・つまりお前はそこに、更に別の訓練を入れようとしているわけだが、大丈夫か?」


 仕切り直すようにワンテンポ入れた後、父さんは僕の考えを確かめるように問う。


「そこはちゃんと考えてる。とりあえずこれは今僕があくまで考えてることで、直ぐに訓練を始めようってわけじゃなくて・・・」


 これはあくまでも相談。前のスクール入学の時の様に、突然の我儘になったりしないようにする。しかし ──


「あっ! あとこれは父さんと母さんにこれから相談した後に決まることだけど、ボク婚約するから報告しておくね・・・」


 危ない危ない。結局これは突然の報告となるが、危うく一番大事なことを伝えることを忘れるところだった。まあ軽い感じの報告になったことはご愛嬌というか・・・。


「おう、しろしろ・・・リアムももう結婚か・・・俺も年をとるわけ・・・・・・ん?」


 突然変わった話題に処理が追いついていない父さんがデザートのフルーツをかじりながら、空返事を返す。そして──


──・・・ピキッ。


 っと場を凍りつかせてしまえるほどの圧力が、突如母さんの方から流れてくる。


「ん?・・・リ、リアム?・・・お前今、なんて言った?」


 僕の言ったことが処理しきれていないせいか、それとも横で溢れ出る母さんの圧力に押されてか、父さんの声がどこか震えている。


「い、いや。じ・・実は」


 それからは、事の発端を作った僕もいつもと違う母さんの様子に気圧されながらも詳細について説明する。


「・・・マジか」


 僕の話を聞いた父さんが呟く。因みに母さんは今だに沈黙したままだ。転生してこのかた・・・母さんのこんな雰囲気は初めて見た。


「と、とりあえずリアム。お前も今日は色々あって疲れただろう・・・。この話は一度じっくり考えた方が良いから、今日はもう寝ろ・・・」


 そしてそんな母さんを尻目に、僕に話を預かることとともに助け舟を出してくれる父さん。


「わ、わかった。おやすみなさい・・・」


 おどけながらも阿吽の呼吸。僕は父さんの意図をすぐ様汲み取り、それに同意する。こう息ぴったりな連携が見られると、自分たちが親子であるという実感が湧く。


『グットラック・・・マイダディ。後は任せた』


 様々な変化が起きた一日・・・。僕のそんな忙しない一日はおやすみの挨拶とともに、世界一静かな戦場を後にすることで幕を引いたのであった。

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