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アナザーワールド 〜My growth start beating again in the world of second life〜  作者: Blackliszt
Solitude on the Black Rail 編

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47 Bill of Rights

「引き受ける。やらせてほしい」


 カストラとの交渉の後、2日。

 返事がきた。


「よろしく」

「ああ」


 ゲイルがピーターメールを訪れた。

 そこに、ガスパーの付き添いはなかった。


「では改めて。ゲイルには内部統制監査をお願いする。監査要点アサーションは、君に任せる。が、とりわけ実在性、評価の妥当性、網羅性に重点を置いてくれると助かる」

「承知した」

「それで、さっきも言った通り、会計の人材を確保するため、それからサプライチェーンの稼働テストをするための準備とか進めるために近日中にベッセルロットに出向く。どうする?」


 こちらの問いかけに対し、ゲイルの口は重い。

 彼がピーターメールを訪ねてきたのは昨日のこと。 

 今日も説明のためにこちらが用意していた資料に目を通して、彼は目頭を押さえていた。

 経済の最先端をゆくステディエムだが、会計の概念はある一方、僕が求める監査の概念は根付いていない。


「サービスの名前は?」

陸鳥リクドリサービス」

「ふーん。じゃ、海上にパスが通ったりしたら海鳥ウミドリ?」

「おっ、よくわかったね」

「そりゃあ、航路が設定されているとはいえ、もし海に航空機が沈めば追跡が困難だ。悪天候時の緊急の着陸なんかも難しいし」

「実は、海鳥運送の試みとして、ユーロやトロイを経由しアウストラリア沖を行く貿易船に補給作業をする草案をまとめていてね」

「それってどんなメリットがあるんだ?」

「寄港に伴う入国手続きや税の回避。あとは、多少の時間短縮。貿易の活性化、港の渋滞緩和もできるし、認可を取るのはあまり難しくないと思ってる」

「でもさ。輸送方法はどうするんだよ」

「いるじゃない。うってつけのタダ飯食らいが」

「お前まさか・・・」

「ついでに、バーディー・・・あ、ジブリマーレね。も巻き込んで補給サービスの実験もできないかなんて。サイレンに新しい雇用を産むと思うし、検討してみる価値はあると思う。こっちの実験はまだ絵図を描いてる途中だからとりあえず、陸鳥の地盤固めに目処をつけた後にでも提案してみるつもり」

「・・・じゃあ、まぁ、一番大事なことを聞くが、あいつって鳥じゃなくて」

「鳥」

「いや」

「鳥なんだよ」


 海上に・・・そっか、鳥の所以については、君にも心当たりがあるのか。

 さて、企業として必要な会計及び事務作業を行う人材については、カレンダーが商売を始めたいと言い出した時に海咲に相談している。

 ただ、チャールズ・ジェンキンスをノーフォークに同行させる前だったあの時は、マンチェスターとリヴァプール間のスカイパス計画について見通しが甘かったから、ピーターメールの事業内容は当初より根本から修正された。

 ガスパーを通したゲイルの登用が何を意味するか、彼には暗黙の内に通じたが今尚未定のスカイパス計画は海咲には安易に話せない。

 海鳥サービスの草案も、ベッセルロッドの貿易組合に所属しているであろう海咲への土産だったりする。

 カストラに足りないピーターメールの営業、及び、輸送人材の斡旋は依頼した。


「というわけで、こうしてゲイルから返事ももらえたから、近日中にまたベッセルロットに赴くよ。それで、どうだろう。ウォーカー商会さんがよければ、同行してもらっても構わないと考えてるんだけど」

「いいのか?」

「まぁ、少し遅めのお中元を貰ったし、遠征後に稼がせてもらったお礼っていうか、精算をしておきたくて」

「抜け目のない。わかった、持ち帰って検討する・・・どうして俺を選んだ。アドバイザーとして雇うこともできたはずだ」

「根拠がほしいから」

「・・・わかった。これ以上は聴かない」

 

 候補の一つとして、コンサルとして雇う道もあった。

 だが、重すぎるプレッシャーは君にいらない。

 それに、ウォーカーの名を後ろ楯に、これでガスパーに借りを作らない。

 

「それで話は少し変わるけど、マンチェスターに新聞ってある?」

「ある。なんだ、リアムも知らないことあったか。ま、珍しいもんだし」

「で、購買したいんだけど、どこに行ったらいいか・・・」

「えっ、購買すんの?あれ、めっちゃ高いんだが」

「多少は値が張ってもほしい。畑違いの業界に身を置いていた僕にはコネクションがない。だからできるだけ確度が高く、新しい世間を取り巻く情報を仕入れたい」

「そういうことなら期待に沿えないかもな。実はマンチェスター専門の新聞社はない。現在マンチェスターに籍を置いている新聞社は王都を中心に活動している会社しかない」

「どうして?」

「まず、新聞にかかる印紙税が異様に高いんだよ。あとは領ごとに出版統制してるのもあるかな。ただし、国王が治める王都で出版統制された新聞に関してはその限りではない、とはいえ、ノーフォークとかは遠すぎるから安定した供給があるのは王都周辺の領とスカイパスが通ってるステディエムくらい」

