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血ぃすーたろかー5回目

 エルフ達に魔術に付いて尋ねると、火、氷、電気の基本3つが一番簡単な魔術で、風と水が難しいらしい。水の魔術とはナンゾや?と尋ねると、空中から水を出しそれを操る魔術だという話だ。

 風の魔術は空気中を漂うナノマシンを操作して物体を持ち上げる、つまり俺が超能力とか巫山戯ていた奴だ。あれって中のナノマシンが作用してるんじゃなくて空気中のナノマシンが動いているのか。じゃあ、何でボールペンや他の物は動かなかったんだ?

 ヘルシングに尋ねると、空気中のみのナノマシンでは足りないから物体からのナノマシンが外に出て作用するのであって、ナノマシンを含まない物はそれが作用できないのでは?と憶測を立てていた。で、ナノマシンのことを魔力と言うそうだ。

 機械パネェ。


「つまり、俺達が壁を歩いたりしたのは風の魔術が働いたから?」

「そうなりますわね。

 裸足でないと出来ないと言うのは単に足の裏が直接引っ付いていないとダメと言う自己暗示に似た物がかかっていたのでしょう」


 まじかーイメージは大事なんだな。試しに脇の木に靴のまま足を付けて登ってみると、普通に歩ける。俺の行動にエルフが驚嘆し、ノンナもやる!と猿のように興奮してそのまま木にダッシュし、落ちた。彼奴、ナノマシンの修行が先だろうな。

 これ使えば空飛べるんじゃね?


「こりゃ、便利だ。

 空を自由に飛べるんじゃねーか?」

「あまり高い高度は無理でしょうけど、出来ると思いますわよ。

 ジャンプ力も数倍かなり有りますし」


 ヘルシングがぴょーんとジャンプすると2メートル、3メートルは飛び上がった。成る程なぁ~

 で、暫くワイワイやっているとエルフの爺さんが恐る恐る話し掛けて来た。そろそろ日が暮れるので村に行きましょうと。爺さんに言われるまですっかり忘れてたわ。逆桃白白ごっこしてる場合じゃねぇよ。

 座禅を組んで浮かび上がる練習をしていたノンナに行くぞと告げて村へ出発。

 村に着くと人っ子一人家から出てこない。窓や扉をちょっと開けて俺達を眺めている。俺達はそのまま暫定村長の家にどーぞと案内される。家の作りは日本風。エルフ日本人説が浮上した。フィクションや郷土資料館等でしか見たことのないような“ザ・江戸時代”な佇まいをした家。土間とか言うらしい玄関を上がり、そのまま奥には囲炉裏と呼ばれるコンロっつーか暖炉っつーか、そういう場所になっていた。

 で、何故か囲炉裏の鍋掛には魚の彫刻。謎の魚である。


「凄いですわね。民俗資料館でしか見たことありませんわ」

「おう、俺もだ」


 取り敢えず、靴を脱いでそのまま囲炉裏の前に。ノンナが掛けてある鍋に手を伸ばし、しゃもじで中の汁を掬って飲もうとしたので頭を叩く。


「馬鹿野郎、お前、人様の家に上がり込んで勝手に料理食おうとするんじゃねぇよ」

「ダメなの!?」


 逆に何で良いと思ったんだよ、お前。

 そのまま村長は奥にと言うので俺達はその後に続く。で、奥の部屋に通された俺達は上座にどうぞどうぞと座らされる。座布団には俺とノンナが胡座をかき、ヘルシングが所謂女の子座り、ストーカーだけが正座をした。

 俺達の前には村長たちが正座で座ってただただ頭を下げている。


「どーすんのこれ?」

「わ、私に聞かれても困りますわ」


 そらそーだわな。俺だって困ってるんだから。

 取り敢えず、ノンナは永遠とリンゴを食べまくってる。後生大事に抱えた籠からリンゴを取り出してはシャリシャリと。

 君、お腹減ってるの?そんな体型で食いしん坊キャラなの?


「ノンナ、お前、リンゴ置け。

 つーか、籠抱えるんじゃねぇ。お前のもんじゃねぇだろうが」

「何でよ!

 お供え物ってことは食べて良いって事でしょ?」

「まず、お前はその自分=神様的な考えを捨てろ。

 下手に崇め奉られると碌な事にならんぞ」


 教祖様とか言われた暁には公安が来る。ポリ公も来る。日本は新興宗教に滅茶苦茶厳しい国だからな。国民自体宗教って存在をキチガイ集団か何かと思ってる。

 まぁ、オウムに始まり、タリバンだのISだのと言う1970年代80年代から活躍してる歴戦のテロリスト達がいるんだから日本人にとって宗教=テロリストを生み出す原因だって言う考えが染み付いちゃってる。

