25 Recipe
「アオイ」
「なに、母さん?」
「繁盛しとる?」
「さっきウチの帳簿見たよね。ようやく軌道に乗ってきたんだから」
「見たよ。よく遠い内陸の地まで異国の風を吹き込んだね」
「でも風は気まぐれ。幸運も災いも連れて運んでくる。はじめのうちはやっぱり苦労した。異国の地で最も簡単に売れるのは工芸品だった。反物、器、茶器、けど大抵の工芸品は高額だし、王都で売り出すならまだしも公都の商業区の一角で売り出すには限界があった。だから安易には頼ってはいけない、なぜなら消耗までには大抵の時間を要して回転率が悪い。そこで私はなるべく回転率の高い商品を棚卸しした」
「けれど和食の味はこの国にはない味、その味を浸透させなければそれもまた売れなかった・・・正直、赤字が続いていた支店は閉じさせてあなたを何度呼び戻そうと思ったか・・・」
売り出す商品が仕入れられなければ店は必然と潰れる。そこに向かい風が吹けば、閑古鳥と心中である。
「けど、あなたは事業を縮小させるどころか食事処の経営をはじめた。もう勘当ものだと気が気ではなかったけど、事業の内容をみてジョンも私も踏みとどまった。鈴屋支店以外にも食事処の開業に出資者がいることを聞いて、経営者としての素養が鈴屋 葵にないと断定することができなかった。そして今、あなたは難しい事業を時間はかかったけど、見事に軌道に乗せている」
「・・・買い被りすぎ。私には・・・商人としての見聞がさっぱり足りてなかった。実家が商家だし、小さい頃から店に出入りしていたからその気になってたけど、実家がどうして貿易兼小売商と食事処の二足の草鞋を続けていたのかその理由すらわかってなかった・・・けどリアムがそれを教えてくれた」
「へぇ・・・あの子が」
「私のもう一つの故郷の味に理解を示してくれてくれた数少ない常連さんで、資金繰りに困っていた頃、本店が食事処をしてたことを話したら在庫の有効活用について指摘されたよ。それで、私は母さんたちがどれだけ商売を太く長く続けていくために工夫していたのか、思い知らされた」
「・・・葵、あなたを誇らしく思うわ」
今日出会って改めて驚いた。神楽と名付けられた食事処が共同経営であることは聞かされていたが、勝気な性格のこの子があんな年下の子の助言を素直に聞いてきたことに。
「寂しくはない?」
「ぜんっぜん! 神楽が繁盛するに連れて鈴屋の方の客足も順調に増えてきてるし、そこから広がった繋がりがあるからさ! そりゃあ、母さんや父さんとすぐに会えないのはちょっと寂しいけど」
「そう。それじゃあ、簡単にベッセルロッドに戻ってこいとは言えなくなったわね」
「そうそう、なんかさっき本店私に継いで欲しそうな感じだったけど・・・兄さんは?」
「・・・それが、今あの子ニホンにおるんよ」
「買い付け?」
「それが、向煬ったら向こうで家庭を持ちたいって言い出して」
「えぇ!?」
「向煬はお父さん似で異国への憧れが強かったからね。あっちで覚えた言葉遣いを無節操に使いたがったり、それ風に母国語をアレンジしたりだとか、まぁそれは私たちにも感染っちゃってるけど、やっぱり自分の祖先の故郷となるとね〜」
まぁ、交易路が開かれた今、鈴屋の店舗はニホンにもあるし、アオイに帰って本店を継がないかと持ちかけてきた理由は何も後継者問題のことだけではないのだけれど。
「菫も王立学院で新聞部に入って将来記者になる言っとるし・・・っと、そろそろ開店の時間よ。葵がいつもお世話になってる皆さんもご来店なさることだし、張り切って・・・あら、雨?」
「あっ、ほんとだ。時化らないといいけど」
外では雨がふり始めていた。天井から屋根に当たる雨粒の音が次第に大きくなっていくが、まだ外はオレンジ色で明るい。この時期によくある夕立だろう。
「こ、こんばんわ!」
