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血ぃすーたろかー7回目

 エルフの少女をメメと言うそうだ。

 俺は取り敢えず、仮想現実で名前を知った全ての人間に名前をつけておく。ゲイリーは学校の先生、教授と翻訳されていたから大学的な場所の教師だろう。

 で、メメはエルフでゲイリーの生徒。もう一人の盗撮女はゲイリーのお手伝いをしている生徒。なんつーんだっけ?ああ言うの。まぁ、良いか。


「此処は何処ですか?」

「此処は……此処は、この村には名前は付いていないです」


 メメがビクビクしながら答える。ノンナは食うだけ食ったら瞑想するとか言ってそのまま居眠りしている。まぁ、起きてても五月蝿いので脇で寝ている。ヘルシングは俺の隣で拡張現実のキーボードでカタカタやってる。いや、カタカタ音はしてないんだけどね。

 個人的に、キーボードの感触は硬い方が好きなのでこの空中に表示されるホログラムキーボードは嫌いだ。


「此処の国はニャポンで良いですか?」

「此処はニャポンであっています」

「何故、ニャポンなのでしょうか?誰がニャポンと名づけましたか?」

「あ~え~っと……」


 メメが困ったようにゲイリーを見る。ハハッ!ゲイリー!


「わ、私が変わって説明します!」


 ゲイリーがささっと前に出て来た。


「ニャポンの由来は不明ですが、遥か古来よりニャポンと言われていたのです」


 不明っと……


「彼等は何故耳が長い?何故ゲイリーは耳が短い」

「彼等は不明だからです」


 不明、全てエルフと訳すようにデータを入れておこう。


「我々は、3千年前の人間です。

 この国は日本と言われる国でした。首都は東京と呼ばれる場所です」


 ノートを広げ、拡張現実で日本地図を広げてすばやくそれを書き移す。よし。


「ここ、日本。

 この村がある場所、多分、此処。東京都は此処」


 ヘルシングに見せると大丈夫ですわと頷いていた。

 うむ、拡張現実バンザイ。


「こ、これは凄い……

 学校にしか置いていない地図の筈なのに……」


 ゲイリーは地図をマジマジと見詰めてから溜息を吐いた。

 取り敢えず、首都はどこぞ?と尋ねると、中部、つまり愛知県に移っていた。理由を聞くとこの研究所より北は凄まじい数の魔物が住んでいるらしく、亜人と呼ばれる所謂、人間に近いが古来より人間とされる者寄りであるが彼等とも違う存在が少数住んでいるそうだ。

 エルフも亜人の一種だとか。

 北海道はどうなっているのか?と尋ねると、北海道はエッゾと言うらしく調査団は向かったが返って来たことないとか。試される大地とか言うキャッチフレーズを掲げているが、試されすぎるだろうが北海道。いや、エッゾ……


「北海道はとんでもない事に成ってるな」

「まぁ、彼処は第三次大戦に合わせて道全体を要塞化計画が決定されて沖縄、対馬、北海道の三箇所は優先的に防備が固める防衛方針が打ち出されましたから」


 パネェっすわ。


「あ、それ聞いたこと有ります。

 確か、自動プログラムで動く機械歩兵を100万台投入し、戦力増強と兵力の均一化を図るとか」


 図るとかって……パネェ。


「ノンナ、起きろ」


 脇でイビキかいてるノンナの顔をペチペチと叩く。


「ぅん……」


 俺の手をペシンと払い除けられた。起きろっツーの!


「起きろ、アホ」

「五月蝿いなぁ……」


 ノンナが目を擦りながら起き上がる。


「何によ」

「2290年の北海道、対馬、沖縄について教えろ」

「ほっかいどー?ああ、あの要塞ね!」


 どの要塞かは知らんが、その要塞だ。


「日本四大要塞の内の一つがほっかいどーよ!」


 何それかっこ良い。

 対中国用に沖縄と対馬を、対ロシア用に北海道を要塞化しているらしい。じゃあ、残る一つは?って言うと放射能のせいで首都機能を移転させた愛知県らしい。確か、静岡にも浜岡原発あったよな?あれはどうなんだ?と聞くと首都移転に伴い停止させたらしい。

 流石に首都の隣に核爆弾は置けんよな。


「で、北海道は自動要塞化プログラムが施された工作機械と資材生成機材が動いている、と」

「そうよ!