 と、言うか2100年位にイスラム系テロリストに対して日本政府が“我が国はキリスト教を国教として居ないし、キリスト教を擁護もしてない”って言った上で“我が国は宗教と言う対立を生む存在を否定し、人道的な側面から諸君等が迫害している者達を支援しているのだ”と告げ、更に“我々は君達イスラム教徒の教えを否定するどころか肯定もしよう。だが、我々を攻撃するということは、イスラム教は力によって教えを広め、君達が邪教とし迫害をしているキリスト教やその他宗教と何ら差異の無い宗教であると言っているような物である”とし最後に“我々は君達の敵ではない。君達がその残虐な行為を我々にもするというのであれば、我々は君達に対して一切の慈悲を見せることは無いだろう”と締めくくった。

 つまり、何が言いたいかって言うと、日本人的にはイスラムだろうがキリストだろうが、どうでも良いので日本にテロを持ち込んでくれるなよと言う宣言をしたのだ。

 勿論、国内外からも色々と文句は出たが、日本政府の意見に右翼化が進んでいた当時の国民はその通りだと賛同し、文句を付ける国をテロリスト擁護派だとして日本人の不買運動やら旅行激減等が行われた。

 まぁ、具体的に言えばアメリカやヨーロッパ等だけどね。


「つーか、お前、腹減ってるの?」

「減ってないわよ?」

「なら、何でずっとシャリシャリしてるんだよ。君、牛かね?常にご飯食べてないと死んじゃうのかい?」

「誰が牛よ!

 甘いものなんか殆ど手に入らないから食べれる時に食べないと何時食べられるかわからないじゃない!」


 ノンナの言葉に俺は首を傾げざるを得なかった。どういう事か?と尋ねると所謂配給制が導入され、食料自給率が低い日本では北海道や一部の地域を除いてほぼ甘いモノなんか手に入らない状況だったらしい。

 一応、ノンナはかなり高い家柄だったから食事には困らないが甘いモノとかはやっぱり手に入らないとかでチョコレートなんか1年に数回位しか食べられなかったそうだ。

 それは俺が悪かった。たんとお食べ。


「あ~……我々、次、何、する」


 取り敢えず、双方動かないので相手に行動を任せる丸投げ放任主義を宣言してみたい。自主性のない現代日本人(約3千年々前)は自決出来ないのである。

 これに対して、村長達はお互いに顔を合わせて小声で何か囁き合っている。


「何か困っている様ですけど……」

「そら、お前。行き成り、俺達は次何すれば良いですか?なんて客人に言われたら困るやろ。

 連中、俺達の事を祠で寝てた吸血鬼だか化物だかと思ってるらしいんだから」

「なら、その誤解を解いてみては?」


 ヘルシングさんよぉ~簡単に言ってくれちゃってるけど、現状それが通るとは思えないぞぉ?


「あ~……

 我々、吸血鬼、無し。我々、人間。OK?」


 試しに言ってみるが、エルフ達は何ってるんだお前?と言う顔をした。

 それから恐る恐ると言う感じでな何やら話し始める。曰く、吸血鬼ではないのか?何故、肌は死人のように白く、目は赤いのか、と。

 何処からそんな話が来て、何故確かめなかったのか?と尋ねると、我々は先祖からズッとあの祠には太古の戦争で活躍した吸血鬼が眠っていると聞いた、あの祠は鋼鉄の兵士達が守り、侵入者を排除するので、我々は常に捧げ物をしていた、と返って来た。

 多分、外側を修復していたロボットの他に警備用のロボットも居たんだろうな。くさっても軍事施設だから警備ドローンとか普通に動いてるし。

 太古の戦争で、と言う事は多分3千年程前の遠い歴史が僅かに残っているのだろう。


「この国、名前、何?」

不明(ニャポン):人名または品名の可能性アリ》


 ニャポン。Jが猫に成っとる……まぁ、良いか。

 ニャポン、どう考えても日本のジャパン、ジャポン、ニッポンが混ざり合った漢字の名前だな。試しに一応持ってきたノートに世界地図を簡単に書き写してからそれを見せる。


「ニャポン、此処、OK?」


 で、ユーラシア大陸の端っこにある小さな島国を指差すと村長達がお互いの顔を見て首を傾げた。


《我々、村、出る、無い。

 この国、小さい、国、知る》


 村長が一人の男のエルフを指差した。


《彼、子、学校、行く。彼、子、知ってる、多分》

「彼、子、此処、居る」

《彼、子、此処、居る、ない。今、学校、居る。

 しかし、彼、子、もう直ぐ、来る、調査、する、来る》


 調査?よく分からんな。


「彼、子、何時、来る。

 我々、彼、子、会いたい、猛烈」


 多分、あのエルフの子供に会えばかなり情報が集まるだろう。

 村長は男の方を向いて何やら話している。男は俺達をチラチラと見ながら指を折ったりして日数を数えているっぽい。まぁ、良いけどね。衛生情報か国立図書館みたいな場所行って地球滅亡の事を調べたいね。国立国会図書館みたいな場所なら絶対ナノマシンとか導入して蔵書とかのデータを保有してるだろうな。

