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アナザーワールド 〜My growth start beating again in the world of second life〜  作者: Blackliszt
第2部 ~スクールと仲間~

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21 迷走の入学式 後半

 会場全体が静まり返っていた ──・・・。


『あ゛あぁぁぁあ ──・・・!やらかしたッ!』


 その会場の反応に、思わず頭を抱えたくなる。・・・・・・しかし、それを行動に移すことはできない。


── 静寂が続く入学式の会場。


『元々文章を考えてもらってましたー!・・・なんて勘違いしてくれないかな・・・・・・いや、しないか・・・。司会の人が急遽変更になったって説明しちゃってるもんな・・・』


 とっさに考えつく希望が片っ端から潰されていく。


『ああ、もう本当どうしよう、この空気。穴があったら入りたい!そしたらその穴の中で素敵な引きこもりライフを送るんだ〜』


 色々とダメになりつつあるリアム。もう『ダッシュして逃げるのが一番の正解なのでは?』とこの場から逃げ出すことまで考えてしまう・・・・・・


 しかし ──


「パチ、パチ、パチ」


 どこかからか誰かの拍手する音が聞こえる。

 僕と会場の人々は、その拍手の音がする方へと一斉に注目する。


── すると、そこには入学式の開会宣言をした荘厳な身なりのおじさんが両手を交差させるように手を叩いて拍手をしていた。


 そして、それを皮切りに会場からちらほら、まばらな拍手がなり始める。どうやら続いて拍手をしてくれたのは、開会宣言おじさんの隣にいた学長先生、おじさんを挟んでその隣に座るこれまた30歳くらいの見知らぬおじさん、そして母さん、カリナ姉さん、後から会場に合流した父さんのようだ。


 まばらな拍手がなる会場。そして、その拍手の音は徐々に大きくなっていく。徐々に増える拍手に、会場のボルテージはやがて最高潮となる。「いいぞーッ」というような、歓声や指笛も拍手に混じって聞こえてきた。

 先ほどまで不安に襲われていた僕には、その次第に大きくなる拍手に何か込み上げてくるものを感じる。それが安心か嬉しさなのか ──・・・わからない。


 とりあえず、拍手がなり終わらないうちに、僕は壇上で一礼して、嬉しさ半分、恥ずかしさ半分にその場を退散する。



▽ ▽ ▽ ▽


 僕が席に着き、やがて拍手が鳴り止むと、司会進行のアナウンスが流れる。


「えーっ、それでは。次は来賓を代表して、ノーフォーク領領主であり、このノーフォーク公立学校の運営をされている公爵、ブラームス・テラ・ノーフォーク様に、お言葉を頂戴したいと存します。それでは、ブラームス様、よろしくお願いいたします」


 すると、来賓席の中央に座っていたあの、荘厳な身なりの開会宣言おじさんが立ち上がった。


『やっぱりあの人が公爵様だったのか・・・・・・』


 なんとなく察しはついていた。開会宣言を学長先生ではなく、あのおじさんが行ったわけだし、さっきの代表挨拶の時の僕への拍手も一番にしてくれたのだ。ああいう雰囲気の中で、一番上の人間を差し置いて、下の誰かが行動するのは基本控えるべき行動だろう。


「新入生諸君、本日は入学おめでとう。私はこのノーフォークを治めるブラームス・テラ・ノーフォークである。・・・」


 壇上に上がり、祝いの言葉と自己紹介から入る公爵閣下。その後もありがたーいお話が続いていく。中には、来賓紹介も含まれており、どうやら公爵様の隣に座っていた拍手おじさんが、隣の領領主アルファード・ヴァン・スプリングフィールドだったようだ。そして ──


「今年の新入生も、希望とやる気に満ち溢れた聡明な顔をしておる。どの子も、それぞれが自分の良い所を己で理解し、至らぬ部分は諦めず努力することの大切さを知っている、そんな優秀な自分を誇ることのできる子になって欲しいと心から願っている。・・・・・・まあ、今回は優秀すぎる特殊な例も存在する様だが・・・」


 そんなことを僕を一瞥して言う公爵に、会場から笑いが起こる。頼むからあまり(なじ)らないでくれ・・・・・・。


「そして、保護者諸君もよく、ここまで彼らを育ててくれた。諸君らの慶福する気持ちは、私も一人の親として共感する。実は、私の娘も今年入学するこの子らと同じ年齢なのだ。つまり、私も立場や地位というものがなければ、諸君らと同じ一人の人の親である。今日は公爵として、そして一人の親として、新入生諸君と貴君らに祝辞を送ることとしよう・・・・・・それでは、諸君らの未来の繁栄と本日の門出を祝って・・・・・・」


 祝辞も最後に差し掛かっていた頃、公爵が懐から一本の杖を取り出す。


未来への旅立ち(ブレッシング)()その祝福(フューチャー)


 杖の先から温かい光が溢れ、会場全体を包み込む。降り注ぐ光に、会場全体からは感嘆の声が漏れている。── しかし・・・どうやらこれも、精霊関係の儀式の一種だったようだ。


「ははは・・・」


 降り注ぐ光は、僕を避けるように落ちていく。そしてその原因は、もうすでに目星がついている。

 

 僕はその間、苦笑いを浮かべながら周りの奇異の目をやり過ごした。

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