 北海道に軍事AI武御雷が守護を司ってるわ!」

「……それでお前が冬眠する時、その北海道はどうなってた?」


 ノンナは暫く考えそれから、確かと口を開く。


「確か、ロシアと緊張状態に成ったから警戒を引き上げたわ!

 北海道司令部か首都の国防省から12時間以上一切の指示がないと第一級警戒態勢に移るわ!これを解くには国防省の発行する特殊なIFF装置を持って規定データを打ち込む必要があるわ!」

「あ~……

 最悪なパティーンを想定しなくちゃいけないパティーンですわ」


 パルパティーンですわ。


「つ、つまり?」

「エッゾに行くなら死ぬ気でゴー?」

「無理ね!」


 無理らしい。北海道は諦めろ。

 試される大地は試す大地に変わっているようだ。


「と、言うか北海道には機械歩兵、つまりサイボーグが大量に居るということで?」

「そうよ!

 日本軍が開発した最新鋭の89式戦闘機械歩兵よ!」


 装備は右腕部に内蔵式3連装のガトリング砲を持ち、高度な戦術AIを持っているのでゲームとかで見掛けるNPCレベルの戦闘が可能らしい。

 恐れを知らぬ上に強力で、更には数で押してくる。未来の戦争って奴はそういうものらしい。

 AIとセンサー類が入る胸部と頭部はライフル弾を1発食らった程度では倒せない。拳銃弾ならセンサー類を的確に狙っていかないと倒せないとか。日本軍兵士とも連携をとって戦えるように言語指示が可能になっているとか。

 スゲーな。応用すれば家庭用ロボットが出来るわけだ。アイロボットって映画みたいなもんか。人間用の武器兵器も使えるらしいし。


「そして、基地の保全管理は万全」

「ロボットが三千年も無人で動いてい居られるのは自己修復プログラムに基づいて武御雷が一括管理しているからよ!

 武御雷が今どうなってるのか分からないけれども、本来のプラグラムコードに沿って行動しているならこの三千年間ズッと第一級警戒態勢のままで北海道を守ってるわね!」


 パネェ。つーか、何でお前そんなに詳しいんだよ。


「お前、マジで何者だよ」

「私のお爺ちゃんが軍の最高司令官だったわ!

 パパは政治家やってた。私も将来はお爺ちゃんと一緒の軍人になるつもりだったけど、お爺ちゃんが私にあの研究室に連れて行って軍人になる為の一環だからって冬眠させられたのよ!」


 そこでノンナはハッと立ち上がり、騙された!と叫ぶ。え、今頃!?

 今の話するまで一ヶ月間ズッと何してたの君?つーか、何考えてたの君?


「お爺ちゃんに騙されたわ!」

「あ~……うん、そうだね。

 それについてはまた後で聞くから、今はちょっと座って落ち着いてろ」


 な?とお茶請けじゃないけど、お供え物の様に出されたリンゴをノンナの口に押し付けてからヘルシングの方を向き直る。

 お話どーぞ。


「我々が今掲げている目標は?」

「レーダー基地に行って衛星と通信」

「そう。

 そして、今の話を聞いた限り、対馬、沖縄、北海道に愛知が要塞化しているのでしょう?」

「ああ」

「だったら、一番近い愛知県の名古屋に行けば全ての条件をクリアー出来るのでは?

