血ぃすーたろかー6回目
で、翌朝。
因みにベッドはカプセルを使ってる。何故かって?寝心地良いし寒くないから。可動式のようで持ち運びも可能だからこれさえ有れば寝る場所は問題無いと思う。あと、三人が起きる一ヶ月の間、このカプセルの可能性を探っていたら、何とびっくり、シャワー機能もあった。シャワーというと語弊があるが、素っ裸か下着姿で中に入って居ると自浄作業が始まる。その際、中に人がいると、自動的にその人も洗う。寝てる間にこうやって洗われたりしたのだろうか?
で、濡れた下着とかは温風が来て乾かしてくれるのだ。まぁ、日本人的にはお風呂に浸かりたいってのがあるのだが、生憎、何処を探しても風呂釜は無かったので諦めている。
洗濯もカプセルの中に洗濯する服を入れておけば良い。まぁ、便利。ニートに最適、寝てればお風呂から何から全てしてくれる。
朝食を終えた俺達は再び昨日の様に外に出る。時間は10時頃だから調度良い時間だろう。で、外に出ると日光がヤバいレベルだった。
「この中を歩いて行ったら俺達は死ぬぞ」
「吸血鬼ではないけれど、吸血鬼の様に肌の弱いアルビノですもの」
俺はより唾の大きな帽子を造り、ストーカーとノンナはそれぞれ大きなフード付きジャケットのフードを、ヘルシングは大きな傘を差した。全員、長袖長ズボン。実に暑そうな格好をしているが、体内ナノマシンのお陰か快適に過ごせている。
また、護身用拳銃はノンナは撃っても当たらないので、代わりに使えそうな軍用の大型ハンマーを与え撃たれる前に殴り殺せと言っておいた。
ストーカーとヘルシングは一丁づつ、俺は二丁持つ。旦那だって二丁拳銃なんだ、俺だって出来らぁ!
まぁ、機能できたから出来るんだけどさ。
「じゃ、行くか」
「ええ、行きましょう」
研究所を出ると一人のエルフと見知らぬローブが立っていた。エルフの方は危険度低出たが、ローブは危険度高と出る。理由は大量のナノマシンを抱えているからだ。体内に、ではなく体外に、腰のかばんに大量のナノマシンと何やら薬物を大量に織り交ぜた物を持っているのだ。
ナノマシンで制御する毒ガス或いは爆弾である可能性が非常に高いと出ている。爆弾を大量に保有しているから危険度は高。エルフの方は長剣を一本腰に提げているから低であるとか。
《不明:驚嘆を表す声、噂、吸血鬼、不明驚嘆を表す声、最初、見た》
取り敢えず、拳銃を抜いてローブに向けておこう。ノンナも背負ってるスレッジハンマーを抜いて殴りかかろうとするので、襟首を掴んで止める。
コイツは猪武者か、全く。何処の島津だ。
「お前は出て行くんじゃないよ、全く。
お前が出ると100%話がややこしくなる。ストーカー、ヘルシング。ノンナが余分な事をしないようにしっかりと見ておけよ」
拳銃を抜き、ローブに向けつつエルフの方を見る。エルフはヒィッと小さく声を上げて震えていた。
「お前、学校、行く、奴」
俺が尋ねると、ローブが何か喚きだして近寄ろうとするので足元に弾丸を撃ち込む。
「怪しい、お前、動く、無い。
我々、お前、警戒、エルフ、我々、信じる」
周囲を見渡すと、ゴブリンと見知らぬ人間が此方の様子を伺っている。取り敢えず、ゴブリンには燃えよと睨み付け、人間の方にはもう一丁の拳銃を向けておく。
木々の合間に隠れていたゴブリンが突然燃え上がり、凄まじい悲鳴を上げて木々の中から飛び出て地面をのたうち回った。ヘルシングもこの周囲一帯を見渡すように見回してから指を鳴らした。すると、俺が燃やした以上のゴブリンが飛び出て燃え上がった。
そこまで行くと隠れていた人間は飛び出てくるし、エルフは小便を漏らしていた。