 彼処、大日本帝国時代からの保有してる書類全部データ化して、誰でも閲覧できるようにしてたからな。お陰で、大学じゃ大日本帝国憲法と改正前の日本国憲法を比較し、両者の考えの違いをレポートせよとかあったからな。

 憲法論なんか取るんじゃなかった。

 今も思い出しても後悔しかしない。夏休みのレポートが糞のように大変だった。まぁ、論点は天皇と九条を取り立てて両者をアメリカに絡めて提出したらA貰えたから良いとした。

 それから暫くして、村長が俺の方に向き直った。


《彼、子、来る、月、15回、上がる、多分》


 半月後位に返って来るって事か。ふむ、まぁ、二週間ほどならまた待ってれば良いか。


「分かった、我々、待つ。

 我々、毎日、此処、来る。我々、今日、帰る。また明日」


 ニッコリ笑って別れの挨拶を告げたらヒェェとビビられ命だけはと土下座された。何でビビられたんだよ!?何もしてねーじゃん!?

 取り敢えず、これ以上要らん誤解を招く前に帰ることにする。


「取り敢えず、明日朝もう一度此処に来るから、今日は帰るぞ」

「もう帰るのか?」

「帰るんだよ。ほら、立て」


 ノンナを立ち上がらせてからそのまま外に出る。外に出ると村長の家の前に集まっていたエルフ達が一斉に蜘蛛の子を散らす様に逃げていき、自分達の家に駆け込んだ。えぇ~……

 まぁ、良いけどさ。

 取り敢えず、もう薄暗いので拡張現実をナイトビジョンモードに。ヘルシングも同じことを考えたらしいが、目が赤く光っていた。


「お前、目が光ってるぞ」

「貴方こそ」

「すげぇ!どうやるのよ!!」


 ノンナが私も目からビーム出したいと何か勘違いしていた。取り敢えず、ナイトビジョンモードを教えてやるとノンナの目も程なく光った。そして、何を思ったかフハハハと笑いながら目からビームと目をカッと見開く。

 勿論、何も出ない。


「あれ?何も出ない」

「そらそうでしょうに。ナイトビジョンモードはただ単に夜間の視界を確保するための物なんだから」

「でも、何で光ってるんだ?」


 俺の知ってるのは光らないし、正直、こうもはっきり見えない。


「民生用は盗撮防止とかで眼が光るのですわよ。このナノマシンは軍用の様ですから設定次第では光らない様に出来るはずです」


 ヘルシングがこの様にと目の光を消してみせた。すると、ノンナがカッコいいじゃない!と目を文字通り光らせて言う。ストーカーも同様に目を光らせて周囲を眺めて感動していた。

 取り敢えず、帰りは安全だな。

 で、もう一度村長の家を見ると、村長達が大層怯えた様子でお見送りをしていた。


「明日、朝、来る」

《分かりました》


 うむ。帰ろう。レッツ・ゴーと4人で研究所の方に歩いて行く。

 帰り道は猿は出なかったが木々の奥には此方の様子を窺っているらしい猿共っぽい影は見えた。多分、この森は猿が時々やって来るんだろう。


「あの猿共、またこっち見てるわ」

「だな。

 ノンナに襲い掛かって来たし、エルフ達も驚いていたな」

「その時、エルフの一人がゴブリンって言ってたわよ」


 ヘルシングがそう言えばと思い出す様に告げた。なら、あれはゴブリンか。

 あれがゴブリンかよ、想像と違う。


「キモイゴブリンね!」

「全くだな。目ん玉だけ燃えろ」


 俺が冗談でゴーストライダーよろしく目が燃え上がるイメージをしてゴブリン達に掌を向けた瞬間、一斉に俺の視界内に居るゴブリン達の両眼が燃え上がり、ゴブリン達は凄まじい悲鳴を上げながらその場で転がっていた。

 流石の俺も動揺が隠せない。


「かなりの距離があったんですけど?」

「空気中や木々から出ているナノマシンを伝播して到達したんじゃ?」


 ストーカーが10メートルぐらい先に火の玉を作ってみせた。成る程、空気中のナノマシンが無い研究室のような場所だとせいぜい2,3メートル、良くて5メートルぐらいの距離でしか通用しないが、こう言うナノマシンが豊富な場所だとかなり遠くまで命令が届くのか。

 恐ろしいな。


「冗談でも村人よ燃えろとかやらんでよかった」

「本当よ!

 絶対に止めなさいよ!!」


 ヘルシングが何てこと考えてるのよ!と俺を睨みつける。


「じゃあ、絶対に座禅しながら浮くける!」


 ノンナはそう宣言すると座禅を組んでムンと力んだ。その瞬間、ブッ!と屁が出る。俺とストーカーは大爆笑、ヘルシングは烈火の如く怒り、ノンナは結局浮けなかった。

 何で浮かべないんだろうな?

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