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アナザーワールド 〜My growth start beating again in the world of second life〜  作者: Blackliszt
Solitude on the Black Rail 編

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45 Rabbit Hole

 ピーターメールの実態は、魔法箱を用いて広くサービスを展開することでカレンダーたちも儲けられて、リース料、または販売料に含む利権で僕もウハウハ。

 懇意にしまくりのブラド商会を通して金が懐に入るようになっている。


「口に出して考えを整理すると一人走り黙って考えようとすれば口が止まる・・・お恥ずかしい」

「ブラド商会から唯一提携を結んだ君の実績を前に侮るなど恐れ多い」


 商才だとは言ってくれない。


「冷蔵冷凍の有用性は何も運送だけで活躍するだけではない。これまで腐らせてきた食品の可食期間が伸びる。すなわちロスが格段に減る。場所は関係ないなどと私は思っていない。是非、マンチェスターでも君達の企業の力を貸してほしい」


 ピーターメールが展開するサービスの有用性について一通り網羅しているらしい。

 いいね。

 取締役会に経営を任せるとはいえ当の役員であるカレンダーとスローはまだまだ仕込み中である。

 さてと、これでは僕がこれまで以上に奔走しないといけなくなる。

 ここからは僕の番。


「では、私からは人材登用へのご助力をお願いしたい。具体的な内容をこちらの書類にまとめて参りました。後日にでもお返事をいただければと考えています」

「少し、目を通しても?」

「はい」

「・・・いいでしょう。詳細については後々詰めるとして、大筋は合意したものとみなしてもらって構わない」


 カストラはあっさりとこちらの提案を受け入れる意思を見せた。

 いい感触、ワガママが言いやすい。


「色よいお返事をいただき感謝します。ただ・・・今回の会談・・・を経て身勝手ながら、懸念がひとつ生まれました」

「どうぞ」

「ありがとうございます。ここからは私の我儘だと思って聴いていただきたい」


 あえて我儘だと前置きをした。

 これまではビジネスに則った報酬の話。

 ここから先は個人としての報酬の話。


「カストラ様がこうしてお話を聞いてくださったこと、それから期待をかけてくださったことから使命感といいますか、もしかしたら企業としての将来的な利益は同時に社会貢献にも密接に繋がるのではないかと思い至りました」 

「そう認識してもらえているというのなら、私としてはとてもありがたい」

「過剰だと笑らってはくださらない・・・」


 あ、嘲笑など不要なのに思わず・・・声色は至って平坦に・・・続けろ。

 緊張から逃げて道化を演じたいという未熟な人間らしさは抑えろ。

 ぶつけろ、何も怖いことはない。


「市場にて利益を上げる責任。すなわち産業の発達を推進したい。これには私たちがお互いに利するものとしての意見が一致していると考えています。創業、あるいは将来に向けて事業規模が大きくなっていく図絵を描けば、公正取引の確保という観点がピーターメールには抜けている。とはいえどうしても、勘定を信頼のおける所へと預けたい」

「ほう・・・」

経営クビはいくらでも見繕える。従って如何にも企業生命、短しと絡む。会計の能力を持ち合わせていることはもちろん我々の事業に理解があることが最も望ましい」


 取締役会を取り巻く権能をどう手に入れようか、あまつさえカストラは公益化を計ることにすら奥手に出てきている。

 だからこれからぶら下げる巣蜜は、さぞ、甘かろう。


「求めるのは、自浄作用」


 至れり尽くせりの温床なんて僕はいらない。 

 陽の光さえ当たる籠だけを置いて、強烈な悪意さえ跳ね除けられればいい。

 これが僕の望む冷床育苗の経営方針(コールドフレーム)・・・いつか、僕の手から離れたとしても。


「そこで私は、私の友人ゲイル・ウォーカーをピーターメール社の監査役へ選任したい!!!」

 

 さも、大会社のような振る舞い。


『籠は適宜、需給に合わせればいい・・・ね?』

『そうですか』

『・・・言い訳、聞いてくれてありがと』

『どういたしまして』


 大見得切ったからさ、僕はまだまだ未熟だから。

 あー、ソワソワした!


「・・・きみは」


 カストラの鼻がサラッと息を吸い込んで微動だにしなくなった。

 そうして、吸い始めた煙をくゆらせるようにひっそりと吐き出す。


「君とゲイルが懇意にしていることは、先の面会時に感じた。しかし、なぜ彼だ」

「信頼しているからです。そしてカストラ様、あなたは・・・彼と私、共通の知人ですから」


 カストラが考えをまとめる幾許かの間をおいて、こちらから仕掛ける。


「カストラ様。私は──私は・・・僕は、かつてのラストボス戦、多大に貢献してくれた彼に言葉をひとつだけ送った」


 あなたの権能に肖りたい。


「その上で失礼ながらあなたに問いたい・・・彼が私に勝ると?」

 

 勝ったよ、と、満身の緊張を緩和させながら、彼に穏やかに笑いかけたい。


「彼は憤慨するだろう」

「それはどうでしょう」

「・・・わかった。私から、通達を出す」


 そう、助力して欲しいんですよー、というかあわよくば依頼したい。

 話が早くて助かる。


「その他になにか力になれることがあれば、できる限りではあるが協力しよう」

「そうですか。では、ピーターメール社に所属する社員のスカイパスの通行認可、及び、僕の許可証の発行もついでにお願いしてもいいですか?」

「確か一度拘留していた時の魔力記録があったかな。君の分は申請しておく。だが社員の分については規定通り会社を通しての申請、及び、登録をお願いしたい。登録手続きを優先して行うよう手を回しておこう」

「ありがとうございます。それから窓口は今回と同じでお願いできますか?」

「彼女でいいのかな?」

「むしろ優秀な人材を遊ばせることにならないかと。地盤がある程度固まりましたら、お返ししますので」

「そうしてくれるとありがたい。彼女は優秀だ。だが彼女は今回の誘致の件では率先して動いてくれた。きっとこちらが望む結果も最大限に引き出してくれると、私は期待している」


 役所関係の手続きが早く済んだのは、セナのおかげなのか。

 内心ふくざつー。


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