「エルフ、立つ。我々、お前、攻撃、無し。
人間、立つ。お前、怪しい。とても、怪しい。とても、とても、とても、怪しい」
《私、怪しい、無い。私、不明:人名の可能性アリ、学校、教授。
私、貴方達、興味、ある。敵対、無し。危険、無し。私、貴方達、たくさん、会話、望む》
「黙れ。我々、お前、用、無し。エルフ、用、有る」
飛び出して来た奴も確認するとこっちは火縄銃のような小銃で武装していると出たので危険度は中だ。飛び道具は危ないからね。
飛び出してきた奴にも銃を捨てるよう告げる。銃が通じるとは思わなかったので、武器と言うと飛び出して来た奴は身に着けているもの全てを捨てて、手を挙げた。
「お前、何故、隠れる。
嘘、言う。お前、燃える、OK」
俺の言葉に飛び出して来た奴がOKと叫んでから何やら早口で言い訳をまくし立てた。何言ってるのかよく分からんが、何やら強制連行だの命令だの逆らえないだのと単語が並んだ。
ヘルシングの方を向き直ると、今、解読してると虚空を指でツイツイやってる。拡張現実に出ているデータを選別して適語に訳しているんだろう。昨晩、ヘルシングが会話学習装置を作ろうと言っていたので多分、その試作データを使って文を作っているのだと思う。
1分程してから俺の方にデータが飛んできた。
《私は博士に単位を脅されて無理矢理来たのであって味方。
私には弟が2人、妹は1人で長女。私が死ぬと、妹達が貧困する。私は敵ではないので、味方。
私が隠れた理由は、貴方達を撮影してみるのであって、殺さない。
死にたくない、ごめんなさい、許して下さい、教授死ね》
どうやら、このローブに命令されて盗撮をしようとしていたっぽいな。
「中々良いんでね、その装置」
「私もそう思いますわ。
もう少しデータが集まれば自然な会話文が出来上がると思います」
「取り敢えず、教授とか言う奴の身包み剥いで武器とかを全部取ろう。危険度が高のままで警報が五月蝿い」
現在、俺の視覚は教授を赤く縁取られて危険と点滅し、耳元では危険を知らせるピピンピピンと言う電子音が響いている。
ヘルシングが翻訳機を使って教授に纏っている武装や服を全てその場に脱いで下着だけに成れと告げる。教授は素直に羽織ってるローブやかばんを脇に脱ぎ捨てた。
「あの本は何かしら?」
ヘルシングが教授が後生大事に抱えた本を念力めいたナノマシン操作で奪い取ると此方に飛ばしてきた。俺はそれを受け取り、パラパラと捲る。よく分からん英語と日本語の様な字が並んでおり解読は不可能だ。取り敢えず、危険性は無いので俺が没収しておく。
他にも安全そうな書物等は此方で回収し、剣だの訳の分からんナノマシン爆弾等は焼却処分。服も汚いので序に燃やしてやった。
《私、装備》
また、隠れていた奴、名前は知らないが性別は女だ。女の持っていた火縄銃の様な銃も回収して仕組みを調べると、何てことはない。火打ち石式ライフルに似た造りで、火打ち石の代わりにナノマシンが詰まった石をナノマシンが混じった可燃性の綿を包んだ油紙に同じようにナノマシンを含んだ鉱石を包んで詰めた物を筒の底に押し込み、其処に開いた穴に向かってライターのような回転する火打ち石を付けた物である。
試しに脇の木に撃ってみると反動は発射時の衝撃だけでほぼ狙った部分に当たった。ただし、ライフルのように銃身に線状が彫ってあるわけではないし、ストックもなく、脇にストックと銃身がハマっている木の棒を挟んで固定するタイプなので狙いも大雑把にしか付けられない。
近接での護身用だろう。どっちかというと杖術の様に扱うのが正しい使い方だと思う。