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「えっといつものメンバーにゲイル、レイア、ティナ・・・あれ? でもリアムやクロカさんは一緒じゃないから・・・あの、俺たちここに行けって言われたんですけど」
「おいラディ、しっかりしてくれよ」
「な、なんだよ昼までしょぼくれてた奴が・・・ならお前が対応しろ」
「よし・・・あの、私たちはアリア・・・いや違うな・・・俺たちってなんだ?」
「ハイボール団」
「いやそれはないだろ。私たちはリアムの知り合い・・・そちらの葵お嬢さんの知り合いです!」
「はい、本日葵お嬢様がいつもご贔屓にさせてもらっている団体様のご予約があると伺っております。ハイボール団様でいらっしゃいますか?」
「いや俺たちはちが」
「そうです!」
「承知いたしました。こちらにどうぞ、席にご案内いたします・・・女将さーん! 団体のお客様いらっしゃいましたー!」
「はーい!」
「ほらみろ、やっぱりハイボール団でよかったんじゃないか」
「俺たちいつの間に入団したんだ」
「まぁまぁ、ゲイル」
「ン、そんな野暮は犬も食べない」
はじめにお店に現れたのはハイボール団、それと彼らと行動を共にしていたゲイルたちだった。
「はぁ最悪、いきなり降ってくるんだから」
「雨の中わざわざ足を運んでいただきありがとうございます。いらっしゃいませ、何名様でしょうか」
「何名って、私は超大事なお客様・・・は言い過ぎか。鈴屋さんが経営されているお店はこちらで合ってますか?」
「おっしゃる通りです。本店は鈴屋が経営する食事処になります」
「そうですか。私、そちらのオーナーのご息女の葵お嬢さんと親しくさせてもらってるものです」
「左様で、失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「クロカ」
「クロカ様・・・はい、確かに。ハイボール団様の名簿にお名前を確認しました。席へご案内します、こちらへどうぞ」
「はぁ、どうも・・・なんで私がハイボール団のメンバー? 私はあの子たちのオーナーなんだけど・・・ま、いっか」
次にやってきたのはハイボール団とは別行動で街の観光へと繰り出していたクロカだった。
「はぁあああ! お腹空いたー! リアムまだ来てないの!?」
「まだ席に座って5秒なんだが・・・」
そして、この態度である。
「いらっしゃいませ」
「こんばんわ。今夜こちらに招待いただいた者ですけど」
「お名前は?」
「リアムです」
「リアム様、はい、オーナーよりご来店の旨をお伺いしております。あの、お客様。失礼ですがお客様はハイボール団様に御所属されている方ではないのでしょうか?」
「所属はしてませんけど、一応関係者です」
「そうでしたか、お客様の素性を探るような不躾をどうかお許しください」
「・・・なんかやらかしたのかな?」
最後に来店したのはリアムだった。クロカが到着して2分後のことだった。
「遅い!」
「すいません、クロカさん」
「あんたがこんなに遅れてどうすんの!」
「って、クロカさんだってさっき来たばっかりじゃないか」
「私はお呼ばれした側だからいいの」
「てやんでぇ・・・」
「なんか言った?」
「いえ、何も」
「でも珍しいね。なにかあったの?」
「・・・にんじん買い忘れたんで、ノーフォークまで買いに戻ってた」
「・・・は?」
「それじゃあ、僕は約束通り皆さんに海鮮料理をご馳走するべく厨房にお邪魔してきまーす」
「ちょ、ちょっと! 今から調理って1時間後や2時間後じゃないでしょうね!?」
「材料仕入れた後すぐに仕込みはしたんであとは仕上げるだけです」
「ならさっさと仕上げる! かけあーし!」
「はい! 精一杯努力して仕上げます!」
言われなくとも、張り切って作りますとも。
「やはりいらっしゃったんですね。わざわざ包丁を手に取られなくとも、私どもが腕によりをかけて精一杯接待させていただきますのに」
