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アナザーワールド 〜My growth start beating again in the world of second life〜  作者: Blackliszt
Solitude on the Black Rail 編

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50 La Belle Dame Sans Merci

 秋も始まった。


 レイトモーニング。

 ベッセルロットで仕入れた貿易品のコーヒーを片手に、今朝も新聞を広げて躍進、革新、反省を続ける社会情勢を憂う。


「ブゥーーーっっっっ!!!!」


 う、うれ・・・鼻がコーヒーに、鼻にコーヒーがッ!!!


「うわっ、汚いですね」

「だってこれッ!?」


 週刊ノクチュア新聞、アウストラリア王立学院の新聞部編集の記事を元に編成された新聞である。


 今日、ウォーカー商会を通して初めて届けられた一面の見出しが噴き出されたコーヒーの染みで滲んだ。


 見出しはこうだ。


青靂せいれきの ミリア・テラ・ノーフォーク!!! はたたく!!!』


 内容は──。


 ランキング戦-決戦ディサイシブ部門にてノーフォーク公爵家令嬢ミリア・テラ・ノーフォークが、ハワード侯爵家嫡男ルイス・ギルマン・ハワードに勝利。

 勝因はラストレガシーの使い魔、雷雹ライヒョウのダイアナか。

 序盤の魔法合戦を経て、中盤では精霊魔法のぶつかり合いへ、そして、終盤にはミリアが使い魔ダイアナを召喚しダイアナが宙に描いた見事な氷のループを伝い、宙から落ちる雷のごとき蹴りを放つ。

 迎え撃つルイスの放ったシュテファン=ボルツマンの魔法を切り裂き勝利した。

 その様、まさに霹靂。

 敗北したハワード子息を勇者と支えるユーロの正光教巫女を舌戦相手ととればこう宣戦布告、


「私こそが霹靂神はたたがみだ!!!」と、


敗者であるハワード子息を勇者として認めず。

 灼雷勃発一触即発であったがドラクロワと名高いブラッドフォード女男爵家エリシア・ブラッドフォード女男爵がミリアを諌め、これを鎮火。


 何したんだ・・・。


「こおりかみなり火事ミリア・・・」


 もう一度冷静に目を隅々まで通して、この一言が漏れた。


 新聞には記事の内容を補足する挿絵が描かれている。


 火炎を吹く銃のようなものを構える少年の向こう側、白豹の生み出す氷のレールが縦横無尽に敷かれた空から一直線に蹴り裂き突進してくる少女の様。


「見事だ・・・」


 思い出されるのは、白雷雹マーナにトドメをさした最後の一撃。


"神解け、是色!!!"


 こちらもまた思わず、霹靂かみときを文字って内から湧き上がる衝動のままに口走った。

 だが、豪雷を纏っていた彼女に聞こえているはずもない。


「糸飴のシュクレフィレのように空中に描かれた氷のレール。この上を滑ったのだろうか」

「ああ。記憶の中にアイスにシュクレフィレを被せたタンバルエリぜというお菓子がありましたね。たしか意味は・・・太鼓」


 太鼓・・・鬼・・・雷神・・・。


「ミリアが、た、太鼓ッ、持って鬼で雷っっ!!!」

「笑ってはいけませんよっ」

「そういうイデアだってッ!」


 解釈の一致が過ぎた。


「見たか新聞!!!あのバカがまたやらかしたぞ!!!それも盛大に!」


 それはもういいタイミングだった。

 ちょうど僕より一足早く朝刊を読んだのであろうゲイルがピーターメール社に突入してきた。


「あっ・・・はぁあああ、なんだって俺がビビらないといけないんだ」

「当然いないよ。いたら僕もしばき倒されてる」

「なんだお前もか」


 この場にいない筈なのに突然背後を振り返って存在の有無を確認したゲイルもゲイルだ。 

 あれだ。帰国子女がしばらく外国語に敏感になってるアレと同じ。


「ところでさ。ランキング戦ってなに?」

「聞いたことないのか?」

「ああ。領対抗戦とかがあるのは知ってるけどランキング戦は初めて聞いた」

「学院ではランキング戦があるんだ。部門は武器(sword)、魔法(magic)、決戦(decisive)、知識(wisdom)だったかな」


 ノンマジックに分類されるソードとウィズダム、魔法のみで競われるマジック、そして、総合力を競うディサイシブ。


「アイツがハワードの子息を破ったディサイシブ部門は魔法も武器もあり。血戦(relative)という揉め事を解決する一つの手段を競技化した部門だから幾つか禁則及び制限事項がある訳だが・・・これは大騒ぎになるなぁ」

「そだねー」

「んな呑気な。ミリアが使っている眷属魔法、それからハワードが使っているシュテファン=ボルツマンも一般戦での行使には制限がかかっている。制限解除されるのは同じ制限グループに属する力を相手が身につけている申請試合の場合に限る」

「そいつはヤバい。なんでそんなに詳しいの?」

「そりゃあ調べたし。お前をギャフンと言わせるために」

「僕?」

「だってお前のお姉さん王子王女を差し置いてソード、マジックのランキング一位の怪物だろ」

「・・・カリナ姉さん?」

「そ」

「は?」

「王子の雷を氷で捻じ曲げ、王女の剣を足蹴にする戦闘狂」

「戦闘教?へぇ、そんな宗教あったんだ」

「過去に一回ディサイシブでも一位を獲得してるし。王族の雷魔法に向けて氷の霧の輪をぶん回してぶつけ押し返したマジモンの怪物。まぁ、王族は事実上精霊魔法を封じられているから・・・属性相性の悪さからマジック部門で戦ったらハワードに敗れるだろうって予想もあるけど、にしても姉弟揃ってなんなんだよチキショウ」


 なにそれ聞いてない!!!