銃身部分と火打ち石部分を破壊してから棒は返してやった。
で、エルフの方を見てから村を指差す。
「俺達は村に向かうから付いてくるように言ってくれ」
「おまかせを」
ヘルシングがすぐに文章を作り上げてエルフ達に告げる。エルフは首を大きく立てに振るとガクガク震えながら立ち上がった。盗撮の女も杖を突き突き、腰を抜かしながら歩き出す。教授は一人パンツ一丁でトボトボと歩き出した。
村まで15分程歩いて着く。村に着くと村長達が真っ青な顔ですっ飛んで来て無礼はなかったでしょうか?とか止めたのですが聞かずに勝手に言ってしまったのですとか言い訳をし始めたので、取り敢えず、家の中に入れろと言っておく。
日差しがきっついねん。
俺の言葉に村長は直ぐに自分の家に案内する。
「喉乾いたから飲み物が欲しいわ!」
家に入るなりノンナが村長に言う。村長は俺を見るので、飲み物を寄越せと告げる。村長は暫く考えてからお待ちを告げて急いで何処かに走った。まるでパシリだな。
俺達は囲炉裏の部屋を通って座敷に向かう。例によって囲炉裏には鍋が掛けられており、ノンナがやはり勝手に鍋の中身を確認し、これを寄越せと言い出すので止めろと頭を叩いて止めさせた。
「お前、朝飯食べただろうが」
「保存食は飽きたわ!
あっちの方が美味しそうよ!」
「……ヘルシング。このバカの為にあの鍋の物を茶碗に一杯欲しいと頼んでくれ」
「分かったわ」
俺の言葉にヘルシングも頭を振って頷いた。
脇に控えていた村長の奥さんに鍋の事を告げると何やら酷く狼狽した様子でなにか言われる。
「何て?」
「昨晩の残り物で、とても私達に出すようなものではないとのことだけど」
「構わん構わん。
俺達だって其処まで良い物食ってるわけじゃねぇから」
ヘルシングはまた何か言うと奥さんは非常に困った顔をして座敷を後にし、それから恐る恐るという感じで俺達4人分の汁を椀に持ってやって来た。どうやら雑炊の様なもので、中に米っぽい物が浮かんでいる。食器は箸だった。
「見ろ、箸だ!」
「本当ね!」
「ノンナ、お前は箸を使えるのか?」
「使えるわよ!」
ノンナが頂きますと言うが早いか早速ズルズルとやりだした。大根と水菜と卵に鶏肉っぽい物が入った雑炊である。一晩おいただけあってそれぞれの旨味が米や野菜にすっかり染みこんで凄まじく美味い。
酷く懐かしい家庭料理の味だ。思わず、涙が出て来た。
「ああ、糞。
母さん、鍋の後はいっつも米か麺をぶち込んで雑炊にするんだよ……」
俺が返って来たら鍋よと言っていった。俺が返って来るのは7月だから鍋って季節じゃねーだろと俺と親父で呆れた様子で答えたのも覚えている。
糞、母さんと父さんは何時、何処でどうやって死んだのだろうか?戦火に巻き込まれて死んだのか?それとも無事に避難し、避難した先でベッドの上で死んだのか?どれもこれも分からねぇ。3千年前の死亡届なんて残ってるのか?
畜生……
「滅茶苦茶美味いな」
「……ええ」
「おかわり!」
「ヒラコーさん、遠慮しなって!」
ノンナが口の周りにお弁当を付けながら空に成った椀を奥さんに突き出す。奥さんはそれを受け取ってすぐに雑炊を持って戻って来た。俺達も椀に盛った飯を全て食べ、結局鍋を空にしてしまった。
「飯時はこっちで御飯食わせてもらおう。
食材とか料金とか必要そうな物と物々交換でさ」
「そうですわね」
つっても、何が必要で何が不必要なのか分からんね。
《私、貴方達、話、する、希望》
パンツ一丁のおっさんが手を上げて告げる。
「No!」
ノンナの無慈悲な一撃。パンツのおっさんは大ダメージを受けた!
