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アナザーワールド 〜My growth start beating again in the world of second life〜  作者: Blackliszt
第2部 ~スクールと仲間~

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54 見えざる尋問

「こりゃあとんでもねぇな・・・」


「全くもってこれからどういう方針を取っていけば良いか・・・」


 緊急避難をして1時間ほどが経った現在、僕たちは再び変わり果てたスクールの魔法演習場へと戻ってきていた。


「アランさんジェグドさん!先輩達を連れてきましたよ!」


 あれから魔力が少し回復し、僕やジェグド、アランを演習場まで送ったフランは、次に別に避難していたケイトとビッドを迎えに行っていた。


「生徒達はとりあえず今日はもう家に返しておきました・・・私は目に見える残り火だけでも消火してきます」


「では私も及ばずながら、土魔法で鎮火をしてきましょう」


 そして合流したケイトとビッドは直ぐに自分たちのできる事を提案し、また各々できる事をするために行動を始める。

 既に森は半壊、闇力子によって収束・圧縮した熱は当然のごとく森の木々に燃え移っていたのだが、どうやら、熱の拡散と同時に発生した爆風によってその多くが鳴りを潜めたようで、それが唯一の不幸中の幸いだった。


「あの・・・僕にできることは・・・」


 そんな彼らにこの事態の原因を作った僕は申し訳なく思いながら、何かできることはないかと訊ねる。


「リアム君が気にする事じゃない。そもそも私たちが無理を言って君に魔法を使ってもらったんだ。落ち度があるとすれば結果を急ぎすぎて様々な確認を怠った私たちにある」


 しかしそれを聞いたアランは僕の非を責めることもなく、むしろ自分たちが悪いのだとまで言ってくれた。


「・・・はい」


 正直、アランは口にしなかったが今僕にできることはないし、もしできたとして再び魔法を使うものならきっとまた良くないことが起きるとも限らない。

 後になって思えばこの分かりきった質問は、僕が単に少しでも自分を肯定するために漏らしたものだった。それだけ半分無くなってしまった森を見たときの衝撃は強かったし、地形が変わってしまったと言っても過言ではなかったのだ。



──それから更に十数分後。


「とりあえず応急処置は済ませました。あとは明日にでもなればダンジョンの力で森の草木も元通りになっているでしょう」


「モンスターは見る影もありませんでしたが森にいた精霊達はどうやら無事だったようです。それに何やらいつもより活発なぐらいでしたよ」


 失くなってしまった森の半分と現在も残る森との境界に残る火の後始末を終えたビッドとケイトが戻ってきて活動報告を済ませる。


「すまないな・・・私の属性だとできることがなくてな」


 そんな仕事を終えた二人を労うように、しかし自身が参加できなかった事を申し訳なく告げるアラン。


「気にすることはないさアラン君。適材適所、そのために魔法演習もこうしてできるだけ多くの教師で臨むようにしているのだから」


「ありがとうございます。ビッドさん」


 頭を下げるアランに、気にする様子のないビッドがフォローを入れる。


「僕もすいませんでした。まさかあんなことになるなんて・・・」


「いいのですよリアムさん。あなたのおかげで私の正しさは証明されましたし、何よりその才能は是非生かして育むべきものです・・・・・・ですから俯かずに、堂々と胸を張っていれば良いのです」