「先ほどもお話させていただいたように、今回の僕の旅の目的は海鮮料理を食べること。鈴屋さんには厨房をお貸しいただいて感謝しておりますが、どうぞ僕が料理させていただく分にはお構いなくお願いします」
「となると、海咲とリアムくんの料理勝負になるわけか」
「もうお父さんったら勝負やなんて品のないこと言ったらいかんよー・・・フフフ」
「そうですよ、僕はあくまで自分の知ってるレシピを試したいのであって、長年こちらで料理されてきた海咲さんに料理の技術で勝てるはずもありません・・・hahaha」
「あら、でも葵から聞いたところによるとリアムさんは料理の方も相当な腕をお持ちだとか」
「それでもこちらの漁港で取れる魚の捌き方などはどうしても海咲さんに劣るでしょう」
「いえいえ、私も魚ばかり捌いていてこの厨房に立たせてもらっているわけではありません。肉や野菜、多様な材料を使って作られる店の料理全ては私が監修させていただいてます」
「これは失敬しました、ハハハ」
「いいんですのよ、フフフ」
「父さんなして勝負とかそげん余計なコツ言いよるの!?」
「だ、だってリアムくんは神楽のメニューを考えよるいうから!?」
葵のいう通り、厨房にでしゃばった僕が海咲さんと料理勝負なんてありえない話だ。僕はあくまで海咲さんの料理を邪魔しない程度の・・・そのつもりだったのだが。
『なんか負けたくない・・・!』
初めて自主的に料理を始めたのは小学生、卵をうまく割るのに夢中だった頃だ。要するに、卵焼きや目玉焼き、それからウインナーやベーコンを焼くなどとにかく化学実験の初歩の初歩を観察するのに夢中、そんな感覚だった。
それから中学に上がると、だしや調味料を駆使し始めるようになった。よく手を出していたのは葉野菜を中心とした生地少なめのお好み焼きや親子丼やシチュー、カレーといったお手軽料理である。それが高校生になると、ハンバーグを焼くのにフライパンだけではなくオーブンを使ったり、キッシュ、アラビアータ、そうして卒業する頃にはパンを焼き、ホワイトペッパーとブラックペッパーを使い分け10数種類のスパイスの常備は当たり前、複数の野菜で盛りつけたサラダに自家製のドレッシング、例えばイワシで作ったものだとか、イタリアンパセリや紫蘇をプランターで育てたり、なるべく外へ足を運ばなくて済むように自宅で食を充実させるべく凝るようになっていった。
「お手柔らかに」
「お手柔らかに」
しかし自分はあくまで素人、果たして兼業とはいえ普段から料理屋を営んでいる海咲に勝てるなどと驕る気は無かった。
「ノーフォークに戻った・・・?」
「1日で往復って冗談、だよな」
「そんな予定を入れるのは現実的に不可能ではないでしょうか」
「でもリアムは自分の力を見せつけるような嘘は言わないよね?」
「キャシーのいう通り嘘ついてるようには見えなかったな」
「にんじん?」
「にんじんってオレンジ色のやつだろ、コーン?」
「うん、でもにんじんってベッセルロッドにも売ってるんじゃ・・・」
「そうよね、私ここにくる前に市場にも寄ったけど普通に売ってるの見たわよ?」
一方その頃、料理を待つテーブルはリアムの突然の発言にざわついていた。
『本当に戻ったんだろうな』
また、リアムのステータスをみた事のあるゲイル、レイア、ティナの3人は特にその発言の真意を疑うでもなく、純粋に事実として受け取っていた。
「お待たせいたしました」
そんなこんな、ざわめいていたテーブルに──。
「こちら、魚と野菜の天ぷら盛り合わせになります。一緒にお出ししました海塩、もしくは天汁の方につけていただいてからお召し上がりください」
「て、天ぷら・・・!」
「ウチの店ではこのほかにもすき焼きやスッポンなどニホンならではの食材を使った料理も提供しておりますが、本日はリアムさんが海鮮料理をお造りになるということで、まずはこちらの料理で勝負させていただきました」
「勝負?」