「取り敢えず、エルフの娘は?」
「お漏らしした人を連れて何処かに行きましたよ」
ストーカーよく見てるね。
で、其処に村長が戻って来た。何かりんごジュース見たいな物を持って来た。
《遅い、ごめんなさい。
不明、絞った、甘い、美味しい》
「イプル、何」
村長が脇においてあったリンゴモドキを取り出してこれがイップルだと言った。
りんごジュースらしい。
ノンナが飲む!と言って手を差し出すので村長はどーぞとそれを差し出した。一口飲んで、冷たくないと言うので、俺はノンナに両手を凍らせてそれでコップを包めと告げる。手本を見せてやるとおっさんが驚愕し、エルフたちも驚いていた。
「お、美味い。この体、メチャクチャ便利だな!」
「お前のまぁ、火を起こしたり、夜は明るいし、水を冷たくできるし。
便利っちゃー便利にだよな」
「でも、体の細胞1つ1つをナノマシンが造り、制御している人を人間と言えるのかしら?」
ヘルシングが難しい顔で俺の手元の木のカップに入ったりんごジュースを見る。
「人間とは、考える葦である。
つまり、そうやって悩んでれば人間なんじゃね?」
ノンナは考える足って何だよと笑っている。足じゃねーよ葦だよ。お前はもうちょっと考えろ。
取り敢えず、エルフの娘を呼んでくるよう告げる。村長はすぐに頷いて去って行った。
「ヘルシング、俺にもそのデータ欲しい」
「良いですわよ。自己学習機能も付けてみたから使ってく内に精度が上がりますわよ。
皆さんにも配っておきます。それと、定期的に皆の情報をリンクさせて同期とアップデートもさせてもらいますわよ」
ヘルシングがそう言うと俺達にデータを飛ばす。視界には差出人不明と描かれたメッセージが届く。取り敢えず、この差出人をヘルシングと登録しておき、メッセージを開く。メッセージを開くと不明のデータが有りますが、削除しますか?と出るのでNoを選択。
データをインストールする必要がありますと出たのでOKをすると警告が出るの更にOKすると不明なデータが接続されましたと表示され、インストールバーが出て来てあっという間にクリアーした。
喋りたい文章を一端考えると其処にカタカナで発音が出る。黒く太字で表されているのは強く、薄く小さく書かれているのは弱く小さく発音しろってことだろう。
「貴方の名前はなにです?」
《私の事ですか?》
おぉ、おっさんに通じた。
「貴方です。
貴方の名前を知るを希望しています」
「私はゲイリーと申します。
貴方様の名前も出来ればお教え下さい」
ちゃんと会話出来てるぞ!スゲーな!
「私の名前はヴラディスラウス“ユウ”ツェペシュです」
「ツェペシュ様と言うのですか!
貴方は吸血鬼なのですか?」
「私達は自分達を吸血鬼だと考えていることを想像していません。
私達は私達が人間であると言う事を肯定します」
「えぇっと……
貴方達は我々と同じであると言う事でしょうか?」
何て翻訳されているのかよく分からんが、此処は誤解が生まれそうだな。
「我々はまだ貴方の言葉が上手で喋れません。
会話を増大させて単語を習得しなければ成りません。我々は貴方と単調な話を希望です」
「あ~……えっと、言葉を教えて欲しいと言う事でしょうか?」
「肯定します。
我々は学習が必要とされています。同時に、我々は様々な情報を欲しています。翻訳不可能の女に話を希望します」
エルフって単語が翻訳不可能でそのままエルフと出ていたが通じるだろうか?
「えるふ?
えるふの女とは誰のことでしょうか?」
どう説明したものかと考えていたら其処に村長が現れた。例のエルフの少女を連れて。
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登場人物
・ゲイリー
どっかの学校のせんせー
ハハッ!ゲイリー
別にVault108出身ではない
ハッハッ!ゲイリー!