 それに、聞く所によると、北海道がその様子だと対馬や沖縄も相当な事でしょうね」


 それに、対馬はまだしも沖縄までどうやって行くんだよ。船だぞ、船。帆船で行くにしたって遠過ぎで何週間だろう?台風とか高波怖すぎだろ。まだ、北海道か対馬を船で行った方が良いよ。北海道は洞爺丸事故があるから青函トンネル使うって手もあるけど、そもそも、青函トンネルって潰れてそう。


「我々は此処に向かいたい」


 地図で愛知県の位置を指差すと今まで放置されていたゲイリーはハイハイと地図を見る。


「此処は帝都です。

 我々の学校も此処にあります」


 マジか。首都機能がこっちに移ってるからやっぱり此処が首都なのか。多分。


「貴方の学校はどうでも良いです。

 我々は此処に行きます」


 案内せよとゲイリーを見る。ゲイリーは勿論ですと頷いた。

 問題は、行程だ。ここから学校まではおおよそ一ヶ月近くかかる距離があるらしい。彼等は皆行脚で来たらしい。乗り物は残っていないのか?と尋ねると馬や馬車があるがゲイリーに割り当てられた資金ではここまで馬車で来る程の資金はないとのことだ。


「私、申し訳ありませんが名古屋まで歩くのは無理ですわよ?」


 ヘルシングが先に行っておきますが、と言う顔で告げるので俺もだと神妙な面持ちで頷いた。すると、ストーカーが研究所を探せば車やバイクが有るんじゃないか?と言い出した。

 そりゃ、いい考えだ。軍事施設でもあるから、連絡用の自動車か何が地下の倉庫に有るかもしれない。


「あの、それと出来れば我々の大学にも一度で良いので顔を見せて欲しいのです。

 顔を出して、学園長と会話をして欲しいのです」

「何故だ?」

「は、はい。

 私、学校ではニャポン民俗学を専攻しておりまして、現在の学園長はその、民俗学を含めてそういう文化系の学科に興味が無いようでして」


 それからゲイリーがこの村に来た理由も有史以来ズッと存在し、何者かが眠るであろうこの村に有る遺跡(研究所)を発掘して何か学園長が驚愕するものを持って来るから文化系学科を存続させて欲しいということらしい。

 で、その驚くべき物が俺達らしい。


「何だか、可哀想な方ですわね」

「お、おう。

 まぁ、その学園長に会うってだけなら良いか」


 ゲイリーに可哀想だから手伝ってやる事にした。

 序に言えば、この世界にも吸血鬼という概念が有るそうだが、存在しない化物ということらしい。所謂妖怪とか霊とかそう言うのは居ないらしい。非科学的な存在は居ないのだ。

 で、吸血鬼も十分非科学的だが俺達を吸血鬼と言うにはいささか吸血鬼分が足りないと思うよ。


「我々は血は吸わない」

「え、ええ、この地域の伝承では貴方達は吸血鬼と言う事になっているので、学園長には吸血鬼を見つけてくるという前提で話をしているので……

 ですが、吸血鬼の様な容姿、指先一つで魔物を一瞬で燃やす力を保持しており、更にはその凄まじい魔力量からしても吸血を行わなくても吸血鬼に近い存在かと……」


 チラッチラッと此方の顔色を窺うゲイリー教授。物凄く小心者だな。


「それで、出来れば吸血鬼らしく振る舞って欲しいのです」


 何を行っとるんだコイツは?


「つまり?」

「あ~……偉そうに?」


 偉そうって何だ?


「偉そうって?」

「一番簡単なのは此方が日本語のままで喋って行けば良いのでは?

 何故我々がお前等下等な連中の言葉を話せばならぬ?我々と同じ言語を話す権利をやるからお前等が我々と会話をせよ、と」


 ヘルシングの言葉に俺とストーカーがおぉ!と声を上げた。

 スゲーな、良い考えだな。


「なら、我々は我々の言葉しか話さない」

「わ、私は貴方方の言葉が分かりません」


 それは知っている。どーする?とヘルシングを見るとヘルシングは研究所においてあった小型端末に言語変換ソフトを組み込んで渡しては?と告げる。それを採用しよう。


「我々は、貴方に我々の言語を貴方の言語に変換する装置を差し上げます」

「ほ、本当ですか!?」

「嘘ではないです」


 取り敢えず、研究所に移動しようと言う話になった。俺達は村長に食事とりんごジュースの礼を言ってから研究所に移動する。

 メメと盗撮女、モラシーと言うらしい。其処に教授を加えた三人を連れて研究所に。研究所に入ろうとすると、警備ロボットがけたたましい警告音を鳴らし日本語、英語、ロシア語、中国語、朝鮮語を叫びながら3人に銃口を向けた。

