34 ケイトの尋聞
ケイトに連れられ、僕は再びケイトの研究室へと訪れる。
「ガタッ・・・」
研究室に着いた途端、倒れこむように椅子に掛けるケイト。
「お見苦しいところを・・・すみません・・・どうやら魔力が底を尽きかけているようです・・・・・・ゴクッ・・・」
早々に椅子に腰掛け、楽にすることを断った後、ケイトは研究室にあった何かの丸薬を口に含む。
「・・・それで、あの魔力は一体なんですか?」
そしてケイトは単刀直入に僕に質問をする。どうやら前置きをする元気もないらしい。
「・・・・・・」
だが、僕はその質問に直ぐに答えることができない。
「私の全魔力を使いかけても沈静化することができなかった魔力量・・・・・・それに、あなたはまだあれだけの魔力を放出してもお元気そうですし・・・」
痛いところを的確についてくるケイトに、僕は頭の中をフル回転させてその言い訳を考える。
『・・・・・・』
だが、何も言い訳が思いつかなかい・・・そして ──
「その・・・言えません・・・」
なんとか絞り出した言葉がこれだった。
「?・・・言えないとはどういうことですか?・・・私は別にリアムさんを問いただしてはいませんよ?」
すると、ケイトはその僕の発言が何のことだかわからなさそうに、とぼけた顔でそのようなことを言う。
『ヤバイ・・・墓穴掘った』
僕はどうやら焦っていたらしい。ケイトの意味深な発言に早とちりしてしまった僕は、そうして墓穴を掘ったことに更に焦る。
「ということはやはり、リアムさん・・・あなた、何か隠していますね」
そして、僕のその焦りようがケイトの中のわずかな疑問を肯定してしまったようである。
『しまった!・・・謀られた!』
目を光らせてそう問いただしてくるケイトに、僕は彼女にそうなるよう誘導されたことを悟った。
「さてリアムさん・・・あなた一体何を隠しているのかしら・・・」
それから僕は、ケイトに根掘り葉掘り隠していることとなった。
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「その・・・これからお見せする内容は秘密で・・・」
僕は恐る恐るそうケイトに問う。
「はい・・・これでも私は一教師。生徒の秘密事は決して口外しないとお約束しましょう」
どうしても逃がさないという雰囲気をメラメラと出すケイトに、僕は言い訳することを諦め、念のための約束は取り付ける・・・・・・が、これは賭けである。ケイトが信用できるかどうか見極めなければならない。・・・まあ結局、このステータスを見せるのであればケイトを信じなければならないのだが。
「では・・・《ステータス》」
そうして観念した僕は《ステータス》を唱え、ケイトに見えるようにステータスボードを出現させる。
「《隠蔽解除》」
それから僕はステータスボードの隠蔽を解く旨を言葉で唱える。
「・・・!・・・これは・・・・・・あなたがこれを隠そうとしていた理由がわかりました」
ケイトはそのステータスボードにジッと真剣な視線を注ぐと、一度ステータスボードから顔を離してそんなことを言う。
『・・・よかった、一応納得してくれたようだ』
そしてそのケイトの発言に、僕は人心地をついた。どうやら一部《隠蔽》を解除したステータスボードにケイトは納得してくれたらしい。
↓・・・・・・
Exスキル《隠蔽》はかなり優秀なスキルだった。そのスキルはあらゆるものを隠し書き換え、使用者には見分けがつくように表示をしてくれる。更に、効果対象に至っては自動的に使用者の意図を汲み取り、その効果を制御・反映させてくれるのだ。
・・・・・・↓
── 実は、ケイトにステータスを見せる際、僕は書き換えていた魔力と魔法防御、隠していた《隠蔽》のスキルのみを解除するように意識して後の幸運値、《精霊魔法》、ユニーク、オリジナルスキルと称号の隠蔽解除をしないように、ケイトの前で《隠蔽解除》を唱えた。
「まさか《魔法陣作成》に全属性魔法を加え、更にこのような途方もない魔力を保有しているとは」
『一番最初に《魔法陣作成》を持ってくるあたり、この人らしいと言うか・・・』
ケイトが驚きながらも、その例の最初に《魔法陣作成》を挙げるところ、彼女の性格をだんだんと掴んできた僕は妙に納得をしてしまう。
「魔法防御は魔力値の1/10に比例するのでこの数値には納得ですが・・・」
『へぇ〜そうなんだ・・・それは初めて知った』
どうやらステータスの中にも相関関係があるらしい。このことを今知れたのは、まさに怪我の功名である。だが ──
「それにしても、魔力値が20万を超えているなんて・・・」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
『・・・・・・ん?・・・今この人なんてった?・・・お願い、もう一度言ってくれる?』
僕はその聞きなれない数値に一瞬フリーズし、思わず心の中で聞き返す。
「通常の一般成人でも多くて5千、貴族や宮廷魔導師でも1万もあれば十分なはず・・・それに加え更にユニークスキル持ちですか・・・・・・これは異常ですわね」
しかしその心の声も虚しく、ケイトは僕に更なる新事実を告げる。
『・・・・・・』
確かにユニークスキル名欄も消すように念じながら《隠蔽解除》を唱えたはずの僕は、ユニークスキルが「ある」と言うケイトの言葉に、内心までも絶句した。
『そ・・・そんなはずは___!』
僕はつい声にでして叫んでしまいそうな言葉を心の内になんとか止め、ケイトの見終わったステータスボードを覗き込む。すると ──
Name:リアム Age : 4 Gender : Male
- アビリティ -
《生命力》573
《体力》462
《魔力》20万2100
《筋力》 434
《魔法防御》2万210
《防御》434
《俊敏》9
《知力》25
《幸運値》10
《属性親和》全属性
- スキル -
《全属性魔法》
《火魔法Ⅰ》《水魔法Ⅰ》《風魔法Ⅰ》
《雷魔法Ⅰ》《土魔法Ⅰ》《光魔法Ⅰ》
《闇魔法Ⅰ》《空間魔法Ⅰ》《回復魔法Ⅰ》
《無属性魔法Ⅰ》
《魔法陣》《魔法陣作成》〈《精霊魔法∞》〉
《複合魔法》《鑑定Ⅲ》《魔力操作Ⅲ》
- EX スキル -
《分析》《知の書》《隠蔽》
《テイム》《自動翻訳》
- ユニークスキル -
〈《???》〉《魔眼》
〈- オリジナルスキル -〉
〈《カスタマイズ》〉
- 称号 -
〈《転生者》《精霊王の寵愛》《???》〉
となっていた。
『魔力が20万を超えている・・・!それになんでユニークスキルの欄が表示されているんだ・・確かに消した・・・《魔眼》ってなに?』
変な汗が噴き出してくる。僕はその項目を確認するとステータスボードの両端を握り、噛り付くようようにその項目に間違いがないかどうか再確認する。すると ──
「どうかなさったので?リアムさん?」
そんな、汗をかいて喰い入るようにステータスボードと睨めっこしている僕に、ケイトは不思議そうにそう告げるのであった。