『そうだ。水晶舞台とマーナが反応してのブレイクアップの突撃だったとして、マーナには、姉さんやスコルを甦らせたあの赤光輪エルブスみたいに青い光輪を背負った姿とかもあったのかな。甦ったスコルも黒煙の雲を渦のように操っていたし』

『仮にあったとしてリアムともっとデカい雷の引っ張り合いをしていましたから身の回りに気を遣う余裕がなかったのでは?』

『降りかかる火の粉を払う寸前まで彼らに玉座から逃げる選択肢はない。なんとも高潔らしいが本質は難儀で陰湿だ』


 雹の嵐、発電、充電、そういえば磁力を発していたのであろう水晶舞台はミリアの電撃現象に干渉していなかった。マーナの魔力にしか反応しなかったのか。


「おーい、現実逃避かー」

「ちゃんと聞いてるよ」

「過去の新聞はウチの支社で保管してるから今度見せてやるよ」 


 ・・・コーヒーに砂糖入れよ。



──メルクリウス、34階。


「早くもリアムが到達している階まできたな。俺たちってこんなにできたんだな」

「お前がいてくれなかったらこんなに早くこれなかった。なんだよ、亜空間の倉庫あるから継戦能力高いしケファでの奇襲は空中も有効だし。どうしてこれで空間属性使いが不遇なんだ?」

「それは俺たちがまだ一回も死んでないから言えるんだ」

「・・・そっか」


 ラディたちクッキーベルは34階の石碑の言葉を手に入れて、転送魔法陣の傍で作戦を練っていた。


「さて。作戦会議だ」

「どうしてそんなに慎重になるの?」

「キャシー、俺たちはここまでかなり順調に登ってきた。だがまだ足りない。俺たちはもっと上を目指さなければならない」

「いやそれはわかるけど・・・」

「マッテオの光魔法で目眩しするのは?」

「それだと手続きできないだろう。本末転倒だ」

「そっか」

「だったら弾けさせればいいんだ!ほら、今日リアムが晩餐会開くって言ってただろ?それでどうだ!」

「そういえばクロカさん連れてきてって頼まれてた!」


──よしっ、胸を張って凱旋だ!!!


「34階ぃぃぃい? チっ!」

「うわっ!この人舌打ちしたよ!」

「あの変態リアムは散歩感覚で1階から34階まで踏破して狩りしてたの!それも半日で!獲得資源の量が段違いなわけよ!」

「で、でもリアムと比べるのはちょっとどうかなぁ、と」

「それじゃああなたたちは悔しくないの!?あっちは1人こっちは7人!それに啖呵切ったのはあなたたちでしょう!だったら私も鬼となって少しでも尻を叩こうってわけよ!」

「クロカさんのサポートには感謝していますが、もう少し労ってくれても」

「ああ、35階のガーデナーの情報をかき集めて冒険者の要望に間に合わせた私ってなんて働き者なのかしら。私だって労力を割いてるんだからもっと自分を奮わせなさい!わかった!?そしてマッテオの言った通り比べるのも烏滸がましいしんだか、意識して現実が変わるのを待っているだけに落ち着くのか!だからこそまずは越えなさい!そして畏れを捨てなさい!あなたたちはリアムではなく私の報酬を畏れていればいいの!」


 今日、クッキーベルのメンバーは35階まで登りガーデナーを倒すと息巻いていた。だが結果は34階、リアムと同じ到達階に至ったことで満足して帰ってきた。


『リアムを意識してるのはどっちだか。それはそれとしても私とこの子たちにも優位性のある信頼関係が構築されてしまったのは痛いわ〜。私も素直になりづらいったら。アイツは最初っから生意気だったけどこっちは素直ねー。年相応に甘えに依っちゃうくらいには可愛いお年頃なわけか。こりゃあ心配になって様子を見にくるわけだ』


 クロカは彼らの畏れを感じ取っていた。だが、自分が普段から横柄な態度をとっていることは自覚しているわけで、しかし自らスタンスを崩すことはできなかった。

 クロカはギルド職員で彼らは冒険者という距離感。妙な話、業務上そこまでしてあげる義理はないのだ。


「それじゃあ湊花さんの歓迎会に行きましょうか」

「どうしてクロカさんがそのことを知ってるの?」

「リアムがさっき招待状持ってきたから。あなたたちと来てねって」

「お、俺たちの切り札がー!」

「信用ないのかな僕たち・・・」

「もし忘れたら後が怖いからさ、きっと」

「ほらくだらないこと企んでないでいくわよ!酒を浴びに!」

「やっぱりこの人碌でもない・・・あっいや違くて!」

「仕事終わったからいいの!」

「・・・怒られない?」

「転送陣に引っ張っられどつかれ35階のキーワードを言わせて欲しいんならそうするけど?」

「い、行きます行きます!」

「よっしゃー!予定より早く上がった分リアムに酌させるぞー!!!」


 翌日、クッキーベルは二日酔いのクロカの重い視線が刺さる転送陣の上で”フェンフウントドライスィヒ”を唱え、ガーデナー”ジャイアントチック”戦をあっけなくクリアした。


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