46 いざ・・・ダンジョンへ! Ⅳ
「凄い……これが転送陣か……」
僕は今、オブジェクトダンジョ ン ”テール” 1階にある入場受付を通り、地下中央広場にある転送陣の間に来ていた。
「この転送の間にはダンジョン内に繋がる幾つかの転送陣があり、ダンジョンに入る方々は皆さんその陣から潜入します」
そして隣では、僕のダンジョンオペレーターとなったシーナが、いくつか中央にある転送陣を指して説明する。
「今回は初回なので私も同行していますが、先ほども申し上げた通り、普段は他の業務もあるためこれから先は基本、私がここまで同行することはありません」
シーナは「特にこれといって難しいこともありませんので大丈夫ですよ」とニッコリと微笑みながら説明を続ける。
「またDpt (ダンジョンポイント)の交換所はダンジョンの中にそれ専用の施設が、退場の時は退場ゲートの方でもう一人の担当が就くこととなるので、あらかじめご理解ください」
僕たちは転送陣を使用する順番を待ちながら、これからのことについて再確認する。
「わかりました。中には先に姉さんや、スクールの先生たちが入っているはずなので、そこらへんのことは皆に改めて聞いてみることにします」
「それはいいですね。リアムさんはその年でしっかり・・・し過ぎているぐらいですが、見知った方がいらっしゃるならそれに越したことはありませんし、私たちの方でもサポートはさせていただきますが、先ほど申し上げた諸注意やそれ以外でわからないことは、その方々達に訪ねられることをオススメします」
「はい、ありがとうございます!」
「では・・・」
そうして会話をしているうちに、あっという間に僕の順番が回ってきた。
「いよいよですね!」
「なんか改めて緊張してきました」
異世界に来て初めてのダンジョン、そして ”転送”という未知のメカニズムと現象を引き起こす魔法に、僕は緊張を隠せなかった。
「大丈夫ですよ・・・一度体験してしまえば慣れてしまうものですし、何よりも経験が第一・・・ですので、後になってみれば呆気ないものです」
前世でよくこの手の転送メカニズムとして考えられていたのは、物質の分解と再構築による転送や、はたまた少し違うが、紙を折り曲げて説明する有名なワープ論などである。
『もし転送間における肉体の分解と再構築なんかが行われると僕は僕であるのだろうか・・・いかんいかん、そういうことは考えないほうがいいな』
時として、知識はなかったほうが気が楽・・・ということは多々あるものである。
「案外子供の方がパッと行けるものです!・・・陣を起動してからは一瞬ですからリラックス、ですよ!」
「リラックス・・・『そこまで思考が単調なわけじゃないんだよな、これが・・・・・・でも、シーナの言っていることは一理あるんだよなー・・・・・』」
しかし、知らないことがあるよりも、より多くを知ってその正体をつかめているほうが、安心と覚悟はできる・・・。
「スー・・・ハー・・・」
僕はシーナの言葉とともに、複雑な思考や感情を一気に飲み込み深呼吸をしてそれらを排出、一旦短絡的な思考へと切り替えていく。
「その調子です! それでは・・・」
目を瞑りながら陣の上で深呼吸する僕に声を掛けてくれるシーナ・・・そして ──
「それでは、これからも良き隣人として、ギルド職員一同を代表し、リアムさんのご活躍をお祈りしています・・・・・・いってらっしゃい!」
『なんか前世のアトラクションみた・・・』
そんな中、シーナの挨拶に前世のよくあるテーマパークアトラクションお決まりのテンプレートを重ねた僕であったが、その途中、それを最後まで想像する間も無く、僕の視線は、一瞬で切り替わっていた。




