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アナザーワールド 〜My growth start beating again in the world of second life〜  作者: Blackliszt
第3部 〜ダンジョン ”テール” 攻略〜

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210 誇り高き愛の戦い

「久しぶりだから余計しみるわね・・・けどこれが一番即効なのよね」


 噛み付かれた跡に、直接ポーションをかけて治すリゲス。


「・・・本当。あの子って罪作りよね」


 また、彼は空になったポーションの小瓶をしまい直すと、吹っ切れてしまったアルフレッドを見て再びため息を吐く。


『あなたもいつまでもウジウジしてられないわよ・・・ウィル』


 ・・・または、同じパーティーの仲間を思って。


「おいティナ・・・リゲスさんの動きを止めろ。そしたらボクが必ず、勝利を」

「・・・命令はダメ。私に命令できるのはリアムだけ」

「・・・すまん」


 一方、虚勢を張って迷いを吹き飛ばしたアルフレッドはティナに怒られて彼女に謝る。さっきの勢いは何処へやら。


「けど・・・」


 しかし──


「提案なら聞く・・・私も勝ちたい」


 ティナもアルフレッドと気持ちは同じ。ただアルフレッドと違って、何処へ行こうとも自分はリアムに着いていく所存なのだが。


「そうか!・・・ならば」


 アルフレッドがコソコソとティナに作戦を伝える。正直言ってこの成功確率は5分5分。また非常にズルい・・・。

 ただ──


「わかった・・・それがイチバン・・・かも」


 現状彼らにとっては一番勝率が高かった。今優先すべきは自分の中のプライドではなく、チームの勝利だ。だから──


「いくぞ! フラッシュボム!」


 この一回に、賭ける。


「また同じ手・・・! だけど──」


 リゲスが構える。実は治す必要もない傷跡を回復したりと彼らにはわざと考える時間を与えたのだが、また同じ手で来るとは──


「あーんどダストデビル!」

「・・・! 魔法の同時行使!」


とも一瞬思ったのだが、やはりさっきとは一工夫違った方法で攻めてきた。光と風の併用で視覚と同時に風で音と感覚の遮断にアルフレッドが打って出てきたのだ。

 ならば──


魔法鎧マジック・アーマー


 リゲスは魔法鎧の魔法を唱え全身に魔力で生み出した鎧を武装する。


「この鎧はどんな物理攻撃でも、魔法攻撃をも無効化する」


 これが彼がパーティーで壁役のタンクを務める本当の実力。この鎧は自身の防御力と魔力量に依存するモノで、元々打たれ強い彼の力を最大限に伸ばしてパーティーを敵から守る守護神へと──


「意味ない」


 途端──


「キャッ!」


 鎧を着たリゲスがなにかに足をすくわれ、その場に転倒する。


「ちょっと何コレ・・・ロープ!?」


 そして刹那。か弱い女性のような声を上げて転倒した彼の全身に巻きついたモノは──


「えへん・・・!」


 周りを竜巻のように疾走したティナがポーチから取り出した、長くて頑丈な一本のロープだった。


「殴ってくると思って身を固めたのがあだに・・・」


 リゲスが必死になってロープを力づくにでも引きちぎろうとする。だが──


「普通のロープじゃないわね・・・これ・・・!」

「それはこの前の戦いでもらったキマイラのたてがみで作った」

 

 怪物の吐く高温の炎や鋭い爪でも簡単には傷つかないキマイラのたてがみ。つまりライオン部分のたてがみの毛で束ね作られたというそのロープは異常に頑丈で、圧倒的防御力を誇る怪力のリゲスの力でも、ひきちぎれることはなかった。


「やったぞ・・・これでボクたちの勝ちだ・・・!」


 すると、彼はただ拘束が成功しただけで勝ったも同然だと慢心する。一体彼のその自信はどこから──


拷問トゥー・トゥルー


 アルフレッドが、リゲスの頭に向けて手をかざし魔法鍵を唱える。


「ウ・・・おォぉぉぉぉフゥゥゥヴ!」


 途端、何かを堪えるように悶えるリゲス。が──


「こ、これは・・・無属性の精神干渉系魔法・・・!? どうしてあなたがこんな秘匿中の秘技を!!!」

「忘れるなよ・・・ボクはこれでも貴族の子息。スプリングフィールド家の次男なんだ」


 一瞬のうちに己の中の攻防を安定化させて均衡化してしまったリゲス。


「それにしても精神干渉系魔法を知ってるとは・・・」

「昔、一度同じような魔法をかけられたことがあってね・・・」

「マジか・・・」


 この魔法は国境を管理するスプリングフィールド家が古くから積み上げ研鑽してきたもの。他にも似たような魔法はあるが、やはり国に管理されるレベルの魔法で、使い手は少ない。


「貴族家の秘伝を持ち出すなんて・・・やっぱりなかなかの忠誠心ね」

「忠誠心だと?」

「そうよ・・・あなたの、リアムちゃんへの忠愛・・・」

「リアムに・・・このボクが・・・?」


 だがそんな秘技中の秘技をこの戦いに持ち出したアルフレッドに忠誠心という言葉を使ったリゲス。


「悪いがこれでもボクは貴族だ・・・そしてこんなことは言いたくはないがあいつは平民で・・・」


 しかしアルフレッドは動じない。


「友情故身分的に下の者に対して対等にあろうと努力することはあっても、忠誠などするはずもない」

「・・・そう」


 何よりその昔、そんなリアムに腹を立ててこの魔法を使い返り討ちにあったあの日が懐かしい。

 あの愚かな行動。しかしそれが彼と友情を結ぶきっかけとなった。


「この鎧・・・ただ分厚いんじゃなくて何枚も薄い魔力の膜を連続的に生み出し重ねて作られているのか」

「あら・・・気づいちゃったの? 防御力は鍛えられるけど・・・魔力に依存する魔法防御力はどうにもならないからね・・・」


 ──5分。10の攻撃に10耐えられる壁を用意するのではなく、1の壁を5用意することで威力を殺し魔力の無駄遣いを減らす。魔力温存・・・それがリゲスの戦闘スタイルである。