 俺は彼等をハッキングして擬似IFFを与えることでロボットはクリアーしたが、大量のナノマシンを保有しているのでこれ以上先には入れないとロビーより先の扉が開かなかった。

 パネェ……

 もし、入る場合は部外者用の防護服を着せろと警告もされていたので、防護服を引っ張り出してきてそれを着せる。服に穴が開いていたのでガムテープで補強する。ゲイリーがこれを欲しいというのでクレクレとそんな穴の空いたボロなんぞじゃなくてもっと綺麗なのがあるからそれをやることにした。

 で、中を歩くのだ。取り敢えず、俺とヘルシングで班分けして俺がノンナの監視兼車探し、ヘルシングとストーカーで言語翻訳機制作である。


「え~っと、車を探すんだから、地下の駐車場だよな」

「更に言えばガレージね!

 軍のガレージならナノマシンで防護されるし部品の保管も完璧なはずよ!軍用規格のパッキングなら1万年の保管も出来るって話だから」

「軍はアホだから一万年も戦争する気だったのね!」


 アホはお前だ。1万年保管できるなら長く使えるかだろうが。


「取り敢えず、ガレージを開けるぞ」

「そーれ!」


 ノンナがガレージの開閉パネルにナノマシンを入れる。ガレージは途中まで開いたが何かが引っかかっているのかそれ以上は開かない。流石に3千年も無稼働だとこういう部分が壊れるのか。

 一応、中には入れるので二人で下を潜って入る。中には大きな六脚のクモが居た。


「何だこれ?」

「試作型の多脚式装甲車じゃない!」

「なにそれ!?

 超カッコいい!」

「な!」


 主砲に100mm短砲身レールガンを装備し、後部に完全武装の兵士を30人、一個小隊分載せられるそうだ。スゲーな。100mm短砲身レールガンってどんだけ強いの?って話だけど、取り敢えず、既存の兵器は大抵これで倒せるらしい。

 つまり、戦車要らず。軍事関係には詳しくないが2200年代では戦車は戦車、兵員輸送車と呼ばれる兵隊を乗せて戦車の後ろをくっついて行く乗り物は別々だったらしい。

 理由は簡単。戦車の火力に兵員輸送車を乗せるとアホみたいにでかくなるからだとか。現にアホみたいにデカイけどな

 で、デカイ割に主砲一個と機関銃数丁だけではどう考えても火力不足らしい。人の少ない日本政府はどんな土地でもそうは可能で時速70kmは確保出来る。


「まぁ、試作だけでそもそもそんなアホみたいな新兵器を作る金があるなら既にある兵器に金を回せば良いって話で試作機すら作られなかった話だけど……」


 ノンナが目の前の多脚装甲車を見上げる。あるよな。


「きっと、上は必要ないけど、下は必要だった訳だな」

「近くの工場と連携して作ったみたいね!

 ほら!」


 ノンナが脇にある周辺地図を指差した。どうやらパーツを持って来たらしい工場に印とルートが書いてある。取り敢えず、これを動かしてみるか。

 ノンナが周りのメンテナンスパーツを調べ、俺は中に入る。戦車の中に入るぜぇ~い。

************************************************

登場人物


・メメ

エルフの少女

ゲイリーゼミのゼミ生


・モラシー

ゲイリーゼミのゼミ生でありゲイリーの補佐をしている生徒

貧乏で家族が家族がいるらしい

北海道は試される大地

はっきり分かんだね……

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