157 呼吸
「みんな!」
テールのマザーポイント、リヴァイブの門・生還の間がある宮の前。
「ママ!パパ!」
「よかったエリシア。無事で」
「一先ず・・・か」
「おぉぉぉミリアぁぁ!」
「ママー!」
「ミリアも、無事でよかったわ」
「・・・・・・」
既に建物から出てきてぼうっとつっ立っていた子供達が走る。
「母さん!?」
「あぁぁぁ! よかった無事でレイアぁぁぁあ!」
「父さん?」
「ウォルターラナも、無事だね?」
「おふくろにオヤジ・・・やっぱり帰ってきてたのか」
そして──
「アルフレッドにフラジール。2人とも無事でよかったよ」
「パトリックさん」
「・・・」
子供達の親、保護者たちもまた、無事であった大切な子供たちをそれぞれの形で迎える。
「ティナちゃん!」
「フグ・・・」
「無事だったかティナちゃん」
「おかあさん。おとうさん」
しかし──
「ところでティナちゃん。リアムはどこだ・・・」
「り・・・」
ほとんど全員が帰ってきた中で──
「なぁみんな! リアムはどこだ?」
「「・・・」」
──帰らぬ者が一人。
「クソッ!モグリ!」
「モグッ!」
すると突然、ウィルは彼の契約精霊であるモグリを呼び出す。そして──
「ウィル?」
「アイナは先にコンテスト会場に戻っていてくれ。もしかすると映像が戻るかもしれねぇ」
「え、ええ」
アイナには会場に戻っての待機を。
「おいジジイ!」
「なんだ?」
「悪いがジジイの私兵のうち2人ほどここで待機させておいてくれないか?」
また、ブラームスには私兵の貸出とこの場での待機を願いでる。
「わかった・・・だがお前は」
「俺はダメ元だが、今からエリアCのセーフポイントまで行ってくる」
そして彼は手短に、自分のこれからの行動を伝えると──
「ふぅ・・・」
深く、息を吐いて一呼吸する。
「はぁ・・・」
同時に、ウィルの中に存在する魔力が急激に膨れ上がる。
「す、すごい・・・」
この場にいる子供、彼を知らぬ誰もが全力のリアムほどではないものの、それでも尋常じゃない魔力の膨れ上がりに驚愕する。そして──
「・・・消えた」
気が付いた時にはもう、彼は消えていた。
「剣狼の2つ名は健在か」
残像すら残さなかった。
「チッたり前だ!」
唯一、この中で彼の動きを目で追えていたカミラが、ブラームスの吐露に舌打ちする。
「あいつはここにいる誰よりも、強いんだからな」
彼女の視線は既に街の先、街道の更に先へと向けられていた。