 そして僕もアランに続いて後始末をしてくれた二人に謝ると、ビッドはニッコリとした笑顔で、ケイトも今回の事をあまり気にしていないように堂々と僕の謝罪に答えてくれた。


「おっすお疲れ〜!とりあえずギルドの方に軽く報告だけはしておいたぞ」


「ジェグドさんが口下手過ぎてうっかりリアム君の事を口にしてしまうのではないかとハラハラしましたよ・・・」


「ハッハッハ、悪いな!苦労をかけて!」


 それから数秒も経たずに、今度は先ほどまでダンジョン内のギルド出張所に軽い事情説明に行っていたジェグドとフランが帰ってきた。


「先方も驚いてたぜ・・・セーフエリアの近くで大きな閃光と爆発音が鳴り響いてたからな〜。とりあえずいつものようにケイトが魔法陣で暴走したってことにしといたから」


「ああ、それでいい。そもそもの一番の原因はこいつだからな」


「まあ・・・否定はしませんが・・・」


 それからジェグドはみんなの前でギルドへの事情説明の報告をし、それぞれの反応をみせるアランとケイト。


「さて・・・とりあえず今回の応急処置はあらかた終わったな・・・」


「おう!」「そうね」「「そうですね」」


 ジェグドから報告を受けて今回の件のまとめに入り始めたアランに答える教師陣。


「ではとりあえず皆疲れているだろうからここで解散・・・といきたいのだが後どうしても一つだけ、私は腑に落ちていないことがある・・・」


 そして解散を匂わせる発言をしたものの、そこに自ら待ったをかけるアラン。


「魔法演習に特別に参加させるため、私たちはリアム君の魔力量や魔法センスがずば抜けいていることをざっくりではあるが担任であるケイトから聞いていた・・・」


「確かに私たちも聞きましたが、それがどうかしたんですか?」


 自らが提起する問題の導入を述べるアランに、その確認を返すフラン。


「私がそこで不可解なのが、どうして今回リアム君が《複合魔法》相当の火魔法と闇魔法を同時行使するに至ったかだ・・・」


「・・・確かに!」「そうだな・・・」「ふむ・・・」


 そうしてアランが自身の疑問を述べた瞬間、フラン、ジェグド、ビッドも各々がそのことに気づいたように反応を見せ始め、首をひねり出した。


「通常、スキル《複合魔法》は複属性持ちの魔導師が一定の同時行使の鍛錬により習得する、又は生まれつきスキルを所有しているレアケースのどちらかだ・・・・・・後者の可能性はあり得るが生まれつきの《複合魔法》持ちには最大限の注意を払って魔法を教えるのが常識であり、これをケイトが報告し忘れたとも考えにくい・・・かと言って魔法を使ったことがないとするリアム君の申告からは前者はまずあり得ない」


 現在も首をひねって考察する講師陣の考えを述べるかの如く、それらをまとめ始めるアラン。


『あれ?・・・それって・・・』


 しかし僕はここで、アランが述べた考察のある部分に引っかかりを覚える。


「何故彼が火魔法と闇魔法の同時行使に至ったのか私はそれが気になってしょうがない・・・。リアム君、君は何か心当たりはないか?今回のこともあるし、できれば隠し事なく教えて欲しい」


『隠し事も何も僕、確かにスキル欄の隠蔽を解いたステータスボードを見せたよな・・・』


 そんなアランの問いかけに僕は少しの間黙り込み、先ほどからそういえば反応のないケイトの方に視線をやる。


『うわ〜・・・すっごい目が泳いでる・・・』


 すると僕の視線の先には明からにそわそわし、落ち着きのないケイトがそこにいた。


「ん?・・・どうしたケイト?」


 すると今度はつい動かした僕の視線のせいか、そんなケイトに気づいてしまい声をかけるジェグド。

 そしてそんなジェグドの発言もあってか、他の教師陣も一斉にケイトの方に目をやった。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


──訪れる束の間の静寂。


「・・・ケイト・・・まさか・・・・・・」


 そんな中、やはり場を切り開いたのはこの男・・・アランだった。


「いや〜・・・そういえば前に見せてもらったリアムさんのステータスボードに《複合魔法》のスキルがあったり・・・なかったり・・・」


 アランの動揺に、突然困った笑顔で後頭部に片手をやりながら、冗談のように申し訳を述べるケイト。その声はどこか、文末に近づくにつれ消え入り、覇気がなくなっていった。


「・・・!ということは・・・!」


 全てを理解し上がるアランの驚愕の声・・・しかし次の瞬間 ──!