「スカイパスを用いた運送費用まで込みってことか。それは、高いだろう。人のこと言えないけど、新聞印刷関連の特許って誰が持ってるんだろ」

「・・・ハワード」


 ・・・クソッタレ。

 スクールでテキストを自筆しなければならなかった理由がわかった。

 フランが偶に使ったところを見たそれらしい魔法を見て、安価な印刷技術が開発されてないのだと結論付けず、疑問を持つべきだった。

 印刷技術がないのではなく印刷費用が高いから、高コストという点について生半可に答えが重なってしまっていたために問題文の障りしか目を通してなかった。

 一方で、新聞の普及に限った話ならば王都への紙の生産の依存、それから印紙、所謂、スタンプ税が地方新聞の発展を阻害している旨もあるのか?

 そうなると、カストラは、ステディエムに新聞社がない件について、どっちのせいにしているんだろう。

 言論統制の一環か、はたまた、王の意向を尊重してのことか。

 輸入制限をかけていないところを見るに後者か、それとも、かけられないか。

 王の意向か・・・生活に必要な物資は豊かだったし公都と高を括っていたが、案外、ノーフォークは田舎だったのかもしれない。

 そう思うと公爵家からの期待が重い、これは考えないようにしよう。


「今、王都には何社くらい新聞社があるの?」

「会社はどうだったか・・・紙で言うとたしか、10紙だったかな。でも、そのうち何紙かはユーロのヴェリタス新聞だったり、ロマンスで加熱しているコラムや連載小説を集約したガーデン・エッセイペーパーなんかがあるから、在外権益を除くアウストラリア国内、特に王都近辺に絞った新聞は5紙」

「その中にはもちろん、彼らの息がかかった会社の新聞もあるわけだ」

「つーわけで、お上の顔を伺わない変わり種しか残らないよなー。よかったな、一紙だけ条件に合うそんな変わり種があって」

「あるの!?」

「ノクチュア新聞。グラウクス出版社が唯一発行する新聞だ。グラウクス出版社は第一王女ソフィア様が経営されている。主に扱っているのは研究誌等の学術系の出版物で、王都のオブジェクトダンジョンのひとつ”ミネルヴァ”の特別な設備を用いて印刷することが許されている会社・・・ただ、まぁそのなんだ。ノクチュア新聞は、学生新聞なんだ」

「学生・・・えっ?」

「要するに、王立学院の新聞部が編集したものをそのまま発行してるんだ」


 学生新聞というと、学生向けの新聞、学生が編集している新聞・・・大丈夫なの?


「これが結構馬鹿にできない。知っての通り、王立学院にはアウストラリア中から学生が集っていること、それから、学院出身の各地OBOGからのグラウクス出版社への寄付金の額が凄まじく、そこから潤沢な活動費を割り当てられていること等々、学生生活に身近な王都を主軸とし重要な各地の情報もピックアップされ掲載している」

「学院絡み、出版統制ときたか」

「勘がいいな。出版統制をソフィア様が直接担当されている。だからハワードの介入がなく、安い。新聞の利益を学校設備の寄付に活用することはもちろん、社会福祉事業もやってるから支持が厚い。ぶっちゃけ、俺もグラウクスのことを知った当初はソフィア様に憧れてた。でも親父にあの人には憧れてはいけないってきつく言われて、おかげでパトリック様の結婚式の時、ソフィア様とお前が楽しそうに喋っていたのを見て微笑ましく思ったが、近づきたいとは思わなかった・・・近づいたら、醜悪な俺は妬ましく思いそうだ。俺は恵まれた俺が好きだ」

「耳の痛い話だ」

「というわけで、俺のおすすめはそのノクチュア新聞とスターチェンバー社の星室新聞を購買することだ。両紙とも週刊新聞で星室新聞は火曜でノクチュアは金曜に発行される。ステディエムに入るのは1日遅れだ。ちなみに、これがサンプル。一昨日のやつだけど」

「ありがとう」


 ゲイルが亜空間から取り出した一部を開く。


“一学期ランキング戦もいよいよ大詰め!”