海咲の出した料理は海老や鯛を使った天ぷらだった。一緒に紫蘇、ナス、ししとう、かぼちゃの天ぷらも盛られていた。
「空きっ腹にいきなり油モンは胃をびっくりさせてしまうでしょう。ご一緒にお出しした漁師の味噌汁とご飯、それと冷えたほうじ茶もどうぞお召し上がりください」
「うっまい! なんだコレ!?」
「サクッと、中はホクホクでフワフワだ」
「これ、塩もおいしかったけど、天汁につけると一緒に出されているお米に衣から溶け出した油と汁の縁味が染み込んでオツね・・・」
「ええ、うちではそのような丼も提供しております」
鈴屋の看板メニューは海鮮丼である。天丼はその派生。そして丼、活き魚を使った特殊な料理はベルから祖先が伝授してもらった秘伝であった。
「やっとお目にかかれた。俺は前は食べ損ねたからな〜。王都には無い料理だったし、話を聞いて羨ましいと思ってたんだ」
「前に食べた時より海老の歯切れがいい」
「新鮮ってこういうことなんだね。リアムが作った時は塩につけて食べたっけ?」
「うん」
「えっ・・・?」
・・・が、海咲の自信作を頬張る子供たちの中から、彼女自慢のレシピの虚を突く発言がノーフォーク組から飛び出した。
「葵」
「はい! なんでしょうお母様!」
「リアムさんは天ぷらを作ったことが?」
「天ぷら・・・昔そういえばご馳走になったことがあったっけ」
「そ、そう・・・」
「さぁ、お待たせしました! ブイヤベース、メインに鯛の切り身をしゃぶしゃぶしたものを並べました。脂の乗った鯛をあっさりと仕上げた身に、そこから溶け出した脂と絡みつく魚介のスープの旨味を感じてください」
「り、リアムさん。ブイヤベースというと、塩とオリーブオイルで魚介を煮た料理では?」
「はい、それをベースにトマト、香辛料等を加えました」
香りづけにサフラン、ローズマリーなどを加え、港においた釜で濾したトマトと海水を潮の香りの混じった空気で閉じ込めるように魚介をコトコト煮込んだガツンとくる海の香り。しかし、スープだけを浅く注いだ皿に昆布だしへサッと潜らせた一口サイズの鯛をメインに並べて皿に盛ることで料理全体を強烈な旨味を残したままあっさりと締めた・・・のだが。
「うーん、いや、これ失敗したかも」
「失敗?」
「こんなに美味しいのに?」
しかし、火入れの加減が問題なのか、半生より固めに仕上がっている鯛にスープの旨味が染み込んでおらずあと一歩足りない。
「白湯に近いだしであっさりと仕上げ繋げるが理想。だけど実際は海老や貝の旨味でつなげたと思っていた鯛の身がスープから浮いてる・・・フュメド・ポワソンなんかに潜らせた方がいいのか・・・これは身を別に取り出して絞ったレモンジュースを少しだけ垂らすといいかも」
「あっ、さっぱりしていい感じ」
「でもこうなるともはや別の料理。鯛しゃぶと魚介のスープ。やっぱりスープに合わせるなら一緒に煮込んだ魚介だった」
「その一緒に煮込んだ魚はないの?」
「待ってね・・・はい、魚介はこっちのお皿に取り出してあるよ。ルイユ、ニンニク、クルトンも多めに用意したのからお好みで」
「お、大盛りの貝、海老、魚だ!」
「どうぞ、大皿からみんなで分けて食べてね」
こん子、言いよる。リアムさんが生まれる何年も前からこの厨房に立ってきた女将の面子を潰さんよう、あと一歩、美味しいけど何かが足りないそんな料理を出した。それでも皆さん完食されて、食材を無駄にはしなかった。
「流石は港町の料理人。結構なお手前でした」
「いえ、私もまだまだ。どうぞ後学のために私にも手伝わせてください」
実に謙虚。しかし、このプレッシャーの中で忘れない探究心とそれを貫くおおらかさ。それでいて、誰かに食べてもらうことを楽しみにしている純粋さ。気立てよし、裁量よし、器量よし、う、ウチの社員として欲しい。ああ、娘たちがあと10と少し若ければ、いやでもそれは遠回しに私があと10と・・・なんばいわせっと!
