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アナザーワールド 〜My growth start beating again in the world of second life〜  作者: Blackliszt
Solitude on the Black Rail 編

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332/371

53 Alea jacta est

 ”山が浮かぶベッセルロットの開拓”──週刊ノクチュア新聞。


「バーディー、調子はどう」

「ええ、今日はご招待ありがとうリアム」


 海岸の一部を買取り港にし、そちらではサイレンの人々が食事やベッセルロットの人々との文化交流会を楽しんでいる。 


「こうなったらアグーチです!」

「みんな身を引き締めろ!ほらロバート、腰が引けてるぞ!」

「そんなことはない!外野は黙っていてほしいですね!」


 広大なコンクリ平地で球蹴りしたり──。


「酒が美味い。ジェームス、このブリスケットは最高だ」

「僕は白身魚のフリッタが好きだ。だけど昼から飲む酒が最高なのは同意するよ」

「よかったらこちらのお酒はいかがですか?」

「あ、ありがとう。お嬢さんは・・・どこかで・・・」

「ライヘンさんとジェームスさんですね。お二人ともとても優秀な方だと聞いています」

「あなたは?」

「初めまして、私は梨園 湊花の娘の繚美めぐみといいます」


 グリルや低温スモークのバーベキューを囲ったり。


「海竜の籠に乗って一足先に空を体験しよう!一回5分の遊覧がたったの3千G!」

「えー乗客の皆様。ピーターメールプレゼンツ。これから5分間のベッセルロットの遊覧の旅が始まります。ガイドを務めますのは、私スローです。よろしく」

「どうして僕・・・我がこんなことを」


 広報を兼ねたひと商売で商魂を燃やしていたり。


「隠れて一人食事ですか」

「人に食べさせるような料理ではないから・・・」


 焦がし干し大根。

 厚さを一センチ強に切って皮を剥いた大根を一日風の当たらない網の上で放置、水と醤油と塩の大根が浸かるくらいの濃いめの調味液をフライパンで沸かし煮込む。

 中火で水分が飛び程よく醤油が焦げ付くくらいまで煮詰め、焦げた大根を取り出してフライパンの焦げを流し切らないよう水でサッと一度だけ濯ぎ加水したところに再び大根を晒して皿に取り出し半日放置して完成。


「父方の祖父母は農家だった。九州の市の郊外、つまりは田畑が広がっている。それである日、父が実家の近所からアホでかい大根をもらってきたんだ。母はそれを使って豚汁とか、イカ大根とか作ったけど使い切れなかった」


 母は下拵えを済ませてしまい使いきれなかった大根をザルの上に乗せたまま次の日に使おうとそのまま台所に置いていた。


「それを次の日、小腹が空いた僕が食洗機にかかっていなかったフライパンに醤油と塩を適当に放り込んでキッチンペーパーで落とし蓋をしタイマーで15分、1時間後に見に行くと火は止まっていたが水気は飛び焦げついていた。キッチンペーパーはまだびしょびしょだったけど、心臓が冷えて最悪だ。それに一枚齧ると食感はバッチリあるししょっぱいったら」


 しかし捨てるのが勿体無くて、とりあえず薄めた調味液に再度つけて味を薄めて皿にあげた。


「薄めた大根を再び口にして、水っぽくなった微妙な大根を想像していたら焦がした醤油と僅かに芯を残した大根の食感が絶妙だった。最悪ではなくなった。これはこれで悪くないと思った」


 手間がかかる割にはということで我が家の定番のレパートリーとはならなかった。

 しかし、偶に気が向いて作ることはあった。


「縁日で食べたとうもろこしの焦がし醤油の味が好きだった」

「何を言いたいかはわかりますよ」

「君は僕の記憶を知っている。だけど、昔話には相槌を打ってくれる」


 偶然が満たしてくれる時間がある。

 最高の幸せとは程遠いが、僕の日常はそれで満ちてくれるくらいの密やかなものだった。


「Alea jacta est. 調べたよ。始めたことは結果を見ないと気が済まないタチだ」


 沁みは懐古の署名、浸みは改善の勧告、そして服のシミは人生のしつこさの味で本の紙魚は憎き私の永遠の宿敵だ──書斎の本を干していた父がぼやいていた言葉だ。


「みなさん、今日は集まってくれてありがとう。この──さて、ここはどこなんでしょうか。広い石の大地だが、海に繋がる道もある。空の港であり、海の港だ。巷では海竜ウーゴ・ファノの食糧庫なんて噂も聞きました」