“氷デザートが今年もトレンド!学内アンケート調査”

“ベッセルロットを舞う竜、火炎の柱"


 星室は・・・。


“ベッセルロットにて爆発騒ぎ、テロか”

“第四ダンジョン攻略部隊 ユピテルの最新攻略階層を更新、完全攻略まで後一歩か、調査開始"

“おすすめのコーヒーハウス特集"


 それぞれ個性がある。が、大まかには大事なところはおさえてる。

 そしてこの字の感触・・・活版印刷か。


「なぁ、なんでお前そんなニヤけてるんだ。気持ち悪いぞ」

「気持ち悪いはひどいなぁー。ねぇゲイルくん、平版印刷って知ってる?オフセット印刷は?」

「さ、さぁ?」


 不幸だったのはこの時代の文明レベルにおいて活版印刷は非常に有用であること、幸いだったのはその他の印刷技術の知識があったこと。

 ま、印刷技術開発は問題が起きてからでいいや。

 現在の国内情勢では大成しないだろう。


「それじゃあ、これらの新聞を買おう」

「お買い上げありがとうございます」

「王都から運んできてるって聞いた時点でそんな予感はした。勧誘ありがとう」

「?・・・あぁー!!!お前最初から!!!」


 ウォーカーは何かとカストラと繋がっている。

 おそらく、新聞を購入している顧客の情報を流すくらいのことはしているのではないかなぁ。


「王都で購入した新聞の転売になるから、あらかじめ申請された部数だけ運ぶため支払いが2週間遅れると契約不履行のため自動的に失効する点は注意な」

「失効ね、了解。そうそう、失効といえば特許法の失効期限とかあったっけ?」

「しばらくはないよ。ハワードの権威はまだまだ続くさ」

「オッケー。それじゃあ、新聞を購買する話ついでだけど、綿素材と麻素材の白い生地が欲しい。それから腕のいいテーラーがいたら紹介して欲しい。個人的に契約したいんだ」

「ふっふっふ、ちゃんとウォーカー商会の原点を覚えていたか。いいだろう。まとめて買ってくれたら少し割引しよう。テーラーの方は持ち帰って当たるよ」

「助かる」


 本当は、自分の特許の方が心配だったりして。

 ゲイルもその辺はわかっていて、あえてハワードの話の内に収めてくれたのだろう。


「それじゃあ今日はありがとう。よかったらこの後お昼にする予定だから、一緒に」

「待ってくれリアム。親父から伝えるように言われたことがある。これは個人的な注意喚起であり、他所へ含むところはないと念押しするよう言われている」

「わかった」


 ガスパーから僕へ注意喚起?個人的な、つまりカストラやブラームスは関わらない通達か。


「近頃ステディエム内で度々、集会が開かれている。"秘密の兎会"というらしい。特に北区に集中して開催されているようだが、他の区でも開催されているくらいには加熱している。この名前の聞こえてくるところには近づかないように、ということだ。息子の俺の友達が危険な目に遭うのを黙って見ているわけにもいかないので、くれぐれも注意するよう言っておけとのことだ」


 ・・・秘密の兎会?


「犬飼ってるんだ。いいなぁー」

「かわいいよ。でもねー・・・普段はトイレで用を足すくせに不満があると廊下や階下なんかの通り道に罠を仕掛けるくらい小賢しくて、偶に憎たらしい。肉を焼いた日にお裾分けがなかった時とか、散歩に数日行けなかった時とか・・・決して固形ではないところ妙な気遣いしてるというか、何回踏み抜いたことか」

「罠ってッ。散歩した時とかもだけど、そういう世話は大変だよね」

「散歩中に犬の糞害を主張する張り紙を見ることとかあるんだけど、そういうのを見るとなぜかこっちまで申し訳なくなる。その点、ドイツとかには犬税が残ってる。税収は街の清掃に充てられる一方で、犬の頭数を制限する役割を果たすような税」

「犬を飼うハードルを上げて責任感を自覚してもらうの?」

「愛護の面から見るとそうかも。でも税金払ってるから堂々と糞を置き去りにする口実になってるところもあるって話も聞く。それから政治経済の面で見るとペットにかかる税も一括りにできず、例えば、かつての日本でも犬税はあったし興味深いところでいうと兎税とか」

「そ、それって食べたりとか・・・」

「明治あたりペットとして人気を博していた兎の加熱ぶりを抑えるため。兎会と呼ばれる高額販売の会が開かれ、更紗サラサ兎なる黒の斑紋のある白兎が今のレートで2、300万も価値をつけられるほど。だから色を塗ったり、とにかく白熱していた。そのため、兎税が導入された。とても高額かつこまめな手続きが義務付けられたことで、秘密の兎会が催されたり、価格が暴落したり、〆めて鍋にしたり、少なからず兎たちには悲惨な結果を生んだ」

「そっか・・・そういえば最近ニュースになってた。錦鯉が何千万円で売れるって」

「模様という付加価値。特に、描き直せない体に刻まれた生来の模様というのは、なぜこんなに甘美で、そして、残酷なのか・・・」

「そうだね・・・」

「それでもね。残酷さより、好奇心が勝つのがまた、僕を苦しめ楽しませてくれるんだけど」

 

 目を瞑りたくなる。

 鈴華とこういう話をしたのは覚えているが、ここまで明瞭にイメージが掘り起こされたことが不思議でたまらない。


“おいトッド!"


 背筋が凍る理由は明白だ。

 だが、言語、翻訳、世界等々、空似の線が濃厚だろう。

 兎などありふれている。





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