「ふぅ、お腹いっぱいになっ」
「次の料理を持ってきましたー!」
「次の料理?」
「こちら、アクアパッツァになります」
「アクアパツア?」
「続けて、ペスカトーレ、ボンゴレ・ビアンコ、プッタネスカ」
「ぱ、パスタだけで3種類・・・」
「鯖とイワシの味噌煮、アジフライ、イカ大根」
「ちょっと待って、こんな短時間で何品出す気!?」
「先ほど言った通り、仕込みはしてきたので。更に白身魚のヴァプール、ブイヤベースをソースに見立てた失敗から立ち戻りました」
「こちらも、ソースと火入れをコンセプトに魚の揚げ物を甘酢の餡に絡め華風に仕上げたものになります」
「おぉ、み、海咲の料理人魂にも火がついたばいッ!」
「更に続けまして、シーフードピザです。食欲増進のため、上からアイヨリソースをかけてあります」
「お、俺たちを食い倒れさせる気か・・・」
と、いいつつ子供たちの手は止まらない。昼間にスクールで余程、体を動かしたり頭を使ってきたのだろう。
「リアムさん、そちらの中くらいの皿に盛り付けられたお料理は?」
「後で味見するための保存用です」
「は、はぁ」
一方、厨房では次々に仕上がる料理が大きい皿と中くらいの皿にそれぞれ2つずつ盛り付けられ、大きい皿の料理のみがテーブルに配膳される。残った方は味見のためと亜空間に次々閉まっていくが、とても一人で食べきれる量ではない。因みに、デザートは雪のように削り出した氷の上に甘いシロップをかけたかき氷というものだった。ベリーやマンゴーで色付けされていて、色味も鮮やか、かつ、清涼感のある品だった。
「ごちそうさまでした!」
一通りの品目が出揃い、皆、見事に完食した。こうも見事に空き皿が流し台に積み上げられると、作り甲斐もあったというものだ。
「みんな立ち上がるのも辛そう。ゲートで送るよ」
「た、頼む」
「クロカさん、帰りますよ」
「もういっぽん・・・」
「つ、潰れてるのにまだ酒を」
「それも杯じゃなくて本・・・」
そして、この光景を通して想像できる。守られるべき境界線を超えて破ってでも作り出した、とある新しい体験のことを──。
「きた! きたわよ! さぁ、ご飯にしましょ!」
「珍しい魚や貝が山盛りだ!」
「な、なにこれ! おいし!」
「だな! それにこの黄色のソースをつけて食べるとたまらん!」
「それはルイユって言うんですって。ジャガイモ、卵黄、ニンニク、唐辛子、油・・・あら、このレシピだったらウチでも作れそう」
「ぜひ作ってくれ! こいつはパンにも合うぞ〜!」
「ええ、そうね・・・ねぇウィル、こっちのパスタも絶品!」
「うっまいなぁ!」
本当、作り甲斐があった。
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「ここは我の縄張りである。友から託された家族と領域。何人たりとも害することは許さん」
「家族か・・・なぁ見ているかリレ。あれが竜、君が見たがっていた宇宙最強の生物だ」
相手に護るものがあろうと関係ないさ。僕は風の精霊王ヴァーチェのように世界を旅する。だが、見聞を広げるだけでそのために害することはない。図会を完成させるため、対象が私の実力を超えない限り観察に徹する・・・君に託された称号楽曲に誓って。