「こう見えても私、堅実なのよ? で、自慢じゃないけど我慢強さが私の1番の取り柄なの・・・」


 一方この鎧の欠点は敵の攻撃の威力を見誤ってしまった時の反動が大きいこと。その時は己のバイタリティを奮い立たせることで我慢し、後にポーションなどの回復薬でリカバリーすることで難を凌ぐ。 


「クッ! まだ耐えるのか・・・なんて頑強な精神力 !」


 しかしトゥー・トゥルーをかけ始めて既に10分。互いに魔力を放出しぶつけ続ける我慢状態が続く。


「──だが!」

「獣化・肩叩き」


 魔法がダメなら物理と、アルフレッドに促されリゲスの鎧ごとを叩くティナの獣化状態肩叩きが炸裂する。


「・・・グフハッ! 強い! もっと優しく! いくら私でも骨まで砕けちゃうわよそんな肩叩き!」

「・・・ごめんなさい」


 これにはリゲスもたまらず不満を吹き出し、あまりの衝撃に敵であるティナに謝らせてしまう始末。


「はぁ・・・まったくもう。敵の私にパンチ・キックじゃなくて肩叩きって・・・あなたたちも相当しょうがないのね」


 しかし一転、肩叩きが効いたのか急にしんみりとした雰囲気をリゲスが醸し出す。


「うちのパーティーにはね・・・あなたたちみたいに如何しようも無い変人ばっかり。みんな我が強い人間ばっかりなのよ」

「・・・いきなりなにを」


 唐突なリゲスの変わりように、思わず話の続きを聞いてしまうアルフレッド。


「前衛にはのほほんとお気楽でいつの間にかフラっといなくなったと思えば酒場か木陰で昼寝してるリーダーに、戦闘スタイルに似合わずわがままで、プライベートでは愚直なほど真っ直ぐな直情型の魔法剣士・・・」


 まさかここまで来てこの拘束から脱出する術があるというのか・・・しかしそれにしては雰囲気が──


「そして・・・後衛にはある男が好きで好きでたまらなくて男を嫉妬の炎で真っ黒焦げにしちゃうくらい一途な精霊魔法使いと、過去の遺物のせいで自分に医者が必要なほどに病んでいたくせに周りには気を使わせまいと痩せ我慢する困った回復魔術師がいて・・・」

「結構その・・・闇が深いのだな」

「ホントよ! 常識人の私がいなかったら今頃どうなっていたことか・・・!」


 アルフレッドの共感に、まったくだとプンプンになって頬を膨らませるリゲス。


「・・・・・・」


 だがアルフレッドはこれ以上踏み込むことができないでいた。とてもではないがその・・・リゲスも大概というか・・・一般的な普通の常識人とは言い難いゲフンゲフン。


「そんな彼らを脅威から守り、耐え忍んでチャンスを作るのが私の役目・・・ホント損な役回り・・・世話の焼ける仲間たちよ」


 しかしここからはアルフレッドもティナも、とても良く感情を移入することができた。


「だから・・・私は最後の最後まで抗わなくちゃいけない・・・例えそれが必ず・・敗北・・・する戦いだとわかって・・・いて・・・も・・・仲間が必ず・・・勝ってくれ・・・る・・と・・・信じ・・・」


 やがて憔悴していくリゲス。その最後まで抗い続ける覚悟も、志もボクたちには・・・よく──


「て・・・」


 戦闘中の事である。その言葉を最後にリゲスが目をつぶったまま、ピクリとも動かなくなる。


「・・・・・・」

「・・・支配。完了」 


 アルフレッドの精神支配が完了した。


「さあ命令だ。我が魔力に支配されし戦士よ。其方は最後まで己の信念を貫いた立派な戦士であった」


 アルフレッドが、リゲスに命令をするための口上を述べる。


「だが其方は敗北した。その事実を素直に認めよ。我が許す・・・最後まで抗った敬意を誇って応えるがよい」


 周りは思いの外に静かで閑散としていた。


「さあ・・・敗北の2文字を言葉にしろ」


 アルフレッドの言葉の一つ一つが重く、リゲスに向けて発せられる。


「私の・・・」


 だが、目が虚ろで確実に正常ではないリゲスがその言葉を口にしようとした瞬間──!


「待て──! やはりこれ以上何も口にするな!」

「・・・アルフレッド?」

「無理だ・・・彼にこれ以上を言わせることはボクにはできない」


 突然に、リゲスへの命令を中止するアルフレッド。


「それに・・・既にリゲスさんは戦闘不能だ」


 最後まで己の魔力を出し尽くして戦ったリゲス。

 その彼が魔力を失って意識も奪われた。

 結果──


「・・・・・・」


 死んではいない。ただし精神支配の解除後も、リゲスは沈黙したままに動かない。


「ボクたちの勝ちだ」

「・・・はい」


 アルフレッド&ティナVSリゲス。勝者 ──アルフレッド&ティナ。


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