「・・・《水囲い(イシェケ)の姿鏡》!」


 指それぞれに違う指輪の嵌った右手を胸の前に掲げ、突如として知らない魔法名を唱えたケイト。


「スゥー・・・」


 するとなんと、ケイトが魔法名を唱え終わるや否や下から上にフェードアウトしていくように、その姿を消していく。


「待てケイト!逃げることは許さんぞ!」


 そしてみるみるうちに消えゆくケイトに何かを悟ったアランが、やがて数秒で姿を消してしまったケイトに声を荒らげる。


「でも逃げなくても怒るでしょ!」


「当然だ!魔法演習を教えるにあたって大事な基本を厳かにしただけでなく、我々のみならず生徒であるリアム君をも危険に晒したのだからな!」


「だからこそ!・・・私は逃げます!」


 そんなアランの怒りの混じった呼びかけに、立体反響のようにあらゆる方向から聞こえてくる焦りを含んだケイトの声。しかし──


「無駄ですよ・・・先輩、私がいることを忘れていませんか?」


 劇的に変化する場面の中、妙な冷静さを見せるフラン。


「先輩は覚えていませんか?学生時代、その魔法陣が完成した時にいち早く私にその陣を見せびらかしに来たことを・・・」


『何をやっているんだ・・・この人は・・・』


 本日何度目かの暴露によるケイトの残念な話。僕はそんなケイトの学生時代にちょっと羨ましさを感じつつも、フランに対する残念な行動に目を瞑る。


「その時先輩は自慢げに私に話してくれましたよね?・・・その魔法陣の凄さと欠点についても!」


「・・・!まさかフラン!裏切るのですか!?」


 そしてフランの策中に見事に嵌るケイト。


「裏切るも何も、今回は先輩が悪いと思います!ですから観念してお縄についてください!」


「嫌です!あなたもアランのお仕置きが私に容赦のないことは知っているでしょう!」


 フランの最後の忠言も虚しく、ケイトはそれを強く拒否する。


「アランさん・・・実を言うとこの魔法、魔法自体は高度なものなんですが何せ先輩の大好きな魔法陣を媒体としたもの・・・ですから、実際は研究に没頭する先輩のように、どこか抜けているのです」


「ほう・・・」


「止めなさいフラン!」


 しかしケイトの拒否も虚しく、次々と判明するケイトとフランだけの秘匿。


「先輩のオリジナル魔法《水囲いの姿鏡》は、己の周りに細かい目に見えない水の壁を作り出して光魔法を併用することで周りの景色の像を投影する魔法・・・」


 淡々と、ケイトの魔法の秘密を語っていくフラン。


「この魔法の弱点は2つ・・・。一つは頭の先から足の先までをカバーする水の壁に周りの景色を投影しているため、動くと地面に円を連続して描いたような水の跡が残るのです・・・・・・そして・・・」


 既に1つ、如何しようも無い弱点がバレてしまった。どうやらケイトが先ほど消えた周辺にそのような水の跡はなかった。


「そもそもこの魔法は光魔法によるスクリーンへの景色の投影が難しいために、発動した場所から動くと空間の歪みのような変な揺らぎが生じます・・・」


「ということは・・・」


「ええ・・・先輩は先ほど居た位置から動いていません!音魔法で声を立体的に反響させているのもそれを悟らせないためです!」


 そして遂に、フランによってケイトの手品のような魔法のタネは暴露され、その居場所も直ぐに特定されてしまった。


『せめて黙っていれば良かったのに・・・』


 僕はフランによってもたらされたケイトの現状に、思わず後の祭りな分析をする。


「なるほどな・・・ありがとうフラン」


「いいえアランさん。お役に立てて光栄です」


 そんな礼を言うアランに答えるフラン。そして結果は言うまでもなく、それから数秒も経たぬうちに呆気なくアランに捕まったケイトであった。


「フラン!後で覚えておいてくださいね!」


「止めないかこのバカ!」


「イタイ!・・・イタイですよアラン!!」


『なんだろう・・・凄いのにどこか残念だ・・・・・・』


 間抜けな逃亡劇も最後、アランに首根っこを掴まれたケイトは呆気なさと切なさ、そして僅かな抗弁によってその幕を閉じた。

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