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アナザーワールド 〜My growth start beating again in the world of second life〜  作者: Blackliszt
第3部 〜ダンジョン ”テール” 攻略〜

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212 父との衝突

「さて。お前のことだから、なにか初っ端から仕掛けてくると思っていたんだが・・・」

「・・・・・・」

「なぜ仕掛けてこなかった・・・?」


 決闘開始直後から、いつも通り平静を装ったようで実は全開でピリピリの緊張感を張り巡らせていたウィルはとても不満げに問いかける。


「なぜって・・・親子だし・・・」


 親子。その関係がリアムの闘争心を軟化させる。


「じゃあお前はさ・・・家族でもそれが親だったとしてもずっと、自分を殺そうとしている相手に傷つけられながらも苦しめられながらも同じことが言えるのか?」

「・・・それは」


 答えられない。だってウィルはそんなことを本気でする人間じゃないと知っているから。


「なあリアム・・・たまに理性が飛んじまってる瞬間、心当たりないか?」


 ・・・ある。言われてみれば、振り返ってみれば反省してみればそう思ったことも、思うこともよくある。


「俺はあるね。まあ、良くも悪くもこれが大きな力を持つ者の定め・・・助けてくれることもあれば、時に牙をむく」

「・・・父さんでも?」

「なかなか高慢な言い方だな・・・お前は俺の子なんだぜ? お前がそうなら俺もそうだろ・・・たしかにお前は強いがその強さの一部だったとしても、きっと俺の力もアイナの血もそこに混じってる」


 ウィルが喋りながら近づいてくる。そしてリアムの胸のあたりを指差し、そこに手を置く。


「甘い」

「えっ」


 リアムの胸に当てられたウィルの手に凄まじい魔力が集中し、途端ものすごい勢いで後ろに──


『マズイッ! 今すぐ態勢を・・・』


 ほぼノーモーションからの発勁。だがそのほとんどが魔力により補助された衝撃だったためにリアムにダメージはなかった。ただ──


「ブラスト!」

「追いついた!」

「ゲート!」

 

 空中で急停止したリアムの正面から剣を構えて突っ込んできたウィル・・・もう戦闘は始まっている──!


「空・・・うひょーたっけ〜」


 ウィルがリアムが咄嗟に出現させたゲートによって、約4000mほどの上空へと放り出される。


『後ろに牽制しつつ死角からの俺の攻撃を絞る・・・俺がお前を飛ばしたスピードに追いつけないと、見くびってはいないらしい』


 とりあえずあのスピードラインは警戒している。ウィルは先ほどの一瞬の駆け引きからそこまでの情報を分析して頭にストックする。とはいえ──


「いい景色だ」


 山頂よりかは下であろう。ただあの山をこんなに遠く、高くから見ることなど滅多にないことだ。


「ロック」


 だから、いい景色ついでに──


「レイン!」


 数にして約30個ほど。礼代わりに魔法で岩を複数個出現させて、ただ下に落とす。


「はぁ・・・咄嗟で思わず上に・・・」


 一方、ウィルの攻撃をゲートで躱したリアムは真上を見上げる。


『そういえば・・・父さんの魔法って』


 そしてふと思う。そういえば自分は、ウィルの使える魔法の属性も、練度もよくは知らない。もしあの高さから落ちてくるのに対応できる魔法を使えなければアウトだが。


「点・・・岩?」


 勝ったか? と思った瞬間──とても高く、しかし急に出現した無数の点。サッと魔眼を発動させて見れば、それが岩だということがわか・・・


「ゲート!」


 自分の上空に、傘になるよう大きめのゲートを出現させる。


「地震が・・・!」


 しかしゲートに入ったのは精々5〜6個の岩。残り周りに落ちた岩がその衝撃で、なかなかの揺れを起こす。


「サンド」

「岩が砂に・・・!」

「ウィンド」


 百メートル上空から落とした岩を砂に変える高度なテクニックを粛々と・・・


「砂が──!」

「いい目眩しだろ?」

「・・・後ろ!」


 更にクッションの役割を果たした砂が、同様に少しずれた落下地点から吹く強烈な風によって飛ばされて、リアムを襲う。


「ウェーブ!」

「いい勘してるな」

「・・・父さんが喋ったからだよ」

「あ、そっか」


「ヤバッ。ミスった」と、剣を避けられたウィルがため息を吐く。先ほどまで高度4000mからの自由落下をしてきた人間の発言と態度だとは思えない呑気さだ。


「まあ魔法オンリーだとこんなところだな・・・それより」


 使用した水魔法によって大気中の砂が洗われて、徐々に目に砂が入った痛みもとれ視界が開ける。


「なあ、こっちでも勝負・・・しようぜ?」


 そして視界が戻ってリアムが見たのは──


「俺が剣狼と呼ばれる所以を教えてやるからさ」


 一本の短い剣、ダガーを投げては遊ばせるウィルの姿。


「クロー」


 ──キィン!


「痕跡」


 スカッ──


狼爪ロウソウ!」

「クッ──!」


 武器の大きさは関係ない。今この領域で一番強い要素は速さ。

 

「誘ってる・・・」

「そうだ。わかってるんならお前からも仕掛けて・・・」


 飛んだり跳ねたり、隙がありそうでその動きがしっかりと次の攻撃につながっている。


「こい!」


 ──ギィィン!!!


「・・・なぜ仕掛けてこない・・・まだ関係に拘っているのか?」


 でもいくらそんな煽りをされたってボクは・・・


「俺たちは今親子じゃない。1人の冒険者として互いに対峙している」

「・・・──!!!」


 しかし──


『今・・・父さんはなんて言った?』


 今のウィルの一言が、リアムの中にあるスイッチを押してしまう。


「なんで・・・」


 彼にとってその一言は・・・

 

「親子じゃないなんて・・・言わないでよ」


 その一言が──


「・・・・・・」


 たまらなく、嫌だった。


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