 かの有名なノアの方舟の話で、陸地を示した鳩が登場する。鳩は星座、その学名。はたまた、かの有名なコロンブスの名前に似ている。

 そういう偶然が満たしている平和がある。


「コルンバ・サラサの港、コルンバは鳩という意味があります。陸にも海辺にもいる。次に行くべき未来を示してくれる鳥です。そしてサラサはこの石の大地の色模様のことです」


 本当のことを言うと、前世に由来を持つことは違わないが、命名の理由は少し違う。


『貴族界では羆、牡牛、海蛇、虎。だけど経済の性格を僕の視点で見ると違う』

『踏みつけてもいくらでも生えてくる稲穂、穴を掘ると一際輝かしい金がザックザク、星座が導く動物たちの楽園へ、そして言葉巧みに稲穂と天苑の動物たちを狙う川原の民』


 転じて不作、墓穴、乱獲、氾濫。


『特に東の川原には琥珀がたくさん落ちている。目が眩みそうだが、古い時代の遺物だと自分に言い聞かせる』

『・・・いずれは川の果てへ。さながらリアムはノアでしょうか』

『北ではさそり、西ではハンドラー、南ではノア、東には堤防を』

『さそりですか?』

『前世ではさそり座だった。乱暴者の死は月の女神の涙と共に空へ』

『ああ』


 そして中央には、常に弓の照準を。


「私たちは次の段階へ進みます。アソシエーションがテーマです。イノベーションを同じく志すものとして、遠慮なく霹靂はたたいてください。私はノーフォークを旅立ち、そしてここにたどり着いた。ここに辿り着くまでに、世界に名声を轟かせる夢を見る女性に会った。嵐の中で星を語る青年に会った。生意気にいつも喧嘩を売ってくる宿敵のような女性と遭遇し、窮地にはいつも私の攻略を手伝ってくれる友人と再会した。雄牛のような心臓を持つ巨塔の番人と対峙した。宿敵の家族に温かく迎えられた。勇気を出して助けを求める少年とその仲間達に会った。太陽と月にも負けじと輝く眩い恩人と再会した。さて、更に先の段階へ足をかけた未来の僕はみなさんのことをどう記憶に焼き付けるのでしょう。きっと明るく、そして、今までに見たことのない景色に満足している。一人一人が輝ける場所を。私たちは同じ世界で生まれたが、新しい顔と出会すことの回数の方が圧倒的に少ない。だから、私は私の新しい仲間たちに感謝を述べたい。ありがとう。そして、引き続き交流会を楽しんでください」


 泡のように消え行かぬように、オリーブの葉を咥えられるように──歴史に親愛を込めて。



──7階 庭孔雀、14階 庭牛、21階 泥豚、28階 雲羊、そして35階は草原の庭の砦ジャイアントチック。


「草原の壇を卒業した俺たちに怖いものはなーい!」

「なーい!」


 クッキーベルの面々はエスナの台所で祝勝会、兼、次のステップアップを前に決起集会である。


「それ飲め食えー!今日は小僧のおごりだー!」

「おごりだー!」

「セナ!キュリーが真似するでしょうが!」

「ハハー!お母さん、これが飲んでいられずにいられますかって!この子たちのお祝いなんだよ!」


 コルンバ・サラサの交流会に比べたら随分と慎まし喧しいが、少年少女が更に加速する可燃剤となる。


「明日からは遺跡の壇だ!」

「もっと大きく弾けていこうぜ!」

「宇宙に届くまでぶっ飛ばそう!」

「いいなそれ。今の俺たちは止められない!」

「気合入ってるな、みんな」

「ピーターメールも本格的に活動を始めるって。私もカレンダーとスローに負けてられない!」

「そうだった。よーし!ここはいっちょ気合を入れて、標を掲げるぞハイボール団!」


「「「ハイボール!!!」」」


 甘く渋い紫の発散する飛沫がテーブルに染みを作る。


「そうだ、めでたいことはまだある。チェルニーの一作目が完成したんだ。みんな見てやってくれ」

「よろしくお願いします!」


 めでたいことは続く。

 怖いものを恐れず、人生の賽は投げられたのだ。

 どの目が出るのか、大事なのは確率ではない。

 誰がいつ、どこで投げたのか──。


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